2008-02-01から1ヶ月間の記事一覧

卒論完成直前、グレる

よりにもよって卒論完成直前、船山タケシはグレた。 「タケシくーん、降りて来いよー!」同じゼミの男が言った。 「卒論を完成させるのよ、タケシくん!」女も高い声を出す。 タケシは、普段立ち入り禁止になっている大学の学部棟の屋上までバイクを持ち出し…

九年後のダムス

まだ性懲りも無くノストラダムスを信じ、ノストラダムス&江原啓之ファンサイト「ノストーラの泉ダムス」を運営していることがバレたので、大学生のシンジは「現実的に生きていこうぜ委員会」に捕らえられた。 シンジは目隠しをされたまま、尋問を受けた。 …

食卓エマージェンシー

ぼくはいつも、兄ちゃんや弟と比べられてきた。お父さんとお母さんは、何をやらせても完璧な兄ちゃんを褒め称えて、愛らしい弟をかわいがった。ぼくには、そのどちらも無い。そればっかりか、ずいぶん出来も悪いみたいだ。だからいつも怒られてばかり。ぼく…

多々木先生

津本先輩は「お前ら絶対殴られるよ」と言った。だから僕たちは絶対に殴られると覚悟していたのに、多々木先生は穏やかな顔を見せて僕たちを自分の車に乗せた。 多々木先生は僕たちをラーメン屋まで連れて行った。僕たちは車内では何か喋れる雰囲気でないと思…

オサムさん高度3000メートル

高度3000メートルに二台のヘリコプターが空中停止している。そして、その二つのヘリを一本の綱が結んでいる。それが現在、メインのテレビカメラに映し出されている映像である。ということは、テレビカメラの分、ヘリコプターは三台あるのではないか。そ…

「ほんとにね、怠けているのよ、この子は」 「怠けている? そんなことはない。怠けているのはこの子ではない」 「怠けているのは誰だというのよ」 「だ、だれだか知らん。そ、それはだ、だれだか知らんさ」 僕は怒りで身体がふるえてきて物がいえなかった。…

小結とフラッシュ暗算

「フラッシュ暗算ばっかりやってる子供は気持悪い」 先輩力士の陰謀によってそんなことをラジオで言わされた小結が、メディアの槍玉にあげられてすぐに失踪した。角界に問題は尽きないが、これはまたえらいことになったものだ。 さて、その小結は今、とある…

シンデレラ

※この創作は、To菜果さんのサイト、プレイグバインの中の『To菜果A』という大喜利企画の「第5節 みんなの絵本シリーズ『シンデレラ』」に寄せられたいくつかのボケから成り立っています。こういうことは前からやりたいな、と思っていたんですが、沢山のボ…

女友達、バレンタインに臨む!

今日はセント・バレンタイン・デイ。 セントの意味はよく知らないけど、なんだかいい感じだから、春子はセントを絶対つけるタイプだ。こんなにステキな「セント」をつけないなんて、乙女心の風上にもおけないというものだ。 登校早々、父親はとび職だけど祖…

2月14日

2月14日、バレンタイン・デイ。里崎サトシは中学生、二年三組、放送委員会。もちろん今日が「女子男子どぎまぎチョコレートあれこれ」だということは意識してやってきた。 そして登校、下駄箱をチェックして、入ってなくて、まあまあまあ下駄箱にチョコを…

駄弁!研究チーム会議 〜「動く歩道でムーンウォークをする実験」〜

動く歩道でムーンウォークをやったらどうなるのか、研究チームはこの課題に取り組むことにした。頭の中だけでイメージしてみればイメージできないこともなさそうだったが、豊島が「じゃあ実際にやってみたらいいんじゃないですか」と言ったので、実際にやっ…

バナ皮ナナ

オーディション合格の通知を受けたヒトミは、緊張交じりに意気揚々とプロダクションへ向かった。 部屋を案内され、ヒトミはドアをノックした。 「失礼します、岡崎ヒトミです」 返事が無かったので、ヒトミはドアを開けた。 部屋の中央に長机があり、そこに…

達人

とにかく凄い武道の達人である武部龍雲の元に、五年前のライバルから手紙が届いた。 龍雲、久しぶりだな。俺がお前に敗れ武道から身を引いてから、早五年、月日 が経つのは早いものだ。 お前は笑うかも知れないが、俺は今、幼稚園で先生として働いている。子…

女友達、一緒に弁当を食う!

弁当に煮物が入っていたので、ハルコは二秒でそれを平らげた。弾ける若さがスローフードに直面すると、お肌の張りツヤもシラケるというもの、ましてそれをクラスメイトのティーンに見られたら噂はまるで風のマジカル、夢中な恋の旅路もおじゃんというわけだ…

不倫

二月某日、飯田ケンイチの妻エミコは「私、不倫をしているの」と打ち明けた。不倫相手と三人で話し合うべく、ケンイチはエミコとともに待ち合わせの喫茶店へと向かった。そこには茶色と黒の、毛の硬い中型の雑種犬が待っていた。 「これは御主人、ようこそい…

外タレ戦士バイドゥーバイドゥー

外タレの中の外タレ、のさらに中の外タレ。奥の座敷の外タレの席の上座に座っている外タレ。そんな真の外タレは日本語など喋らない。国籍もわからない。文化のハシゴ役に全然ならない。 テレビ文化につかず離れず生きているッポン人どもがそういうことのあれ…

もう一着あるよ

イッカスはどんどん木に登って行った。 ぼくはカブトムシに体を持ち上げられながら、 「イッカス!」 と助けを呼んだけど、イッカスはどんどん登って行った。 僕はとうとうカブトムシに地面へ放り出されて、着地した時に腕を痛くした。 さすりながら木を見上…

小川君

ボカーン(500ポイント)。 シューティングゲームというかゲーム全般が得意な小川君は、そのテクニックでまず手始めに工藤先生を撃ち落した。 仲良し三人組のうちの二人、木寺君と本西君は、小川君のブレザーの胸ポケットの中から顔と腕だけ出して、 「ヒ…

足跡が、ぼくを、巣穴へ導く。奥にいるフェネックは、ぼくの足音に驚きながら、たぶんぼくの言葉を聞いているだろう。ぼくは彼に言う、<ぼくの小さい狐よ、ぼくは今度はさんざんだ、だが不思議なことには、こんなひどい目に遭ったことも、きみの生き方に、…

そろそろ節分だ!

遺伝子を組み換え組み換え、鬼界は常識を変える一人のエリートをいよいよ輩出した。それに成功したのは鬼東京支部の科学者達だ。 「ぼくお豆だーいすき!」 と、その小さな鬼は巨大カプセルの中で叫んだ。しかし、その無邪気な顔を見て科学者鬼達は半信半疑…