2010-01-01から1年間の記事一覧

ドクターみつえのマッド研究所

目隠しをして連れてこられた研究施設の入り口に思いっきり番地が書いてあったので、俺はまずびっくりした。しかもその横にドクターみつえが立っていた。 「ようこそ、ドクターみつえの研究所へ」 女性マッドサイエンティストのドクターみつえは、意外に小柄…

ギャグマンガ日和をパクった瞬間強制終了

「ちくしょう。山田の奴め、野良犬呼ばわりしやがって」 栃本は、足を机に投げ出して相当イラだっていた。ちょうどロッカーが真横に来るように座ったのは、当然、関西のツッコミを模した水平な裏拳をロッカーにたたきつけるためだ。だからあんなに端っこに座…

人生分け目ライブ

「小さい頃、にこにこぷんを見ていたら、半年に一回ぐらい、草原の中のコテージみたいなところにロケで泊まりに行く回があって、すごくテンションがあがった」 ジャンバーをラフに羽織った男がマイクに前かがみになって思い出を語り始めた頃、ドラムの前に座…

浜さん

勤続20年「犯人、悪い奴だったな〜」と思っても、数日経ってみると、「意外といい奴だったかな?」と思うことが多い。 しかし、その男は今も、俺と吉村の中では悪い奴だった。とびっきりの。 俺が刑事になった時のことをまだ覚えている。その日、朝起きて…

思い出はクミコ、いつの日も雨

クミコはさしのべられたお父さんの手を振り払い、追い立てるようにツバを吐いた。中学女子なのに、まるでメジャーリーガーのように2m、かたまりでとばした。 お父さんは、それを避けるために体をねじり倒したため、ショッピングモールのど真ん中で、うつ伏…

ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ

僕はいつものように、ご飯を食べるときの椅子を持ってきてその上に乗ると、押入の上の段に頭をつっこんだ。そしてお尻丸だしで、押入の中で音を鳴らし始めた。 *1 ぼくの背中に誰かお客がいるのだろうか、うんともすんともない。茶をすする音だけがやっと聞…

限りなくそうっぽい

男が目を覚ますと、そこは六畳ほどの小さな部屋だった。四方を壁に囲まれているばかりで何もない。天井にはたった一つ裸電球が明滅し、この部屋を作った人物が殺風景で不気味な雰囲気を出したいことがすぐわかる。 「SAWの見すぎか?」 男はつぶやいたが…

花咲くコンプレックス

昨日、絵がうまいタイプの舎弟が校舎の裏に落書きしておいたので、今日の決闘も雰囲気が出た。 放課後を利用して、他校の制服が群れをなして7人ほど近づいてくる。 番長の川藤は、ディレクターチェアに深く座っていたが、限りなく東にある高校からやってき…

12時に吉野家で待つ

サッカー部の加藤を、俺は12時の吉野家に誘い出した。一年生からメキメキと頭角をあらわし、二年生で背番号10を背負い、最近モテキというドラマがやっているが、モテモテの加藤。俺の高校部活人生はいつもいつもこいつに阻まれてきた。モテキのモの字も…

近況

まず言っておくと、昨日の高橋の顔。人や自分をランク付けすることで毎日の活力を得ていた高校生(バスケ部)の高橋が交通事故で半身不随の車いすになっちゃって、自暴自棄になっていた時期を経て、同じ境遇の人間と共に生活するうちに徐々に自分の殻を破っ…

今週号の高橋の顔

俺は再び、エベレストの頂上を訪れた。 そこには、俺の立つべき位置が、おしっこでバミられていた。Tの字を逆さにした黄色い形のすぐそばに「くろだ」という俺の名前。そして、おしっこが余ったらしく、少し離れたところがかなりまっきっきになっていた。 …

探偵の瓜松(うりまつ)、初登場

麝香院家に伝わる名画が盗まれた。青い服を着た女が斜めを向いている、シンプルだが8億する絵である。 麝香院家名物、50人が同時に靴を脱いでもケンカにならない広い玄関を入ってすぐ、靴を脱いでいる間にみてくれよな、というメッセージをこめて絵が掛け…

熟女

東大出身の熟女と付き合い始めたクラスメイトのイケメン、青木ヶ原くんの成績がメキメキ上がっていくのを見た沖田くんは、ひとまず自分も、滑り止めの明治大学出身の熟女と交際することにした。はじめの内こそグングン成績が伸びたが、やがて伸び悩むように…

今のスプーンはくもらない

ドデカミンを飲んでいる二十代の女を見て、隣の友達と一緒になってバカにしていたユウイチだが、その時、本当の気持ちはプロポーズしていた。心の中で「好きだ好きだ」と繰り返し続けたせいで、もう「ダスキン、ダスキン」としか聞こえなかったし、途中から…

鈴鹿で一言

「死にかけのセミ投げたら飛んだ」が座右の銘のF1ドライバー、四輪駆動ワタルの半生は、 「まるでこのヘアピンカーブを曲がるみたいだったぜ!」 と叫びながら、色とりどりのボタンがいっぱいついたハンドルを左に二十回転させるワタル。見事に、女が髪を…

今日食べた天屋の天丼500円

一部のファンにコアな人気を誇る料理番組が、午後七時、家庭のメシ時をねらってBSの99チャンネルで放送されている。 今宵も、炊きたての米をのぞきこんだ挑戦者板前「葉っぱ拭太郎」の、見るからに掃除していなかったメガネがパリンと割れ、白米に突き刺…

id:OjohmbonXさんとメシを食った

ぼくはダメな大学生だ。彼女もできず、友達もできず、単位も取れず、2ちゃんねるは怖く、自暴自棄になって大麻を育てたら枯れた。 お風呂場でせっせと育てていたが、換気扇をつけ忘れてシャワーを浴びた翌日、ビチョンビチョンのグデングデンになっていた。…

ハーメルンの四国一周銃連射、男一匹殺し屋修行

四万十川のほとりを黒いスーツのグラサン男が一人、こんなに川面がキラキラ光って空は澄み渡っているのに、それには目もくれず、銃を断続的に連射しながら早歩きで歩いている。せせらぎとマイナスイオンに、物騒な銃声と弾を補充する金属音が響き渡っている…

スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス

博士がつねづねから口をすっぱくしておっしゃりたそうな顔で川のへりを見つめていたのは、人間の全ての「もう少しがんばりましょう」は、80%が「俺の知ってる話をしな!」という黒い気持ちが原因だということです。 合コンでは、「俺の知ってる話をできた…

俺の、俺の、俺の話を読め!(濱田雅功)

id:OjohmbonX さんがランダムリンクを作ってくれたので早速つけたので、早速とんでみたところ、500の創作の中から厳選に厳選を重ねて選ばれた、あんまり面白くない文章が表示された。 間違いなく言えるのは、多分、僕が一番使うということ。それからid:Oj…

マジで求む!

http://d.hatena.ne.jp/norishiro7/20090513 一年以上前だけど、この頃の方が面白いかもと思い始めた。過去の自分に学び始めた時、人は未来の自分をオレ色に染めているのです。 http://d.hatena.ne.jp/norishiro7/20090422 そしてこれはオチがとてもおもしろ…

がんばれがんばれミツル、負けるな負けるなミツル

人は、一日の二百発のウソをつくという。ミツルはそれをテレビで見た。 ふだんから、おもしろいこととは何かということを綿密に考えているミツルにとって、一発のウソで決めるべきだと考えるのは、ミツルが中学生だとしても当然のことだった。そして、一発し…

俺のナオン、人のナオン

蒸っしの暑っい終戦記念日、俺たち平成のズッコケ三人組はファミレスで自分のナオンを紹介しあっていた。人の付き合っているナオンは俺のナオンと比べてどうなのかホント超気になる。友達ならなおさらなんだ。 運良く、デルタの一辺に二人ずつ座る席に案内さ…

玉黒道中

玉黒(たまくろ)さまの人身御供に選ばれた私には、もう自分のために使うようなおろそかな時間は残されていませんでした。どうせ毎年のこと、誰かが行かねばならないのです。家族の涙も乾かぬ間に、準備にとりかかりました。 立派な輿が、私の家の前まで運ば…

オツカレーション、オキナワ

「大丈夫なのですか、博士。いくらかしこい小4程度の言語能力を身につけたとはいえ、ぼくはサル。遺伝子的に見ればまったくサル同然なのですよ」 「おい、そこのサル。お前にいいことを教えてやろう。人間の遺伝子もサル同然だ」 「それでも、ぼくにこんな…

秘密基地と読書感想文

一度だけ河田くんの家に遊びに行った時、本がたくさんあって、表彰状がたくさんかざってあって、お母さんはいなかった。 そんなことを思い出しながら、8月31日、夏休み最後の日、ぼくは河田くんの耳の凹凸を見つめていた。河川敷の木と草にまぎれてこっそ…

だいぶ空いたから、とりあえず書いてみよう

「サイズ無いくせにTシャツ着てんじゃねよデブが。多肉植物か」 体育終わりで汗がひくのを大人しく待っていただけなのに喋ったことのない女子にののしられて学校を飛び出した関。目に涙、額に汗、わき汗。日本列島は今日も暑い。 関は、ふうふう歩きながら…

鼻ワサビはやった(約束だから)

ぼくのクラスには貧乏人が二人いる。細柳くんと餓松(うえまつ)だ。 二人とも、きつく締め上げたビニール傘のようにガリガリで、この前なんぞ、黒板消しをドアに挟んでおいて、開けたら落ちるぞ! というテンションのイタズラを、その痩身ですり抜けて難を…

東京ドームの集い

普段なら5万人ぐらいでいっぱいになってしまうはずの東京ドーム。しかし今日は、すでに8万人がトレーディングカードをもらって入場済みだというのに、たくさんの警備員(バイト)が、土砂降りの豪雨の中、 「詰めろ詰めろ!」と大声で叫びながら赤色棒を素…

宇宙 日本 やおきん

ゴッタイモと弟のケンジが話しているのを、ぼくは知らない振りして聞いていた。 「お前らんちは貧乏だからな」 「うちは貧乏じゃないよ」 「おやつだって、うまい棒一本しか出ないんだろ。みんな言ってるぞ。うまい棒しか食べたことないって」 「そんなこと…