2007-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ドッキリ・アニマル・インタビュー(下)

劣勢になったライオンさんがタテガミの中から凶器(くだものナイフ)を取り出してチンパンがカウントを取り始めた時、舞台袖から人間さんが手をたたきながら現れた。 「はい、一旦止めて。一旦止めてねー」 動物達の動きが一瞬止まった。舞台手前まで勝負を…

教育実習生の矢野

俺、教育実習生の矢野。将来の夢は別に無いしそういうのうざいけど、小学校のでも教職免許を取っておけばとりあえず安心だからそういうのを選択してたら母校に実習に来させられて畜生、めんどくせえ、帰ってネットゲームを一日中してえ。こうなったら、覚悟…

万引き

小学生で大混雑の駄菓子屋さんであるが、ここショウコ屋も例外ではなく、通行人からすると少々うざかった。片道三車線の国道に面するという立地条件なのでなおさらである。排気ガスすっごいよ。 その女ババア店主、ショウコのポリシーは「万引きできるもんな…

ドッキリ・アニマル・インタビュー(中)

次に登場したのは、トラさんである。観客のサルたちは互いに吠え、警戒をうながした。トラはとても怖いのである。しかし、司会のチンパンジーの職業意識も見上げたもの、小脇に肉を抱え、トラさんを迎え入れた。 ――こんにちは。 「どうも」 ――トラさんは、凄…

大外刈り

必殺の大外刈りで、割と真面目に稽古を積んでいる男達を背中から叩きつけてしまうのが、大内だ。 大内の大外刈りは、まさに大外から大内の右足が相手の右足めがけて内側に内側に飛んでいく。相手はその時、想定外だと思う。しかし、その想定外が大内の想定内…

バックギャモン

ほとんどの高校生がバックギャモンのルールがわからないのをいいことに「わいが西モロコシ学園のバックギャモン王や!」と調子に乗っていた竹野の天下もこれまでか、とみんなが思ったのは、転校生の藤巻君が自己紹介で「藤巻タカオです。趣味はバックギャモ…

守護霊をねじ伏せろ

守護霊が見えて見えてしょうがないスピリット羽賀さんの元に、世界各国から守護霊を知りたくて知りたくてしょうがない人が金を持って訪れるのは自然なことだ。彼らと羽賀さんの間には、ギブアンドテイクの関係がある。 羽賀さんのやり方は普通じゃない。普通…

ドッキリ・アニマル・インタビュー(上)

一番調子に乗った動物をこらしめて大いに笑おう、そしていい年を迎えよう、という目的のもとATV(アニマルテレヴィジョン)が毎年企画して大晦日に放送されるドッキリは、それ自体巧妙ということもあるが、何よりやっぱり畜生なので毎回ドハデに引っかか…

炭酸飲料大好きインテリアデザイナー

天才少年インテリアデザイナー、鶴岡マコトは長い間取り組んでいた仕事を終え、炭酸飲料のプルタブをはじくと、一息で飲み干そうとしてダメだった。一口だった。 「プハア、さあ、アブドラ氏、ゲッ、を呼んでおいでよ、さあ、さあさあ」 マコトはついつい出…

ふぁいふぁふほーい大臣

日本に、ふぁいふぁふほーい大臣という役職が非公式に存在するのをご存知だろうか。知らなかっただろ。 その全貌はかなりぼんやりしているが、調査によると、現在では、名字が福田の奴が自分を内閣総理大臣に重ね合わせてあれこれ言って楽しむ、というものら…

第二のバンド

「大寒鉄郎と小粒ファイブ」が演奏を終えると、ラーメンを食いに来たはずの客も、このままラーメンファンとしてブーイングをするのか、これはこれでいいと譲歩するのか決めかねた様子で立ち尽くしていた。 しかし、そんな中、伝説のラーメンファン、通称、チ…

キーポン・ボーイフッド

俺は体育でバレーボールした時ネットを張ったこともなけりゃ、そのための鉄の棒を運んだこともない、かと言ってネットの下をヘッドスライディングでくぐったりしていたのかといえばしていなかった。ライン引きを担当したこともなけりゃ、無くなったボールを…

ハードボイルド迷子

「迷子になったのね」近づいてきた女が笑顔を浮かべて言った。 「どうもそうらしい」シゲキは消火器のそばに寄りかかっていたが、そう言うと腰を上げた。「あんたを待っていた」 「ついてきなさい」 「言われなくてもそうするさ」 その部屋は二人には充分す…

ラーメンまみれのデビューライブ

「大寒鉄郎と小粒ファイブ」はデビューライブのリハーサルを終え、控え室に戻った。 デビュー曲お披露目ライブの舞台に社長ミュージックはなんと東京ドームを用意したのである。バンドに対する期待がうかがえるというものだが、知名度の無い「大寒鉄郎と小粒…

いい笑顔

ミツオの笑顔はいい。小さい頃から徳森はそう言われ続けてきた。徳森の両親ばかりでなく、親戚、近所のおばさん、音楽の先生も「ミツオの笑顔はいい」と口を揃えた。もちろん好みはあるが、大体、頬と目のへんの具合がいいと言われる。 徳森はそんな自分のチ…

俺達おふざけ少年野球チーム

二三丁目グレートパンヅのメンバーは野球そのものに楽しみを見出すのが難しいほど負け続けているが、他のところで埋め合わせをすることで早朝からの試合にも寝坊しないで起きられる。勝ったことなど一度もなく、メンバーのお母さん達も弁当やスポーツドリン…