2009-01-01から1年間の記事一覧
お母さん 「ヨシオ、調子はどう? 今日はいい知らせがあるの。なんとヨシオのために、あの人がお見舞いに来てくれたわよ!」 ヨシオ 「え!? もしかして亀井選手? 亀井選手が!?」 お母さん 「え? ん〜〜〜〜〜? 亀井?」 ヨシオ 「巨人の! 僕、ファン…
一人暮らしの男の食生活は乱れがちだが、定食屋に行くことでカバーしていると思っているのだ。俺はイルミネーション輝くこの聖なる夜に一人さびしく、やよい軒のスタンダードナンバー「なす味噌としまほっけの定食」が流れてくる(運ばれてくる)のを待って…
外では大変だ。吹雪がびょうびょう鳴っている。 男の話が終わったことがわかると、山姥は「うむう」と唸って出刃包丁を取り上げ、背中で自分の首筋をほぐすように叩いた。 「今の話は、自分で考えたのかい?」 山姥が聞くと男は口をにんまりしならせて頷いた…
対話の回路―小熊英二対談集作者:小熊 英二発売日: 2005/07/01メディア: 単行本 今日は、製本の限界に挑戦することで知られる小熊英二さんです。『<民主>と<愛国>』や『1968』を読む気がしない僕も、対談本なら足を組んで読むことができるよ。 色々と…
モテたい! 昆虫マニアでもモテたい! おっとっと、いきなり取り乱しちゃった。話は変わるけど、テントウムシって飛んでるとき意外とでかいよね。 最近のフェイバリット研究は、親戚の叔父さんの大便を使ったスカラベ(フンコロガシ)の研究。なぜわざわざ叔…
自分の屁の風圧でプレイメイトのポルノポスターにはりついて身動きが取れない一人秘密警察ロロバージョ・ブラジルマンに拳銃を渡そうと、天井裏の相棒ドブネズミは必死で考えていた。そろそろギャングたちが戻ってきてしまう。盗聴器と爆破装置(爆破する直…
人それぞれに人それぞれの生きざまがあり、それを色になぞらえると千秋は黄色だと言っている。千秋に限らず、小さい頃から誰しも心に一つ抱く好きな色、それは既に人生のカーペットを染めているのだ。例えばランドセル。黒や赤の奴が当然いれば、空色の奴も…
和尚が加圧トレーニングに行っている間に、瑛念はお堂の、普段は口をすっぱくして立ち入り禁止と言われているゾーンに立ち入り、重々しい扉を開いた。 「思った通りだ」 中を見て、瑛太にクリソツなところから名を付けられた瑛念は、怒りがムラムラ湧いてき…
あたりは暗闇に包まれていた。二百万円(税抜き)の照明設備を持つ野球グラウンドも例外ではなかった。それでも少し明るく感じられた。 バッターボックスで一人努力しているのは、福島の坊主、岡本正一。仲間からはおかもっちゃんと呼ばれている高校球児であ…
まことちゃん (1) (小学館文庫)作者:楳図 かずお発売日: 1998/12/12メディア: 文庫まことちゃん 文庫 全12巻 完結セット (小学館文庫)作者:楳図 かずお発売日: 2011/02/28メディア: 文庫 例えば百年後に人間は、僕達はなんてしょぼいことばっかりしてきたん…
放課後、三バカトリオは花壇の前に立ち尽くした。昨日は、あんなにいっぱい綺麗に並んでいたはずなのに、今日はどうしてしまったというのだろうか。 「ウンコが……踏み荒らされてる……!」 保(たもつ)がようやく、まるで状況を確かめようとするようにゆっく…
日露の甘美な記憶に験を担げば、天気晴朗なれども波高し。軍用港を抱くようになだらかな輪郭を成した湾、その中央をただよう一隻の戦艦が粟立つように蠢くのを、地上から練習機で空へ飛び出した特攻隊員が上空から目撃した。獣のにおいがした。 戦艦上では、…
今は昔、奈良の女子寮に背の低い一年生がいた。あるとき、先輩の女子大生たちが、宵のつれづれを持て余して「さあ、ロケットを作りましょう」と言ったのを、この一年生は(いいなあ)と思って、うっとり期待して聞いていた。そうかと言って、手伝うのも足手…
ぼのぼの 31巻(バンブー・コミックス)作者:いがらし みきお発売日: 2009/07/27メディア: コミック まず僕が言っておきたいのはね、31巻と32巻の帯についた券をハガキに貼っつけて感想を書くと、バスタオルが当たるということなんですよ。そしてハガキに…
最後のコマの背景は黒っぽくしてたのをペイントで消す必殺技を使った。
クルーザーが海を道なりに走る。ロマンチックから遠く離れたすごい風を浴びてオールバックになりながら、船縁に頬杖をつき、物憂そうに地平線を見つめる子供たちが5人。あとで聞いたら、全員、スケベなことを考えていた。 彼らは輝けスケベ小僧日本代表に選…
歴史を変えた!?奇想天外な科学実験ファイル作者:アレックス・バーザ発売日: 2009/08/25メディア: 単行本 一時期のことなんだけど「まじめにバカをやるんだ」っていう子たちがいっぱい出たよね。あれはなんだったのかな。キャンパスで缶蹴りしたり、よく覚え…
亀有駅前には両津勘吉像が何体もあり、商店街をちょっと行くと少年時代の像や麗子像まであって変な気持ちになることはこの町の人だけの秘密になっています。麗子像って、と思っています。そのうち、両津勘吉像で駅前の空いているヨーカドーの3階まで埋め尽…
地上最強への道―大山カラテもし戦わば (ちくま文庫)作者:大山 倍達メディア: 文庫 戦績にゴリラやクマ、マフィア、指名手配犯が並んでいるだけで、人生はとても豊かになると思う。また、ライオンやトラと戦わばという詳細なシミュレーションはいやが応にも一…
真剣白刃取りが飛び出した瞬間について、マス大山自身がその著書『地上最強への道』の一つの章「われ凶器と戦わば」において情熱的にしたためておられる。その瞬間、白刃取りをした大山もされた南田もちっちゃい声で「あっ」と言ったという嘘みたいなほんと…
「最近なんかおもしろいことありました?」 成蹊大学を卒業したクソ女子アナが差し出すマイクに見つめられて、俺のちょうど反対側に座っているマックイーン小橋の瞳がにごった。 この時点で、俺の中に二つほどの選択肢が爆発的に誕生していた。一つは「そん…
太陽にさんさんとライトアップされて「東京三菱UFJ銀行」のJの字が輝くそんな昼下がり、のり子はいつものように元気いっぱい窓口業務を続けていたが、朝から数えて五十発目のハンコを押したとき、突然、神の啓示のように、パンストをかぶってグラサンを…
日本人がまだ墓のでかさを偉さと考えていた頃、一回タヌキが異常発生した。 山の神のストレスがタヌキに顕著に現れたんだ、タヌキは山のニキビだ、愉快な吹き出物だ、と考えた大王は、気晴らしに、屈強な男たちによる喧嘩の試合を見たくなり、配下の者に即時…
奇しくも、僕が説明したことが正解であったことを証明する映画になってしまった松本人志監督の『しんぼる』。 反省のため見ていこう。一緒に見ていこう。真面目に考えていこう。 ネタバレしつつ考えていこう。数個、おもしろいところはあった。
朝もやの八時、世にもなめらかなMのマークを横目に会社へ向かう。生まれてこの方、朝マックの幸福のシャワーを浴びずに生きてきた俺が朝マックすることなんてことがあるのだろうか。飯を食わずに20分早く家を出てパンなのか肉なのかわからないものとコー…
指定された住所は、家系図を市販化せんばかりの歴史ある武家屋敷。間違いない。扉がウッド調の音をたてて自動で開いた。ここで早くも、友達がしていたのと似ていたのをクレジットカードで購入した黒い手袋をはめこみ、サングラスをスイスイと下ろしながら小…
プシュー、ガガッ、ガ、プシュー、ガッ。 「どこのリーマンだよコンチクショウが!」 京浜東北線大船行きのドアがなかなか閉まらないのを、先輩は人のせいにしている。実際は、先輩が最高尾のドアのところで、パンチを出し続けているからプシュープシューい…
「ダメだまたエレベーターの話だ。編集長、またエレベーターに閉じ込められる話です!」 FAXの前でもう勘弁の体勢になった新米編集の声に、編集部が揺れた。偉い椅子にめりこんだ編集長がすかさず声をかける。 「落ち着け、新米君。軽々に決め付けるのはよく…
「さーせん遅れました!」 と言って控え室に入ってきた柔道部の内山の両手が不自然なことにまず気付いたのは、「補欠の鬼塚」の異名をとる鬼塚先輩である。 「おい内山、何を持っているんだ」 「え? これですか。カタツムリですよ。まいまい」 内山の両手に…
先に言っておくと、ノブが刺青を入れるのを拒否したのはサウナに行けなくなるからだ。サウナとヤクザを天秤にかけたら、勢いでヤクザが飛んでいった。しかし、現実はそう甘くはなかった。 「ノブ、どうして刺青を入れない。どうして、大空組のロゴ・モンモン…