外タレ戦士バイドゥーバイドゥー
外タレの中の外タレ、のさらに中の外タレ。奥の座敷の外タレの席の上座に座っている外タレ。そんな真の外タレは日本語など喋らない。国籍もわからない。文化のハシゴ役に全然ならない。
テレビ文化につかず離れず生きているッポン人どもがそういうことのあれやこれやに気付いたのは、バイドゥーバイドゥーのおかげだ。バイドゥーバイドゥーがいなければ、ッポン人の多くは、バラエティ番組の形式のみを空費していただろうし、まだ飽きもせず、まあいいや感覚で犬にアテレコしたり、チンパンジーに吹き出しをつけて喋っているように見せかけたりしていたことだろう。動物は言葉で考えないからかわいいんだろうが、赤ちゃんもそういうことなんだろうが。「バブー=ワンワン=そしてニャンニャン、の方程式」(ムツゴロウの基本定理)だろうが。な!?
はてさて、話はバイドゥーバイドゥーがバラエティ番組に初めて呼ばれた時に遡る。
「バイドゥーバイドゥーさんでーす、どうぞー!」とMCのB級お笑いコンビのツッコミの方。拍手する客。
会釈も何もせず、ただ歩いてくるが、MCの方に向かっていないバイドゥーバイドゥー。
MCの二人はそれを無言で眺める。クスクス笑う客が何人か。
そのまま、MCの後方にあるソファに座るバイドゥーバイドゥー。
「うわっ、いきなりあっちに行ってしまいましたよっ!」とMCのボケの方。笑う客。
「段取りがあるでしょ、バイドゥーバイドゥーさん」とツッコミの方。
用意されたアイスティーをストローでひと口飲むが、すぐに止めて、グラスの底を見ながらストローをかきまわすバイドゥーバイドゥー。
「あっ、シロップが入ってないんじゃないですかね、ガムシロップが入ってないんじゃないですかね」とMC。
「おいスタッフー! ガムシロップを早くー!」と口に手を添えてでかい声で叫ぶMCのB級のボケの方。沸く客。
美人の女性スタッフがガムシロップを持ってきて、バイドゥーバイドゥーの飲み物の脇に置く。
「結婚してください」と女性スタッフに声をかけるボケの方。笑う客。
「コラコラコラコラ」とかなんとかツッコミの方。
ほとんど同時に、小声で「それはちょっと」と言う女性スタッフ。それに関してひとしきりゴチョゴチョやるB級の二人。沸く客。
その様子を座ったままじっと見ていたが、途中から目を逸らしてあちこち見ているバイドゥーバイドゥー。
二人がソファの方にやって来る。
「ってシロップ使ってないじゃないすか!」と空中ツッコミする形で手を出して言うボケの方。客大喜び。
「どういうことなんですか!」とたたみかけるツッコミの方。
二人をじっと見ているバイドゥーバイドゥー。突然立ち上がるバイドゥーバイドゥー。
一瞬、静かになって緊張する客。
そのまま歩き出し、スタジオを出て行くバイドゥーバイドゥー。
騒然となる客、スタッフに声をかけて何かを確認するMC。
しばらくして、ハンカチで手を拭きながら戻ってくるバイドゥーバイドゥー。
「あっ、トイレだったんですね。トイレだったんですね」とツッコミの方。
「言ってくださいよ、もう。僕たち怖いじゃないですか」とボケ。
「ほんと自由ですね〜」とツッコミ。クスクスする客。
「番組つぶす気ですか!」とボケ。ここでようやく普通に笑い始める客。
気を取り直して、ソファに三人が座る。
「改めまして、今日のゲストは、バイドゥーバイドゥーさんです」
じっとカメラを見ているバイドゥーバイドゥー。何も答えないバイドゥーバイドゥー。目撃情報が書かれたボードをじっと見ているバイドゥーバイドゥー。空になったコップを振っているバイドゥーバイドゥー。おかわりが来るとまた飲み始めるバイドゥーバイドゥー。突然咳をするバイドゥーバイドゥー。ここぞとばかりにつっこむMC。二人をじっと見つめるバイドゥーバイドゥー。同じ事務所の先輩と紹介されて登場するふかわりょう。ふかわを一瞥するバイドゥーバイドゥー。怖がるふかわりょう。それから少しして、ふかわがギャラにまつわる話をしている時にスタジオを出て行くバイドゥーバイドゥー。