2007-01-01から1年間の記事一覧

隠密晦日の日が暮れる

「ガキの使い」の録画予約はOK、一応、二日の夜九時からやるイチローが出るやつも録画予約した。ユミコはご満悦だ。くのいち忍者のはしくれとして、ユミコには浜ちゃんとイチローが憧れの存在なのだ。それと、浜ちゃんに関しては、別に日影の忍者カツヒコ…

アメリカビーバー・ソングブック

迷えるビーバーの歌 ぼくビーバー どうしたってビーバー 外では何が起こってる 巣にしみこんだ雨が 元々濡れてる毛を湿らせるこんな日に 噛み砕いた木々が歯茎に刺さるのに それでも前歯伸び続けるのか 危険を知らせる時はしっぽで水面を叩くから 耳は澄ませ…

埼玉県にいる母達が日本を救う!

三十年後の日本はいったいどうなっちゃうのだろうか、ってみんな心配なんだろ。だから、テレビ埼玉が立ち上がってやったぜ。いつもなら昔のアニメの再放送をやってる時間もぶち抜いた年末特番は、さいたまの母、吉川の母、秩父の母、この三人の鼎談を、芸能…

師匠が二人?の巻

漫才コンビ、『ボンレスハム』のやせてる方、佐野が楽屋に挨拶に行くと、ボストーク亭ガガーリン師匠が二人いた。ガガーリン師匠は今年で五十歳を迎えた芸歴三十年の大ベテランである。 「ガガーリン師匠、おはようございます。こっちのガガーリン師匠も、お…

パソコン講座

「はい皆さん、パソコン講座の宴もたけなわで御座いますが、もう、エクセルもマスターしたし、クリックもダブル、トリプルとそつなくこなせるようになってきた、今ならフィフティ−ンいけちゃうかも、なんて方も多いんじゃないかと思います。そんなものありま…

「なぜ幸福な王子さまみたいになれないの?」と、ものわかりのよい母親が、月がほしいよと言って泣いている小さな男の子にたずねました。「幸福な王子さまはね、何かがほしいといって泣くなんて、夢にも思わないのよ」 ――(ワイルド「幸福な王子」『幸福な王…

観覧レッド

後楽園で僕と拍手! というキャッチフレーズをテレビで聞いて覚えてはいた。でも、それよりはゲキレンジャーと握手がしたかった。 後楽園遊園地に行ってみると、ゲキレンジャーショーの観客席に、テレビで見たままの赤いヒーローみたいな奴が前から三番目ぐ…

岡本の話

岡本に関わらないほうがいいよ。 岡本はいつもカビキラーを持っていて、機嫌が悪いぞ、俺は機嫌が悪くなったぞ今、あっ今俺、ということを自分の方でキャッチすると、あたり構わずカビキラーを撒き散らすから。その、あたり構わず、というのも何となくみんな…

カラータイマー

三分経ってカラータイマーも鳴っているのに「もうちょい頑張れる!」と宣言することで延ばし延ばしに結局十分近く戦うのはヒーローとしてどうなんだと非難されたのに、ファイトマンには反省の色が見られなかった。 「お前らは時間制限なしで戦ってるじゃねえ…

募金VS野口

忘れた頃に毎年やって来る募金の季節、前日に「明日は募金です」というお知らせが入っている。みんな、その日の朝は、お母さんから貰った小銭をランドセルに入れて意気揚々登校してくる。 今年の四月に転校してきたばかりの四年生、ケイコも、お母さんに貰っ…

まあ、ひとつ考えてみてください。たとえば、拷問ですがね。この場合は、その苦しみも傷も、すべて肉体的なものですね。ですからそれはかえって心の苦しみをまぎらしてくれるんです。ですから、死んでしまうまで、ただその傷のためにだけ苦しむわけです。で…

乳搾り

乳搾りを体験しにきた子供達だったが、おもしろいことは一つも無かった。 「おじさんこれつまんねーよー」 「そうだよー」 「最初の一回はまあ妥協できる線だったけど、もうあとは同じだよー」 「搾って乳、搾って乳の繰り返しだよー」 「牛くせー」 牧場の…

よく死ぬ大黒柱

ぼくは、超人家族の一人だ。ぼくの家族は加藤プロジェクトを名乗り、悪者をやっつけられる場合はやっつけたりしている。気付かなかった場合はしょうがないから、ニュースで凄い凶悪な事件が流れた時は、ありゃりゃ、という暢気な感じだ。国家や正義組織との…

みんなでワイワイ楽しくピザを作るファイナル

みんなでワイワイ楽しくピザを作りたい、っておばあちゃんが言った。おばあちゃんはほとんど寝たきりで、病気の方も進行していて、このままのペースだと半年後にはっていう状態だけど、だからこそ、私はおばあちゃんとピザを作りたいと思った。私がみんなに…

ドッジボールで勝負だ!

決勝戦を明日に控え、両チームのキャプテンが顔を合わせた。この様子はTBSで放送された。 「まず自己紹介をお願いします」と司会が言った。 「ファイヤー武蔵ボ――――ル、ロックON!」とカメラを指さして叫んだのはファイヤー武蔵、本気でドッジボールを…

部費倍増クイズ

キャプテンは渋い顔をしていた。出たよ。キャプテンはいつもそうだ。優柔不断で夏も長ズボン。いつもそうやってチャンスを逃してきた。事なかれ主義の一番悪いパターンの渦のまんまん中で、先輩はぐるぐるぐるぐる回転しているんだ。全然世間が見えていない…

ドッキリ・アニマル・インタビュー(下)

劣勢になったライオンさんがタテガミの中から凶器(くだものナイフ)を取り出してチンパンがカウントを取り始めた時、舞台袖から人間さんが手をたたきながら現れた。 「はい、一旦止めて。一旦止めてねー」 動物達の動きが一瞬止まった。舞台手前まで勝負を…

教育実習生の矢野

俺、教育実習生の矢野。将来の夢は別に無いしそういうのうざいけど、小学校のでも教職免許を取っておけばとりあえず安心だからそういうのを選択してたら母校に実習に来させられて畜生、めんどくせえ、帰ってネットゲームを一日中してえ。こうなったら、覚悟…

万引き

小学生で大混雑の駄菓子屋さんであるが、ここショウコ屋も例外ではなく、通行人からすると少々うざかった。片道三車線の国道に面するという立地条件なのでなおさらである。排気ガスすっごいよ。 その女ババア店主、ショウコのポリシーは「万引きできるもんな…

ドッキリ・アニマル・インタビュー(中)

次に登場したのは、トラさんである。観客のサルたちは互いに吠え、警戒をうながした。トラはとても怖いのである。しかし、司会のチンパンジーの職業意識も見上げたもの、小脇に肉を抱え、トラさんを迎え入れた。 ――こんにちは。 「どうも」 ――トラさんは、凄…

大外刈り

必殺の大外刈りで、割と真面目に稽古を積んでいる男達を背中から叩きつけてしまうのが、大内だ。 大内の大外刈りは、まさに大外から大内の右足が相手の右足めがけて内側に内側に飛んでいく。相手はその時、想定外だと思う。しかし、その想定外が大内の想定内…

バックギャモン

ほとんどの高校生がバックギャモンのルールがわからないのをいいことに「わいが西モロコシ学園のバックギャモン王や!」と調子に乗っていた竹野の天下もこれまでか、とみんなが思ったのは、転校生の藤巻君が自己紹介で「藤巻タカオです。趣味はバックギャモ…

守護霊をねじ伏せろ

守護霊が見えて見えてしょうがないスピリット羽賀さんの元に、世界各国から守護霊を知りたくて知りたくてしょうがない人が金を持って訪れるのは自然なことだ。彼らと羽賀さんの間には、ギブアンドテイクの関係がある。 羽賀さんのやり方は普通じゃない。普通…

ドッキリ・アニマル・インタビュー(上)

一番調子に乗った動物をこらしめて大いに笑おう、そしていい年を迎えよう、という目的のもとATV(アニマルテレヴィジョン)が毎年企画して大晦日に放送されるドッキリは、それ自体巧妙ということもあるが、何よりやっぱり畜生なので毎回ドハデに引っかか…

炭酸飲料大好きインテリアデザイナー

天才少年インテリアデザイナー、鶴岡マコトは長い間取り組んでいた仕事を終え、炭酸飲料のプルタブをはじくと、一息で飲み干そうとしてダメだった。一口だった。 「プハア、さあ、アブドラ氏、ゲッ、を呼んでおいでよ、さあ、さあさあ」 マコトはついつい出…

ふぁいふぁふほーい大臣

日本に、ふぁいふぁふほーい大臣という役職が非公式に存在するのをご存知だろうか。知らなかっただろ。 その全貌はかなりぼんやりしているが、調査によると、現在では、名字が福田の奴が自分を内閣総理大臣に重ね合わせてあれこれ言って楽しむ、というものら…

第二のバンド

「大寒鉄郎と小粒ファイブ」が演奏を終えると、ラーメンを食いに来たはずの客も、このままラーメンファンとしてブーイングをするのか、これはこれでいいと譲歩するのか決めかねた様子で立ち尽くしていた。 しかし、そんな中、伝説のラーメンファン、通称、チ…

キーポン・ボーイフッド

俺は体育でバレーボールした時ネットを張ったこともなけりゃ、そのための鉄の棒を運んだこともない、かと言ってネットの下をヘッドスライディングでくぐったりしていたのかといえばしていなかった。ライン引きを担当したこともなけりゃ、無くなったボールを…

ハードボイルド迷子

「迷子になったのね」近づいてきた女が笑顔を浮かべて言った。 「どうもそうらしい」シゲキは消火器のそばに寄りかかっていたが、そう言うと腰を上げた。「あんたを待っていた」 「ついてきなさい」 「言われなくてもそうするさ」 その部屋は二人には充分す…

ラーメンまみれのデビューライブ

「大寒鉄郎と小粒ファイブ」はデビューライブのリハーサルを終え、控え室に戻った。 デビュー曲お披露目ライブの舞台に社長ミュージックはなんと東京ドームを用意したのである。バンドに対する期待がうかがえるというものだが、知名度の無い「大寒鉄郎と小粒…