2013-01-01から1年間の記事一覧

雑種サンタと黒人専門学校

クリスマス・イヴの朝、俺は胸騒ぎで目を覚ました。元気のいい瞬きを2発すると飛び起きた。それも、喉から暴れ豚(馬の倍、緊迫感がある)のようにせり上がってきた声を出しながら。「ポチコ!」 ガラリと窓を開けると、やっぱり、やっぱりだよ。隣の戸叶さん…

ライフ・イズ・コブラツイスト

島田紳助が二審で勝訴したというニュースが飛び込んできた時、俺はカレーをあたためていた。特に変わったことはなかった。変わったことと言えば、島田紳助が二審で勝訴したことぐらいで、中身をぞんざいに取り払われたビニール袋がふとした風に追いやられて…

たぬきの回る電子レンジ

今日も、宮沢賢治の話に出てきた人が杉をたくさん植えてつくった林のいちばん高い松の木の下で、週に一度のたぬき会議が行われていました。 外せない議題としては、飯、色恋沙汰、モンハンの進度などがありましたが、本日はお日柄も良く、めずらしくたぬき達…

忍者失格

密偵任務は大失敗、おしっこもらして聞きもらし、ついでに大事な秘密ももらした。 お城まで、走り、疲れて歩き、走り、の自主練始めたての中学生みたいなペース配分で効率悪く帰ってきた日系ブラジル忍者、内田カメダス闘莉王(まったくの偶然。これは田中マ…

6回裏、東北楽天イーグルスの攻撃は

父さんは11年間、僕の父さんであり、15年間、母さんの夫であり、それ以外ではなかった。日曜日の夜をのぞいては。 ホテルマンだった父さんの休みは火曜日だけ。と言っても火曜日には何にもしない。家にいて、ときどき散歩をする。僕が帰ると、父さんはい…

ヤバいヤバいとみんな言うけど

オッス、俺の名前は、芝キサブロウ! 大学2年の遊び盛り! 今日も今日とて悪ノリ写真の毎日毎日サークルかけ持ちクリパに宅飲み連日連夜の合コン街コン、友達100人できちゃってワロタヤバすぎ、どーすりゃいいのよキャンパスライフ! そんなわけで、人間…

おじいちゃんと僕、そして金

金運を上昇させるお守りをハンドルに八つぶら下げたマウンテンバイクにまたがり、少し思案する。 病院にいるおばあちゃんは封筒をくれない。家にいるおじいちゃんは封筒をくれる。ここから導き出されてしょうがない答えにむしゃぶりつきたいが、まだ小学生だ…

サッカーシューズをくれてやる

ぼくの一日はため息が多くなった。生まれたり、ボウリングの最初の一投でストライクを出したりする時は100あると言われる覇気がすっかり無くなり、今も、便所で用を足した後、完全に真っ直ぐ立ってけつを拭いていた。これは、あぶない。「ピンポーン! 森…

兄と吾郎とVリーガー

「いいか吾郎、今日は早く寝るんだぞ」 歯みがきの時間、お兄ちゃんが口を泡だらけにして言った。かなり念入りに歯みがきをしている。「うん、何時に起きる?」「4時。そんで4時半出発。」 まだ9時にもなっていないから、7時間はねむれる。「うん、わか…

丹野埜枝の爪

コンビニで水とスマートフォンの充電器を買って、狭い路地の方へ入り、店舗を舐めるように少し行った所で突然、後ろから羽交い締めにされた。 服同士が擦れ合って歯ぎしりのような音を立てる。相手は自分よりも筋肉質だということが同時に包まれた肩と腋の感…

こじらせるといふこと

なんらかの界隈で一悶着おこっている時、いやだな、何がいやなのかな、と考えていたらますます厭になってきて書いたものです。 細かいことや事実関係など問題にしていません。 何か論争の火種ができた時から、みなさん、裁判をしているかのような物言いにな…

「CSR」 (『内覧』より)

次は2階だった。 ふとした拍子で彼より先に階段の最初の一段に足をかけてしまい、一段一段の恐ろしく高い急な階段をせき立てられるようにして二階へ上がった。あまりに急で、横向きにならないと落ちてしまいそうな、切り立った崖のような階段であった。上に…

川辺

本町の住宅地を抜けて、赤と白の電波塔に見守られた大きなカーブを曲がっていくと、そのまま燕川の土手の犬走りにつながる。立ちこぎのマウンテンバイクを走らせて堤防までの坂を一気に上がると、見上げていた青い空が緑と川をしたがえた明るい景色に変わり…

ろくな性教育 ~地方都市のめしマズBros.~

「公園で、野球をすんな!」 公園で野球をしている子供たちをはっきりしない巻き舌で叱りつけ、真新しそうな金属バットを奪い取った二人の男。ずんぐりむっくりしたチビと、ひょろ長いノッポ。灰色のおそろいのハーフパンツに色違いの色褪せたTシャツ、緑は…

核心の在り方について

http://picup.omocoro.jp/?eid=1714#sequel このあいだ、どろりさんの「海」を読んでいた。この作品は、主人公に気持ちが寄り添うようにできている。それで最後に、その甲斐なくという言い方になってしまうが、此の世の無情みたいなものに触れることになるの…

シオマネキ

水平線まで続く一面の干潟に、小さな人影。子どもが一人こんなにうらさびしい場所を歩っている。見たとこ小学3年生ぐらい。ONE PIECEのTシャツ1枚かぶって、ちんちんちらちら覗かせて、重たそうな一歩を、飛沫を跳ね散らかしながら着くたび足首まで泥に浸…

サザンオールスターズ「栄光の男」を聴きながら製氷する夜

久しぶりに氷をつくっています。 早々に一つの穴を満たした水は、溢れて隣の穴にこぼれ逃げてゆきます。 次の穴から次の穴へ、同じ形に象られてゆきます。 キッチンの電灯一つが照らすその下の、小さなシンクの囲いの中の、所帯じみた製氷皿の凹みの上、そこ…

宮崎駿の「風立ちぬ」を見て

まず、僕は何かの感想として、極、極、個人的な感想というものが書きたいと思いました。 誰にとっても同じ意味にならないよう、それ以上ゆるぎない言葉でもって固定しないように気をつけたいと思いました。 批評でもあるまいし、作品の感想というのは、酷で…

バスケがしたいです

ダムダムとバスケットボールがコートのあちこちで弾みかける音の良さに惹かれて、私はバスケットボール部に入ることにしました。 入って1ヶ月間はボールを持たせてもらえないランニングやフットワークばかりの練習でした。私と同じ1年生のみんなは、こんな…

うんち数えて

朝6時、大きなバスのエンジンは既に動いていたが、相変らずターミナルに停車したままだった。バスガイドが乗客全員分のうんちを数えていたからである。「1、2、3、4、5…」 平日ということもあり、ババア8、ジジイ2の割合で埋め尽くされた2列シート…

童貞おまんこ一変化

午前8時の集合は、朝ごはんをしっかり食べてこいと言うメッセージだ。どんなにハードなトレーニングが待っているか知れたものはない。でも、一体ちんこ が食べる朝ごはんなんてあるだろうか。前日10時に横たわり、6時に起きた僕のちんこは、ガラスのコッ…

電気仕掛けのパン屋店主

どうしようかな、やっちゃおうかな。 お店のものぜんぶ、叩いたり、蹴ったり、倒したりして、一つ残らず壊しちゃおうかな。 冷蔵庫も、電子レンジも、洗濯機も、テレビも全部、壊しちゃおうかな。 そんな町の電気屋さん近所になかったから、おもしろいかもな…

海の踊り子

それはもともと私の仕事でもあるが、今日は幾分ちがう事情で耳をそばだてている。肉のつまった8本の足がよく手入れされた畳を引っかく音と震動がふすま一枚を隔てた部屋の真ん中に向かって遠ざかっていくようであった。 さっきまで小さなハサミを使って小器…

私はバイソンを飼わない

赤ら顔のお父さんがニコニコしながらスト2のバイソンを買ってきた金曜日の夜。その半年前にパナポは死んでしまいました。私のことが大好きだと言って死んでしまいました。ハムスターはしゃべれないけれど、きっとそうだと思います。 酔っ払ったときのお父さ…

勇気一つを友にして

遠いところにいる人は、私なしでも元気にやってそうでなんだかつらい。かと言って、毎日ふさぎこんでいて欲しくはない。でも、誰に対してもそんな気持ちになれなかったら、心底つらい。 「トラ子、私わかったの。太陽は遠くで燃えているからちょうどいいのよ…

忍者牧場

僕はやっぱり父さんと母さんが犯人だと思う。母さんが作って、父さんが食べさせたのだ。だから犬小屋に手を掛けておばあちゃんが泣いている横で、二人は平気な顔で立っていた。かわいそうな白いタロ……。 曇天模様の空の下、ほこりっぽい道路をご自慢のボルボ…

宵の明星3

「今日、放課後、付き合って」 そう言われたのは朝の昇降口だった。もしかしたら待ち伏せしてたんだろうか。そして放課後、私たちは山にかかった石段を登っている。 日の当たらない石段は苔むしていて、滑りやすい。お嬢様のくせに、千鈴の足取りは軽くてし…

君こそタヌキだ

森の新聞記者、近鉄バファローズの帽子をかぶったタヌキの亡骸を発見したのは、つらいことに当の母ダヌキでした。帽子はかぶっておりません。 森の新聞記者、近鉄バファローズの帽子をかぶったタヌキは、まるまる太った土手っ腹に一発撃たれたあと、這って這…

一人暮らし

私は居合いの達人です。すごいんだから。だって人間国宝。そのとき面接みたいのもあったよ。くそ、今日もまたYouTubeの削除依頼を出さないと。だってってあなた、凄くしつこく私の動画(農協牛乳のパックの上口を開いて逆さにしてテーブルの上に置き、その上…

宵の明星2(まだ普通)

それから、わたしたちは少しずつ言葉を交わすようになった。でも、どこかこそこそと。わたしが「竹下さん」ときどき「奈緒」に変わったころ、千鈴の視線が柔らかくなった。その千鈴が、ゆかりちゃんと話している。千鈴は少し嬉しそうに笑っている。ははん、…