2007-04-01から1ヶ月間の記事一覧
森を一望できる崖の上に、鳥が二羽いた。 体を大きく見せれば相手をビビらせることが出来るという動物らしい考え方で鳥類業界を生き抜いてきたハウメニーは、ゴールデンウィークに差し掛かって、一歩先を行かなければならないと判断した。 「もう、羽を広げ…
ラストヘビー、和製英語で最後の頑張りという意味だ。ただ、ここではゴリラの名前である。 森では、バナナとゴリラの量がつりあわなくなって、古今未曾有の大ピンチが訪れていた。つまり、ゴリラが増えすぎた。バナナ五房に対してゴリラ三匹という計算になる…
今夜のパーティーにも、その男は出席していた。 名を、フォー丸山紳士郎。数あるパーティーに出席して、主催者の絶賛を受ける伝説の超級紳士である。 歴史あるダンスホールで行われる今夜のパーティーは、「お面セレブ入り乱れダンスパーティー」と題され、…
講師は「今日はこれを書いてもらいます。ジャジャン」と言いながら、ホワイトボードを回転させた。 そこには『スベらない話』と書かれていた。受講者達は、「えー」「ハードル上がるなー」「ハードル上げてくるなー」「もうやる前からハードルが上がってます…
カモメのジョナサンに対してでかい口を叩いてしまったダチョウのチョリソーは、家族から心配をかけられた。 「あんた、あんなこと言ってあんた大丈夫なのかい。飛ぶ方が早いに決まってるじゃないのかい。しかもあんた、パリだって?」 「チョリソー、パリに…
私が『ドゥキューン(後編)』を書いて「登録する」ボタンを押すと、『ドゥキューン(前編)』が画面に映し出された。書いている間に私はログインしていない状態になっており、ログインしていない私の文章はログインしていないので無にされてしまった。『ド…
その男は世界一ダーツがうまいと言われており、公式的な大会でも優勝優勝ときどき準優勝そのリアルな感じが逆に凄さを際立たせている。そんな男がこの地下に乗り込んできたのは天気がはっきりしない水曜日だった。 地下に伸びる階段に設置された隠しカメラに…
秘湯探し対決の後攻はロマン秘湯(芸名、浪漫飛行とかけている)、あんた温泉ばっか入ってそれが仕事になったからよかったものの、という母の言葉も今だからこそ笑って受け止められる33歳だ。しかし、今回の対決で負ければ、またあの生活に逆戻りなのであ…
オニヤンマの歌 あれあれ荒れてるグラウンド サヨナラランナー返ってくりゃくりゃ あいつの出番がカモンオーライ そうら飛び出た風より速く 土に整列かけるため 土にケジメをつけるため あいつのトンボがうなりをあげる ズザザザザ ズザザザザ ダイヤモンド…
2007年4月11日、読書戦隊ヨムンジャーは巨大ロボを失った。 「昨日、11日、あいつが死んだ」と、レッドは目の黒いとこを波うたせながら言った。 レッドに朝一で集められたカラフルな隊員達は顔を見合わせた。 「嘘だろレッド!」 「あいつ特有のいつもの冗…
釣り人はそのへんで拾った硬そうなテカりめの石を釣り針に研ぎつけていた。 「空を掴むようなものですな。シマントを釣るだということは」 村長は布団に入ったまま言った。その態度は、客が来てるのに先に寝るという態度は、老人は寝るのが早いついでに起き…
私が玄関で靴をはこうとしていると、「デイジーにお別れは言ったのかい?」と父が言った。 私は何も言わずに左足の靴の紐を結び、それから右足の靴に足の甲まで突っ込んでから、紐をほどいた。 「言えよ!」父は叫ぶと同時に、私の右足の靴を乱暴にとりあげ…
クラスメイトに破られたTシャツを弁償してもらったというか新しいTシャツを買うお金をもらったというか、そんなヤスヒコは、お母さんの心配も聞こえない振りで、ほとんど初めて服屋さん(ジーンズメイト)に一人で出向くが、間違えたとかそういうのじゃな…
二人の対決は最後のチャーハン勝負にまでもつれこんでいた。 体中のありとあらゆる力を眉間に集中させて口の中にまずは1番のチャーハンを持っていった審査員のミスターチャーハン岡中ムサシ、通称パラパラムサシは瞠目した。シュビドゥおいしいぞ。 「パラ…
その男はかなり上から目線で、僕にそれをするように言った。 「そんなことは出来ません」僕は言った。 「しなくっちゃいけないんだよ」彼はそう言うと扉の向こうに消えた。 僕はこの世界に入る前から、それだけはしないと心に誓っていた。あんなこと、するも…
「おい、じいさん。俺達の真剣勝負、邪魔はしないでくれよ」ユタカは吸いさしの煙草を振りながら言った。 「こんなサタデーナイトに邪魔なんて野暮な真似はしないわい。わしは野暮じゃなくてヨボヨボじゃ!」 風が吹いたけど、これはギャグがすべった時のマ…
いいかい、これは単なる文字なんだ! それだけのことだよ! ――(フィリップ・ロス『いつわり』) 竹内さんの味付けは上手。いつもするすきやきよりおいしい。うちのやり方は、ずーっと間違っていたのかな。 ――(武田百合子『富士日記(上)』) 「たとえ、ど…