2010-10-01から1ヶ月間の記事一覧

人生分け目ライブ

「小さい頃、にこにこぷんを見ていたら、半年に一回ぐらい、草原の中のコテージみたいなところにロケで泊まりに行く回があって、すごくテンションがあがった」 ジャンバーをラフに羽織った男がマイクに前かがみになって思い出を語り始めた頃、ドラムの前に座…

浜さん

勤続20年「犯人、悪い奴だったな〜」と思っても、数日経ってみると、「意外といい奴だったかな?」と思うことが多い。 しかし、その男は今も、俺と吉村の中では悪い奴だった。とびっきりの。 俺が刑事になった時のことをまだ覚えている。その日、朝起きて…

思い出はクミコ、いつの日も雨

クミコはさしのべられたお父さんの手を振り払い、追い立てるようにツバを吐いた。中学女子なのに、まるでメジャーリーガーのように2m、かたまりでとばした。 お父さんは、それを避けるために体をねじり倒したため、ショッピングモールのど真ん中で、うつ伏…

ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ

僕はいつものように、ご飯を食べるときの椅子を持ってきてその上に乗ると、押入の上の段に頭をつっこんだ。そしてお尻丸だしで、押入の中で音を鳴らし始めた。 *1 ぼくの背中に誰かお客がいるのだろうか、うんともすんともない。茶をすする音だけがやっと聞…

限りなくそうっぽい

男が目を覚ますと、そこは六畳ほどの小さな部屋だった。四方を壁に囲まれているばかりで何もない。天井にはたった一つ裸電球が明滅し、この部屋を作った人物が殺風景で不気味な雰囲気を出したいことがすぐわかる。 「SAWの見すぎか?」 男はつぶやいたが…

花咲くコンプレックス

昨日、絵がうまいタイプの舎弟が校舎の裏に落書きしておいたので、今日の決闘も雰囲気が出た。 放課後を利用して、他校の制服が群れをなして7人ほど近づいてくる。 番長の川藤は、ディレクターチェアに深く座っていたが、限りなく東にある高校からやってき…

12時に吉野家で待つ

サッカー部の加藤を、俺は12時の吉野家に誘い出した。一年生からメキメキと頭角をあらわし、二年生で背番号10を背負い、最近モテキというドラマがやっているが、モテモテの加藤。俺の高校部活人生はいつもいつもこいつに阻まれてきた。モテキのモの字も…

近況

まず言っておくと、昨日の高橋の顔。人や自分をランク付けすることで毎日の活力を得ていた高校生(バスケ部)の高橋が交通事故で半身不随の車いすになっちゃって、自暴自棄になっていた時期を経て、同じ境遇の人間と共に生活するうちに徐々に自分の殻を破っ…

今週号の高橋の顔

俺は再び、エベレストの頂上を訪れた。 そこには、俺の立つべき位置が、おしっこでバミられていた。Tの字を逆さにした黄色い形のすぐそばに「くろだ」という俺の名前。そして、おしっこが余ったらしく、少し離れたところがかなりまっきっきになっていた。 …

探偵の瓜松(うりまつ)、初登場

麝香院家に伝わる名画が盗まれた。青い服を着た女が斜めを向いている、シンプルだが8億する絵である。 麝香院家名物、50人が同時に靴を脱いでもケンカにならない広い玄関を入ってすぐ、靴を脱いでいる間にみてくれよな、というメッセージをこめて絵が掛け…

熟女

東大出身の熟女と付き合い始めたクラスメイトのイケメン、青木ヶ原くんの成績がメキメキ上がっていくのを見た沖田くんは、ひとまず自分も、滑り止めの明治大学出身の熟女と交際することにした。はじめの内こそグングン成績が伸びたが、やがて伸び悩むように…

今のスプーンはくもらない

ドデカミンを飲んでいる二十代の女を見て、隣の友達と一緒になってバカにしていたユウイチだが、その時、本当の気持ちはプロポーズしていた。心の中で「好きだ好きだ」と繰り返し続けたせいで、もう「ダスキン、ダスキン」としか聞こえなかったし、途中から…

鈴鹿で一言

「死にかけのセミ投げたら飛んだ」が座右の銘のF1ドライバー、四輪駆動ワタルの半生は、 「まるでこのヘアピンカーブを曲がるみたいだったぜ!」 と叫びながら、色とりどりのボタンがいっぱいついたハンドルを左に二十回転させるワタル。見事に、女が髪を…

今日食べた天屋の天丼500円

一部のファンにコアな人気を誇る料理番組が、午後七時、家庭のメシ時をねらってBSの99チャンネルで放送されている。 今宵も、炊きたての米をのぞきこんだ挑戦者板前「葉っぱ拭太郎」の、見るからに掃除していなかったメガネがパリンと割れ、白米に突き刺…