創作
右乳房が黒木メイサの顔になる奇病にかかってしまった15歳の野良子(のらこ)は、気の強いメイサにお気に入りのブラジャーを食い破られた。 風呂場の脱衣所で、眼帯みたいになってしまったブラジャーを手に、思案に暮れる野良子。鏡に映ったメイサはつんと上…
お母さんが園芸を好きだから思うのだけど私はあの日のハンバーグと一緒にデイジーの種を飲みこんでしまったと思います。で便秘気味だから思うのだけど種がおなかで芽を出してぐんぐん伸びてしまったのだと思います。 私は基本よく言われるけどマイナス思考だ…
ようやっと電車がホームにたどり着き、3分ほど息を止めていた扉が大きく息をつくと、ホ-ムに人が溢れかかった。改札に出るには、上り下りで一揃い並んだエスカレーターを2回、"くの字"に下りる必要がある。 それまで人混みに埋もれていた小学生になるかな…
「好きなんだ、付き合ってくれ」 ガコガコガコ安藤くんガコガコガコガコガコががが言った瞬間ガコガコガコガコあたしのイトノコの刃が大きくたわんで木材とガチこんでとんでもねえ音が勃発。 パニックになってあわあわするあたしの足を安藤くん思っくそ足の…
苦慮という言葉は父からもたらされた。自分は父の言いなりに利き腕を右とし、日本語を母語とし、それからやはり苦慮することになった。分別を過度に知ることで失い、崖下に美少女の「ビ」が見えた。 自分は崖下に続く暗い道を下った。大阪近鉄バファローズの…
この世でいちばん好きな曲で書きました。 The Kinks - Two Sisters (High Quality).mp4 - YouTube 美代子は鏡を見つめていた。化粧を施された自分の顔を様々な角度からながめては、納得いかないと言うように首をひねり、さらに手を加えようと勢いよく顔を寄…
彼女が全てのテスト日程を終えた日の深夜、夜更かしな家族の寝入りばなのことだったが、彼女は手入れの行き届いた自分の部屋で、長い間とりかかっていた読書ノートを書き終えた。彼女は虚ろな目でいったんそれを閉じ、また開いた。消しゴムを使わない手癖の…
「今日思ったけどさ、やっぱり女子のスカートが短くなってきてるよ」「太陽に誘われて上へ上へと伸びてきた生足がスカートの中で風通し良く可憐な花を咲かせる最良の季節の訪れだな。よかったな。松波、ホントによかったな」「なんだよその言い方は。うるさ…
えりりはフジテレビの控え室で、今日買ったばかりなのに血に染まりきった包丁を持って、肩で息をしながら立ち尽くしていた。 目の前にはジャーマネの死体。 えりりはジャーマネを刺した。胸を一突きした。物怖じしないと評されるだけあって、殺してしまって…
阿佐美景子は昨夜遅くのスポーツニュースでウェイン・ルーニーを見た。 頭が丸くて、胸板の厚い、レゴの人形のようなそのサッカー選手が頭を下に飛び上がってシュートを放ち見事なゴールを決めた時、誇張なしに、彼女には何が起こったかわからなかった。ルー…
こうして、やるとなったらやる男、古田を表向きのリーダーにすえて、さらなる野球のエッボリューション(関西ノリ)を我らの手で巻き起こそうではないか、よいではないか、とみんな心を一つにして、次の日はめちゃくちゃ食べた。 まずは、目指すべき、新たな野…
野球中継がテレビから消えて30年、サイボーグ化したナベツネがようやく亡くなったころ、みんなの好きな公園でやってたアレ、つまり野球が動き出しました。 ある晴れた日、ボルダリングの帰り道、駅のホームで、ぼくたち野球革命軍一同は、少なくともホリエ…
彼とボクの話は、だから中学の修学旅行にさかのぼるわけ。しかもお風呂。1時間とか、きっちり時間決まって、まとめて入るやつ。修学旅行の大浴場なんてほとんど貸し切りみたいなもんだから、みんなは好きホーダイ走り回ってるわけ。湯けむりの朦朧とした中…
「横島コウヘイくん、こちらへどうぞ」 院長の息子さんが今年の書き初めで書いたという「診療室」という習字を見て不安になったコウヘイが振り返ると、お母さんはコウヘイとは逆の方を向いて、『女性自身』をソファにうつ伏せになって読んでいた。「お母さん…
出席番号2番 宇野道夫 宇野がいなくなって何日か経った。あれこれ噂が立っているらしいが、特に何が変わるということもなく期末テストが始まった。 俺はテストが好きだ。その時だけ出席番号順に変わる席が好きだ。教室に入ってすぐ、机の間を縫うことなく自…
年の離れた小4の弟のミサンガが切れた日、血もつながっているし、なんだかいけそうな気がして、合コンに参加した。「ガタガタッ。自己紹介します。オレの名前は百一匹ワンちゃ朗。ワンちゃろうのろうは、『ほがらか』の朗。最近見たおもしろかったもの70…
クリスマス・イヴの朝、俺は胸騒ぎで目を覚ました。元気のいい瞬きを2発すると飛び起きた。それも、喉から暴れ豚(馬の倍、緊迫感がある)のようにせり上がってきた声を出しながら。「ポチコ!」 ガラリと窓を開けると、やっぱり、やっぱりだよ。隣の戸叶さん…
島田紳助が二審で勝訴したというニュースが飛び込んできた時、俺はカレーをあたためていた。特に変わったことはなかった。変わったことと言えば、島田紳助が二審で勝訴したことぐらいで、中身をぞんざいに取り払われたビニール袋がふとした風に追いやられて…
今日も、宮沢賢治の話に出てきた人が杉をたくさん植えてつくった林のいちばん高い松の木の下で、週に一度のたぬき会議が行われていました。 外せない議題としては、飯、色恋沙汰、モンハンの進度などがありましたが、本日はお日柄も良く、めずらしくたぬき達…
密偵任務は大失敗、おしっこもらして聞きもらし、ついでに大事な秘密ももらした。 お城まで、走り、疲れて歩き、走り、の自主練始めたての中学生みたいなペース配分で効率悪く帰ってきた日系ブラジル忍者、内田カメダス闘莉王(まったくの偶然。これは田中マ…
父さんは11年間、僕の父さんであり、15年間、母さんの夫であり、それ以外ではなかった。日曜日の夜をのぞいては。 ホテルマンだった父さんの休みは火曜日だけ。と言っても火曜日には何にもしない。家にいて、ときどき散歩をする。僕が帰ると、父さんはい…
オッス、俺の名前は、芝キサブロウ! 大学2年の遊び盛り! 今日も今日とて悪ノリ写真の毎日毎日サークルかけ持ちクリパに宅飲み連日連夜の合コン街コン、友達100人できちゃってワロタヤバすぎ、どーすりゃいいのよキャンパスライフ! そんなわけで、人間…
金運を上昇させるお守りをハンドルに八つぶら下げたマウンテンバイクにまたがり、少し思案する。 病院にいるおばあちゃんは封筒をくれない。家にいるおじいちゃんは封筒をくれる。ここから導き出されてしょうがない答えにむしゃぶりつきたいが、まだ小学生だ…
ぼくの一日はため息が多くなった。生まれたり、ボウリングの最初の一投でストライクを出したりする時は100あると言われる覇気がすっかり無くなり、今も、便所で用を足した後、完全に真っ直ぐ立ってけつを拭いていた。これは、あぶない。「ピンポーン! 森…
「いいか吾郎、今日は早く寝るんだぞ」 歯みがきの時間、お兄ちゃんが口を泡だらけにして言った。かなり念入りに歯みがきをしている。「うん、何時に起きる?」「4時。そんで4時半出発。」 まだ9時にもなっていないから、7時間はねむれる。「うん、わか…
コンビニで水とスマートフォンの充電器を買って、狭い路地の方へ入り、店舗を舐めるように少し行った所で突然、後ろから羽交い締めにされた。 服同士が擦れ合って歯ぎしりのような音を立てる。相手は自分よりも筋肉質だということが同時に包まれた肩と腋の感…
次は2階だった。 ふとした拍子で彼より先に階段の最初の一段に足をかけてしまい、一段一段の恐ろしく高い急な階段をせき立てられるようにして二階へ上がった。あまりに急で、横向きにならないと落ちてしまいそうな、切り立った崖のような階段であった。上に…
本町の住宅地を抜けて、赤と白の電波塔に見守られた大きなカーブを曲がっていくと、そのまま燕川の土手の犬走りにつながる。立ちこぎのマウンテンバイクを走らせて堤防までの坂を一気に上がると、見上げていた青い空が緑と川をしたがえた明るい景色に変わり…
「公園で、野球をすんな!」 公園で野球をしている子供たちをはっきりしない巻き舌で叱りつけ、真新しそうな金属バットを奪い取った二人の男。ずんぐりむっくりしたチビと、ひょろ長いノッポ。灰色のおそろいのハーフパンツに色違いの色褪せたTシャツ、緑は…
水平線まで続く一面の干潟に、小さな人影。子どもが一人こんなにうらさびしい場所を歩っている。見たとこ小学3年生ぐらい。ONE PIECEのTシャツ1枚かぶって、ちんちんちらちら覗かせて、重たそうな一歩を、飛沫を跳ね散らかしながら着くたび足首まで泥に浸…