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川辺

本町の住宅地を抜けて、赤と白の電波塔に見守られた大きなカーブを曲がっていくと、そのまま燕川の土手の犬走りにつながる。立ちこぎのマウンテンバイクを走らせて堤防までの坂を一気に上がると、見上げていた青い空が緑と川をしたがえた明るい景色に変わり…

ろくな性教育 ~地方都市のめしマズBros.~

「公園で、野球をすんな!」 公園で野球をしている子供たちをはっきりしない巻き舌で叱りつけ、真新しそうな金属バットを奪い取った二人の男。ずんぐりむっくりしたチビと、ひょろ長いノッポ。灰色のおそろいのハーフパンツに色違いの色褪せたTシャツ、緑は…

隅田川に雲がなければ

30分前、僕と真月は両親と兄夫婦を、真月にとっては両親とおじいちゃんとおばあちゃんを玄関で見送った。そのとき僕はサリンジャーが「ハプワース16, 一九二四」で書いていたことを思い出していた。つまり。一番すばらしい小説の書き出しは、家族で出かけ…

シオマネキ

水平線まで続く一面の干潟に、小さな人影。子どもが一人こんなにうらさびしい場所を歩っている。見たとこ小学3年生ぐらい。ONE PIECEのTシャツ1枚かぶって、ちんちんちらちら覗かせて、重たそうな一歩を、飛沫を跳ね散らかしながら着くたび足首まで泥に浸…

バスケがしたいです

ダムダムとバスケットボールがコートのあちこちで弾みかける音の良さに惹かれて、私はバスケットボール部に入ることにしました。 入って1ヶ月間はボールを持たせてもらえないランニングやフットワークばかりの練習でした。私と同じ1年生のみんなは、こんな…

うんち数えて

朝6時、大きなバスのエンジンは既に動いていたが、相変らずターミナルに停車したままだった。バスガイドが乗客全員分のうんちを数えていたからである。「1、2、3、4、5…」 平日ということもあり、ババア8、ジジイ2の割合で埋め尽くされた2列シート…

童貞おまんこ一変化

午前8時の集合は、朝ごはんをしっかり食べてこいと言うメッセージだ。どんなにハードなトレーニングが待っているか知れたものはない。でも、一体ちんこ が食べる朝ごはんなんてあるだろうか。前日10時に横たわり、6時に起きた僕のちんこは、ガラスのコッ…

電気仕掛けのパン屋店主

どうしようかな、やっちゃおうかな。 お店のものぜんぶ、叩いたり、蹴ったり、倒したりして、一つ残らず壊しちゃおうかな。 冷蔵庫も、電子レンジも、洗濯機も、テレビも全部、壊しちゃおうかな。 そんな町の電気屋さん近所になかったから、おもしろいかもな…

海の踊り子

それはもともと私の仕事でもあるが、今日は幾分ちがう事情で耳をそばだてている。肉のつまった8本の足がよく手入れされた畳を引っかく音と震動がふすま一枚を隔てた部屋の真ん中に向かって遠ざかっていくようであった。 さっきまで小さなハサミを使って小器…

わたしはバイソンを飼わない

赤ら顔のお父さんがニコニコしながらスト2のバイソンを買ってきた金曜の夜。その半年前にパナポは死んでしまいました。わたしのことが大好きだと言って死んでしまいました。ハムスターはしゃべれないけれど、きっとそうだと思います。 酔っ払ったときのお父…

勇気一つを友にして

遠いところにいる人は、私なしでも元気にやってそうでなんだかつらい。かと言って、毎日ふさぎこんでいて欲しくはない。でも、誰に対してもそんな気持ちになれなかったら、心底つらい。 「トラ子、私わかったの。太陽は遠くで燃えているからちょうどいいのよ…

忍者牧場

僕はやっぱり父さんと母さんが犯人だと思う。母さんが作って、父さんが食べさせたのだ。だから犬小屋に手を掛けておばあちゃんが泣いている横で、二人は平気な顔で立っていた。かわいそうな白いタロ……。 曇天模様の空の下、ほこりっぽい道路をご自慢のボルボ…

宵の明星3

「今日、放課後、付き合って」 そう言われたのは朝の昇降口だった。もしかしたら待ち伏せしてたんだろうか。そして放課後、私たちは山にかかった石段を登っている。 日の当たらない石段は苔むしていて、滑りやすい。お嬢様のくせに、千鈴の足取りは軽くてし…

君こそタヌキだ

森の新聞記者、近鉄バファローズの帽子をかぶったタヌキの亡骸を発見したのは、つらいことに当の母ダヌキでした。帽子はかぶっておりません。 森の新聞記者、近鉄バファローズの帽子をかぶったタヌキは、まるまる太った土手っ腹に一発撃たれたあと、這って這…

一人暮らし

私は居合いの達人です。すごいんだから。だって人間国宝。そのとき面接みたいのもあったよ。くそ、今日もまたYouTubeの削除依頼を出さないと。だってってあなた、凄くしつこく私の動画(農協牛乳のパックの上口を開いて逆さにしてテーブルの上に置き、その上…

宵の明星2(まだ普通)

それから、わたしたちは少しずつ言葉を交わすようになった。でも、どこかこそこそと。わたしが「竹下さん」ときどき「奈緒」に変わったころ、千鈴の視線が柔らかくなった。その千鈴が、ゆかりちゃんと話している。千鈴は少し嬉しそうに笑っている。ははん、…

宵の明星

白塗りの高い壁に時おり松の緑が頭を出して、それずいぶん続いていると思ったら、やがて立派な木製の門が現れて、その中が全部、千鈴(ちすず)の家の敷地なのだとわかった。すごっ、と圧倒される。都会に比べるとでかい家の中でも、ひときわ、あきれるくら…

OBD

夏のある日のマクドナルド、隣の中学生の女の人たちは二人とも話すことがなくなってしまって、テーブルに突っ伏して捧げるように両手で持った携帯をいじってはハイヒールで歩くみたいな音を立て始めている。そんな姿を見ていたら、この先に横たわる毎日を退…

大人になれば

ただ、恋人と腕を組んで歩いている、というそれだけの理由で、おちつきはらってあたりを見回していた少女。フランツ・カフカ 自信を持つのは良いことだ。いつかパパがお風呂で言った。湯船の中、私はパパと同じ方を向いて足の間に収まり、その言葉を聞いてい…

友人訪問

時流れて有りや無しや志半ば、途轍も恥なくジジイと変じた私ですが、ハイパアヨーヨー・ステルスレイダア一つ持って池尻君の宅を訪ねようととバスでもって馳せ参ずらんと試みるも、何分今度が初めての事でバスの乗り方一つ皆目見当がつかず非常に骨が折れ、…

役に立たない音楽が鳴る

母親に牛乳を頼まれて、高校1年の樹一(じゅいち)は身を切るような寒さの中をしぶしぶ出かけていった。 すぐそこにあるコンビニでの買い物をお母さんは許さない。公園を横切って行くとスーパーへの近道だ。近辺ではなかなかの広さを持ったその公園には、中…

子牛担当

僕が膝ノ裏ファミリー牧場を去ることになった日のことを話したいと思います。 僕は14時の鐘がガラランガランと鳴ると、いつも通りかわいい子牛たちを連れて牛舎を出て、丘を登っていきました。子牛たちは尾をぱたぱた振って僕のあとをついてきて、時折うわ…

卒アルは浮く!!

晴れ渡った空に太陽がギラギラとここはハワイ。行ったことはないけど、主にさまぁ〜ずの番組で雰囲気を勉強したので書くことが出来ます。 そんなハワイで今日は待ちに待ったサーフィン大会の日、卒アルを縦に三つ(小中高)つなげた自慢のサーフボードを抱え…

レギュラーピエロ争い

三流大学受験におもしろ消しゴムみそラーメンを持って行き忘れて失敗し、親からも「働け!穀潰し!」と責められた小谷は、学ラン姿で茫然と街を歩いていたところを謎の女に声をかけられた。 「君、大学落ちたでしょ」 「え?」 「ピエロにならない?」 それ…

密室ゲーム(下)

マチャアキはメモ帳を取り出し、咳払いをしてから読み上げた。 「ルールは簡単。4択クイズです。ABCDの中から正解と思うアルファベットを選んで解答してもらいます。お二人ともに同じ問題が出るので、それぞれ答えてください」 僕は黙ってうなずいた。…

密室ゲーム(上)

「う、う〜ん。どゆこと!?」 誰とでも友達になれるタイプの僕が目を覚ますと一面の濃ゆい緑に目がくらんだ。全身に痛みが走った。 そう、僕はさらし首が如く卓球台の一方の面の中央部からひょっこり顔を出していたのだ。ひどく狭い部屋らしく、卓球台のへ…

音楽・準備・輪廻

楽器がいっぱいつまった音楽準備室で、ぼくと大橋くんは息を潜めていた。 隣の音楽室からはピヤノの音が聞こえてくる。 曲にならない、途切れ途切れに一つずつ鍵盤を押す音だ。でも、一つ押すたびにハクいスケの笑い声が聞こえてくるので、ぜんぜんさびしく…

うちで飼ってたヒグマ

この春、いつも明るい金持ち二百二階堂家の白い大理石は心なしかくすんで見えた。 問題は、飼っているヒグマのドベリンである。ドッジ弾平ぐらいの大きさだった小グマちゃんのころから育ててきたドベちゃんは大事な大事な家族だったが、かなりの難病にかかっ…

鈴鹿で一言

「投げても飛ばないセミは本当に終わり」が座右の銘のF1ドライバー、四輪駆動ワタルの半生は、 「まるでこのヘアピンカーブを曲がるみたいだったぜ!」 と叫びながら、色とりどりのボタンがいっぱいついたハンドルを左に二十回転させるワタル。見事に、女…

マーズ・アタック!

そこは先輩の部屋。僕の家にきた宇宙人と同じ宇宙人が二体、先輩と何か話している。火星人だ。 「だって俺の場合さぁ。この惑星(ほし)に生まれてさぁ」先輩は両手を後ろにつき、体育の時にリラックスした男子高校生のような体勢でいながらも、心は戸惑って…

社長の息子マジックショー

社長の息子は前に出てくると、日高屋に通い慣れた人みたいな横柄な態度で五年一組の三十六人を見回した。 ならんだ机のまん中あたりに座っている亀山ノブヒコは、両ひじを突いて不満げの顔で、その憎き小さい、小さいダブルのスーツをじっと見つめていた。 …

ませてないガキから退場

既に、鼻血を出してぶっ倒れてしまった子供たちが何十人も医務室に担ぎ込まれていた。残っている子供は、五人。各々、やや斜めを向いて腕を組み、野球帽のツバを後ろに向けたいわゆるスケベかぶりで、鼻の穴をふくらませている。 「パンチラ」 スタジアムの…

ぼくのお母さん

「冷蔵庫に貼ってあるホワイトボードのマーカーが出なくなったの。ペンに磁石がくっついてるやつ。あんた買ってきてちょうだい。どうせヒマでしょう。頼んだわよ。磁石がくっついてなかったらいらないから」 ちょっとちょっとお母さん! せっかくの日曜日に…

まことハンター

まことハンターは河童を生け捕りにしようとしている。 過去にツチノコ、天狗、クロアゲハなどを生け捕りにしようと奮闘し、スカイフィッシュの時はくそつまらないDVDまで参考にしてきたまことハンターであったが、さすがにバカらしくなり河童に関してはあ…

亜塚芽衣子、秘密の出産

ここは清潔で赤ん坊を産むのにぴったりだわと亜塚芽衣子が考えた時、赤ん坊はもう既に肩まで出ていた。 14歳。平凡な家庭に育ち、平凡な恋に落ち、まあまあ奇抜なセックス(宝船)をしたのが運の尽き。普段やらないことをしようとしたその報いが胎盤にそっ…

無免許

僕は免許を持っていない。でもスポーツカーは走った。アクセルは右足でブレーキも右足でというのは正直まったく意味がわからないから、両足を使って峠を攻撃していた。そのとき、昨日のリンカーンで大竹がスポーツチャンバラの元世界チャンピオンに2連勝し…

キ印映画「ザ・タマキン」

名バイプレイヤーとして四百本以上の作品に出演した服部さんも、今ではタマキンがバスケットボール大まで肥大したせいで一線から退いてしまった。 しかし、膨れあがったタマキンはどうも見た目の割に良性らしく、映画への情熱を失わったわけではない服部さん…

ケツで歌うABCD

英検3級を受験しようとした日、僕はアメリカ人に犯された。大量にソーセージが捨ててある公園の片隅で四つん這いになり、尻のあたりから発されるラップ音を聞いていた。 「英っ、検っ、受けっ、るんですっ! 間にっ、合わっ、ないんっ、ですっ!」 僕はまだ…

ドクターフォールグッド

世界で初めてフリーフォールを考案した博士、通称ドクター・フリーフォールがボルチモアの研究所にマスコミを呼んだら、一社しか来なかった。 「君、どこのマスコミ?」 「フリーライター、練馬区の吉岡です」 「OK。練馬か、としまえんがある所だな……なぜ…

愛のアサシン

家が建ったから見に来いという誘いに応じて十年ぶりに故郷へ帰ってみると、坂の上、かつて何の変哲もないが幸福の象徴であるかのような赤い屋根の家があった場所に、まがまがしい突起物が天辺にそそり立った紫屋根の家が見えた。 家の周りには人だかりができ…

高校野球の中

監督「今からお前達にブロックサインを覚えてもらう。野球は筋肉じゃない、ココを使ってやるものだ。そうだな」 部員達「はい!」 監督「もちろん筋肉も使う。そうだな」 部員達「はい!」 監督「よし。まずド定番のバントのサイン、これはもう決めてある。…

そこだ!決めろ語り部!

今日は私が、アダルト動画を見るための専用プレイヤーをダウンロードしたら、その公式ページがブラウザを開いた時に最初に表示されるホームページに設定された話をしたいと思います。私は、アダルト動画をぜいたくに見るため、専用プレイヤーをダウンロード…

卒論試問

おはようございます。 僕が卒論に選んだテーマは「芸能人の名前のバランス感」です。朝っぱらからやって来てみたはいいもののなんじゃそりゃ、という顔をしたそこのおじさん、かっこいいヒゲしてるね名前は? …そうだね、南原清隆だね。では、南原清隆を例に…

サマータイム・アドベンチャー

夏休みになると、山形のおばあちゃんちに行くのが僕は楽しみだった。名前はわからないけれど、近所に住んでいる関西人に会うのが楽しみだった。 関西人はウルトラ怪獣のように大きく、筋肉量がハンパなかった。質もよかった。背の低い僕は、山のように盛り上…

いい湯だな

普通免許を持っていないから、「道間違えた」とか言ってバックでスピードを出されると腰が抜けるほど驚くし、戻ってちょっと走り出してからもずっと不機嫌そうな若い騎士。今日もそういうことが、しかもタクシーであったものだから、彼は温泉(秘湯)に着い…

Under The Walrus

え!? セイウチの下に何冊のエロ本を詰め込めるかにチャレンジし続けていたフィンランド出身の冒険家が死んだ!? 下世話なニュースサイトでその記事を読んだとき、ぼくは部屋で一人、 「そうなんだ! 初めて知った!」 と叫びたおしていた。 ぼくは、ガオ…

帰ってきた瀬戸内海と顔面18%

言ってもらおうか。君の原子力発電知識を。そして、私の開発した、いしだ壱成と同等の原発知識を持つロボット、その名も「ひとつ屋根の下」と対決してもらおう。 ここは、情報が一番入ってきて、一番出ていかない福島第一原子力発電所事故統合対策本部である…

ヨシコちゃんと動物たち

深夜、中2のヨシコちゃんが部屋の電気を消してiTunesから「バックビートにのっかって」を再生すると、ペットたちが集まってきた。猫2匹、犬3匹、モルモット5匹、カメ1匹が、ご覧の順番でドアの隙間から登場する。最後のカメが入ってきたとき「世田谷の…

奥へどうぞ、天才子役

ガラリと開いたが暖簾はピクリとも動かねえ。だが確実に入店している。 大手の課長クラスでギリ通えるレベル高え、居酒屋の仮面を被ったハイブリッドなお店屋さんに半袖シャツと短パンにビーサンで現れたこいつは一体。 「あの、子役で予約してるものだけど…

大学一年生、監督一年生

「寒い朝、一面にご飯が積もっているんだよな。そこにチラチラと降ってくるわけ。何が降ってくっかっつったらふりかけが降ってくるわけ。そこで、侍とやり投げ選手の一騎打ちだよバカ野郎が。ヘンリーネックTシャツが。どういうことかっていうと、ヘンリー…