創作

美少女の「ビ」、アキラの「ラ」

苦慮という言葉は父からもたらされた。自分は父の言いなりに利き腕を右とし、日本語を母語とし、それからやはり苦慮することになった。分別を過度に知ることで失い、崖下に美少女の「ビ」が見えた。 自分は崖下に続く暗い道を下った。大阪近鉄バファローズの…

ふたりの姉妹

この世でいちばん好きな曲で書きました。 The Kinks - Two Sisters (High Quality).mp4 - YouTube 美代子は鏡を見つめていた。化粧を施された自分の顔を様々な角度からながめては、納得いかないと言うように首をひねり、さらに手を加えようと勢いよく顔を寄…

パンツの潮騒さようなら

「今日思ったけどさ、やっぱり女子のスカートが短くなってきてるよ」「太陽に誘われて上へ上へと伸びてきた生足がスカートの中で風通し良く可憐な花を咲かせる最良の季節の訪れだな。よかったな。松波、ホントによかったな」「なんだよその言い方は。うるさ…

えりり、ジャーマネを殺す。

えりりはフジテレビの控え室で、今日買ったばかりなのに血に染まりきった包丁を持って、肩で息をしながら立ち尽くしていた。 目の前にはジャーマネの死体。 えりりはジャーマネを刺した。胸を一突きした。物怖じしないと評されるだけあって、殺してしまって…

劇空間プロ野球2

こうして、やるとなったらやる男、古田を表向きのリーダーにすえて、さらなる野球のエッボリューション(関西ノリ)を我らの手で巻き起こそうではないか、よいではないか、とみんな心を一つにして、次の日はめちゃくちゃ食べた。 まずは、目指すべき、新たな野…

劇空間プロ野球1

野球中継がテレビから消えて30年、サイボーグ化したナベツネがようやく亡くなったころ、みんなの好きな公園でやってたアレ、つまり野球が動き出しました。 ある晴れた日、ボルダリングの帰り道、駅のホームで、ぼくたち野球革命軍一同は、少なくともホリエ…

ボクの失恋バナシ

彼とボクの話は、だから中学の修学旅行にさかのぼるわけ。しかもお風呂。1時間とか、きっちり時間決まって、まとめて入るやつ。修学旅行の大浴場なんてほとんど貸し切りみたいなもんだから、みんなは好きホーダイ走り回ってるわけ。湯けむりの朦朧とした中…

こんな歯医者はイヤだ

「横島コウヘイくん、こちらへどうぞ」 院長の息子さんが今年の書き初めで書いたという「診療室」という習字を見て不安になったコウヘイが振り返ると、お母さんはコウヘイとは逆の方を向いて、『女性自身』をソファにうつ伏せになって読んでいた。「お母さん…

出席番号3番 木嶋陽介

出席番号2番 宇野道夫 宇野がいなくなって何日か経った。あれこれ噂が立っているらしいが、特に何が変わるということもなく期末テストが始まった。 俺はテストが好きだ。その時だけ出席番号順に変わる席が好きだ。教室に入ってすぐ、机の間を縫うことなく自…

合コンGO!GO!GO!

年の離れた小4の弟のミサンガが切れた日、血もつながっているし、なんだかいけそうな気がして、合コンに参加した。「ガタガタッ。自己紹介します。オレの名前は百一匹ワンちゃ朗。ワンちゃろうのろうは、『ほがらか』の朗。最近見たおもしろかったもの70…

雑種サンタと黒人専門学校

クリスマス・イヴの朝、俺は胸騒ぎで目を覚ました。元気のいい瞬きを2発すると飛び起きた。それも、喉から暴れ豚(馬の倍、緊迫感がある)のようにせり上がってきた声を出しながら。「ポチコ!」 ガラリと窓を開けると、やっぱり、やっぱりだよ。隣の戸叶さん…

ライフ・イズ・コブラツイスト

島田紳助が二審で勝訴したというニュースが飛び込んできた時、俺はカレーをあたためていた。特に変わったことはなかった。変わったことと言えば、島田紳助が二審で勝訴したことぐらいで、中身をぞんざいに取り払われたビニール袋がふとした風に追いやられて…

たぬきの回る電子レンジ

今日も、宮沢賢治の話に出てきた人が杉をたくさん植えてつくった林のいちばん高い松の木の下で、週に一度のたぬき会議が行われていました。 外せない議題としては、飯、色恋沙汰、モンハンの進度などがありましたが、本日はお日柄も良く、めずらしくたぬき達…

忍者失格

密偵任務は大失敗、おしっこもらして聞きもらし、ついでに大事な秘密ももらした。 お城まで、走り、疲れて歩き、走り、の自主練始めたての中学生みたいなペース配分で効率悪く帰ってきた日系ブラジル忍者、内田カメダス闘莉王(まったくの偶然。これは田中マ…

ヤバいヤバいとみんな言うけど

オッス、俺の名前は、芝キサブロウ! 大学2年の遊び盛り! 今日も今日とて悪ノリ写真の毎日毎日サークルかけ持ちクリパに宅飲み連日連夜の合コン街コン、友達100人できちゃってワロタヤバすぎ、どーすりゃいいのよキャンパスライフ! そんなわけで、人間…

おじいちゃんと僕、そして金

金運を上昇させるお守りをハンドルに八つぶら下げたマウンテンバイクにまたがり、少し思案する。 病院にいるおばあちゃんは封筒をくれない。家にいるおじいちゃんは封筒をくれる。ここから導き出されてしょうがない答えにむしゃぶりつきたいが、まだ小学生だ…

サッカーシューズをくれてやる

ぼくの一日はため息が多くなった。生まれたり、ボウリングの最初の一投でストライクを出したりする時は100あると言われる覇気がすっかり無くなり、今も、便所で用を足した後、完全に真っ直ぐ立ってけつを拭いていた。これは、あぶない。「ピンポーン! 森…

兄と吾郎とVリーガー

「いいか吾郎、今日は早く寝るんだぞ」 歯みがきの時間、お兄ちゃんが口を泡だらけにして言った。「うん、何時に起きる?」「4時。そんで4時半出発。」 まだ9時にもなっていないから、7時間はねむれる。「うん、わかった。目覚まし時計をセットしなくち…

丹野埜枝の爪

コンビニで水とスマートフォンの充電器を買って、狭い路地の方へ入り、店舗を舐めるように少し行った所で突然、後ろから羽交い締めにされた。 服同士が擦れ合って歯ぎしりのような音を立てる。相手は自分よりも筋肉質だということが同時に包まれた肩と腋の感…

「CSR」 (『内覧』より)

次は2階だった。 ふとした拍子で彼より先に階段の最初の一段に足をかけてしまい、一段一段の恐ろしく高い急な階段をせき立てられるようにして二階へ上がった。あまりに急で、横向きにならないと落ちてしまいそうな、切り立った崖のような階段であった。上に…

川辺

本町の住宅地を抜けて、赤と白の電波塔に見守られた大きなカーブを曲がっていくと、そのまま燕川の土手の犬走りにつながる。立ちこぎのマウンテンバイクを走らせて堤防までの坂を一気に上がると、見上げていた青い空が緑と川をしたがえた明るい景色に変わり…

ろくな性教育 ~地方都市のめしマズBros.~

「公園で、野球をすんな!」 公園で野球をしている子供たちをはっきりしない巻き舌で叱りつけ、真新しそうな金属バットを奪い取った二人の男。ずんぐりむっくりしたチビと、ひょろ長いノッポ。灰色のおそろいのハーフパンツに色違いの色褪せたTシャツ、緑は…

隅田川に雲がなければ

30分前、僕と真月は両親と兄夫婦を、真月にとっては両親とおじいちゃんとおばあちゃんを玄関で見送った。そのとき僕はサリンジャーが「ハプワース16, 一九二四」で書いていたことを思い出していた。つまり。一番すばらしい小説の書き出しは、家族で出かけ…

シオマネキ

水平線まで続く一面の干潟に、小さな人影。子どもが一人こんなにうらさびしい場所を歩っている。見たとこ小学3年生ぐらい。ONE PIECEのTシャツ1枚かぶって、ちんちんちらちら覗かせて、重たそうな一歩を、飛沫を跳ね散らかしながら着くたび足首まで泥に浸…

バスケがしたいです

ダムダムとバスケットボールがコートのあちこちで弾みかける音の良さに惹かれて、私はバスケットボール部に入ることにしました。 入って1ヶ月間はボールを持たせてもらえないランニングやフットワークばかりの練習でした。私と同じ1年生のみんなは、こんな…

うんち数えて

朝6時、大きなバスのエンジンは既に動いていたが、相変らずターミナルに停車したままだった。バスガイドが乗客全員分のうんちを数えていたからである。「1、2、3、4、5…」 平日ということもあり、ババア8、ジジイ2の割合で埋め尽くされた2列シート…

童貞おまんこ一変化

午前8時の集合は、朝ごはんをしっかり食べてこいと言うメッセージだ。どんなにハードなトレーニングが待っているか知れたものはない。でも、一体ちんこ が食べる朝ごはんなんてあるだろうか。前日10時に横たわり、6時に起きた僕のちんこは、ガラスのコッ…

電気仕掛けのパン屋店主

どうしようかな、やっちゃおうかな。 お店のものぜんぶ、叩いたり、蹴ったり、倒したりして、一つ残らず壊しちゃおうかな。 冷蔵庫も、電子レンジも、洗濯機も、テレビも全部、壊しちゃおうかな。 そんな町の電気屋さん近所になかったから、おもしろいかもな…

海の踊り子

それはもともと私の仕事でもあるが、今日は幾分ちがう事情で耳をそばだてている。肉のつまった8本の足がよく手入れされた畳を引っかく音と震動がふすま一枚を隔てた部屋の真ん中に向かって遠ざかっていくようであった。 さっきまで小さなハサミを使って小器…

わたしはバイソンを飼わない

赤ら顔のお父さんがニコニコしながらスト2のバイソンを買ってきた金曜の夜。その半年前にパナポは死んでしまいました。わたしのことが大好きだと言って死んでしまいました。ハムスターはしゃべれないけれど、きっとそうだと思います。 酔っ払ったときのお父…