2007-01-01から1年間の記事一覧
衛星第二で桑田佳祐ライブの完全版が再放送されているのを見ながら、ぼくは血液型の話は嫌いだけど、その一方でB型であることを誇りにしている節があると自己分析した。 だから、机に置いてある様々な宝石を組み合わせて作られた地球儀を高速で回転させた。…
その日は雨だった。こんな日は、いつも雨が降る。落下する雨粒一つ一つが街灯や車のライトの僅かな光のつぎはぎの中で、白い線となってぼくの前をふさぐような強い雨だった。道路の両脇の排水溝からは雨水が溢れていた。 「ごめんよごめんよ」 そう言いなが…
死ぬ前に食べたいのはマンモスの肉、こんなことを言う俺は日本一キュートな存在だと思っているんだ。だってもう絶滅したマンモスを夢見てそれを食べたいと目を輝かせているピュピュピュピュアな気持ちは相当キュートだものね。しかも俺の場合、はじめ人間ギ…
アイスのふたをなめることで山田家は、自分達は中の下の家庭なんだということを意識づけたが実際は下の中だった。給食費をなんとか捻出できれば下の中だと言われている。しかし、最近では給食費を払えるけど払わないという反則ぎりぎりの裏技というか反則が…
別に何も成し遂げていないマサオだが、バスタオル3枚分のでかい国旗で身を包まれた途端、不思議なほど世界三位以内に入った気分になった。マサオはそのまま家を出た。 マサオは体力には自信があり、世界陸上の女子マラソンで一番遅い人にギリギリで負けるぐ…
横尾のピースやチョキやVサインなどはとてもよく広がり、一瞬パーを出しているかと思うほどだったので、みんなは、たぶん横尾フォーク投げれる、と思った。 そこで、横尾はいじめられっ子なのでちょうどいいので、みんなは、横尾ちょっと来いよ、と言って放…
ここは日焼けとサーフィンと桑田佳祐の町、湘南。そして海岸。マサヒコはすばらしい気分で海岸のゴミをつぎつぎと袋に入れていった。そんなマサヒコの背中からは、ボランティア参加者特有のある種のアドレナリンが、汗と一緒に分泌されているように見えた。 …
黒板に書かれた「かぶき揚げは友達かどうか」という下手な文字は、改めてぼくたちに、問題の複雑さと書記は立候補で決めるべきじゃないということを思い知らせた。 事の発端は、クラスで浮きまくっているため「浮島真島」という「うつくしまふくしま」と同じ…
毎日毎日シマウマとガゼルばっかり食べて栄養が偏りがちなのではないかと思われている我々ですが、そもそも、はじめのうちシマウマなんか気持悪がって誰も食べませんでした。毛の色が、生で見るとかなりパンチがきいているのでした。 ある晴れた暑い日、我々…
二十世紀最大の発明の一つ、みそラーメンの形をした消しゴムが生まれるまでには様々な苦労があったとされています。 そもそも、消しゴムは四角いものです。そして人々も、いつまでもいつまでも四角い消しゴムでいて欲しいと願っています。しかし、消しゴムは…
ポチは抱かれながら、身をもがいて大あばれにあばれ、わたしの手をなめ、胸をなめ、顎をなめ、頬をなめ、なめてもなめてもなめ足らないで、わるくすると、口までなめる。父が面をしかめてきたないきたないという。なるほど、考えて見れば、きたないようでは…
ぼくが好きなテレビタレント達が、伊東に行くならハ・ト・ヤ、ハ・ト・ヤに決めたのCMの、察するに人が抱えてる活きのいい魚がビチビチビチビチなっているらしい映像のことをいじるたびに、それを見たことがないぼくは悲しい気持ちになってしまいます。し…
どうして南口のパン屋さんはあんなに流行っているんだ、と怪しんだ北口のパン屋さん店主、今野は小学生の頃からすぐ人を怪しむタイプだったが、それはともかく、自分のことをコンクリートジャングルが生んだイースト菌大臣と名づけていた。 南口のパン屋さん…
●ウイングの意味「今日こそ、お前が、俺の舐めてきた辛酸の味を知るときだ。その辛酸は、近いところで言うと、鉄みたいな味だ」 言っちゃったよ、味言っちゃったよ。6年2組の相沢ソウイチロウの宣言に対して、6年1組の畑中トオルはマイブームの内心ツッ…
●香山ハルナの借り ハルナは恐れていた。今にも「じゃあこのページを、香山さん」と先生が言い出すのではないかと。 教科書を忘れることなんて今まで無かったハルナは必要以上に怯えていた。忘れた時は忘れたと言えばいい、なんてことは大人にならないとわか…
速すぎて、そして美しすぎてあなたが見えない、いざ星の彼方へ。というキャッチコピーでならした女格闘家、速星美し子(はやぼしうつくしこ)は、会場入りの時点でもう速すぎてそして美しすぎて見えなかったので、会場入りしたのかどうかはっきりしなかった…
テレビでやっていた回文、中でも「俺と森本レオ」が自分的に大ヒットしてしまった小池健介、十八歳、俺が一生かけて成し遂げる仕事はこれしかないとばかりに家を飛び出した。 別れの言葉は健介の初めての作品、 「グッバイバッグ」 健介はめくるめく回文の中…
クミコの天気予報は今日も、マリオ3の中ボス、ブンブンが出てくる時のテーマで始まった。クミコは開口一番、 「こんな天気なんか気にしてる暇あったら歯を磨けグズども、てめえら口くせーんだよ。あと、そこの歯磨きしながら見てるお前、今得意な気持ちにな…
お天気キャスターが「天気をお伝えします」と言った時、岐阜県民のみなさんは当然油断していたに違いなかったので、岐阜県のところに出されているべき晴れのち曇りや最高気温や最低気温などの表示がまったく無かったのを見てショックを受けたのなんの。その…
まず、『元旦』と書いた生徒が、師範の赤い墨汁で顔をベッタベタにされた。 「みなさん、見ましたね。今の彼の、失態を見ましたね。まるでダメです。みなさんのようなド素人が、どう書くか、と悩むのは十年早いです。十年早い。私はこれをバーチャファイター…
ぼくはホッした。モスバーガーを食べ終わったからだ。たまに紙の底に残ったデロデロまで残さずなめる人がいるけど、それがぼくだ。 もうこれで、ぼくの口の周りがこんなにも汚れてしまうことは、次にモスバーガーを食べる来月までない。ぼくは毎月、極限まで…
「『フリスビーを投げてもすぐ斜めになって、しまいには縦になって遠くへ転がっていってしまいます、とほほ』という自己紹介文を書いたテルオ君も、今や、『大学のキャンパスでフリスビーを友達としている時も、真っ直ぐ飛んでいって、そばを通る女子大生(…
噴火噴火、今日にも噴火する、と言ってれば噴火もするというもの。島のど真ん中に位置する山は見た目にも熟れたトマトのようにパンパンになって、お昼までもつかどうかというのがみんなの総意だった。 こんな時、いつもいつも島を救ってきた山島さんの得意技…
「ぼくがことばを使うときは、だよ」ハンプティ・ダンプティはいかにも人を馬鹿にした口調で、「そのことばはぴったりぼくのいいたかったことを意味することになるんだよ。それ以上でもそれ以下でもない」 「ただ問題は、そんなふうにことばにやたらいろんな…
手を突っ込んで操る式のぬいぐるみで腹話術をして口に糊する元ヤクザがいましたが、彼は組で粗相をして右手の小指がありませんでした。そう、これでは右手にはめたぬいぐるみの右手が動かせないのです。しかし、園児の前ではそんなこと言うわけにいきません…
人生でまだ一度もボートを漕いだことが無い下條。別に行かねえけど、彼女が出来て湖に行くのに備えてボートを漕げるようになっておきたい、別に行かねえけど。とにかく、湖があってボート乗ろうよとなった時に、自分がボートを漕げるのか漕げねえのかは把握…
「ちょっとコンビニ行くけど、買ってくるものある?」 お姉ちゃんの言葉の何気なさが、逆に僕のシックス・センスにツーンときたんだ。これは何か、国家的なFBI的な陰謀を後ろにまわした罠に違いない。見ろ! お姉ちゃんの格好は、いつどんな凄腕スパイが…
旅するVC3000のど飴、ビタミンC之助が町を通りかかると、一つの看板が目についた。 『ボク対トラ 7/2 15:00〜』 C之助は自慢の腕時計をキラリと光らせ、ちょうど3時のあたりについている小さな小窓に書いてある数字を確認した。そこには、2と書い…
俺のコンサートは今日、お日様が一番高いところから街を見下ろし、時間差で気温が一番上がる午後二時開演だ。 俺のアコ−スティックギターが控え室の蛍光灯をうけて不気味に光っている。俺が上の方をつかんで移動する時に机の角や壁に当たるたびゴインゴイー…
合気道の道場の前をもう二時間近くうろついている島田島子、ブックオフの値段のシールがうまくはがせない16歳の女の子だ。 「おいおい、あの娘っ子、もう二時間もいるじゃないか」 「そんなこと言ってポール、もしくはオマエのガールフレンドなんじゃない…