朝のお天気クミコにおまかせ(たかさんの「お天気キャスター」から二作目)

 クミコの天気予報は今日も、マリオ3の中ボス、ブンブンが出てくる時のテーマで始まった。クミコは開口一番、
「こんな天気なんか気にしてる暇あったら歯を磨けグズども、てめえら口くせーんだよ。あと、そこの歯磨きしながら見てるお前、今得意な気持ちになったそこのお前だよ、お前。口くせーんだよ!」
 クミコの唾がカメラのレンズに飛んだ。朝から何をそんなに怒ることがあるのか知らないが、クミコったらいつもこうなのだ。
「お天気にいくぞ歯糞のかたまりヒラ社員に歯糞ボンバー未成年どもが」クミコは吐き捨てるように言う。「まずバカがあったかそうという理由で寄り集まる南の方からだ」
「クソ九州は全体的にマックシェイクが降るんだよ死ね!」クミコは立てた親指を下に向けた。そして目を見開いた。「全マンゴーが腐って爆発して腐った汁の雨を降らせろ!」
 宮崎県のフィーバーぶりが鼻につくクミコは、特に宮崎県とは言わないで悪口を言った。
「でもてめえの頭に今日降るのはただの雨だよクソハゲ! 一日中てめえのツルックソッパゲにポタポタポタポタ、雨が降りそそぐっつってんだよ。てめえだけじゃねえ、クソ九州のダンゴ虫人間どもが住むところには今日一日中雨しか降らねえんだよ! おおん!?」
 クミコはこれ以上言わすとてめえ、てめえ、と言わんばかりに原稿をグシャグシャにして怒りを抑えている様子だ。もともと原稿など読みはしない。
「沖縄? 知るか! 日本の癖に遠いんだよクソ最果て! この島が好きとか黒のタンクトップ一枚でほざいてるとてめえんちのシーサーぶっかくぞ! 台風接近中だざまあみやがれ!」
 クミコはテーブルから身を乗り出し、カメラに向けて顔をゆがめ、舌を右上ペコちゃんと同じ位置にベロリと出して下品に笑った。
「四国と中国地方は地味だから特にねーよどうにでもなれ! 願わくば雨降れ! それから高知県民てめえら坂本竜馬坂本竜馬うっせーんだよ殺すぞ! 雨はほんとに降るぞ!」クミコは今度は中指を立てた。「それからてめえら香川県民コラ、みんながみんなうどん好きだと思ってたら大間違いだぞこの再生紙ティッシュが。一日中雨だからそれでグツグツグツグツ、間抜け面して好きなだけゆでてろよああクソ、歯糞っ!」
 クミコは大口開けながら、頭をボリボリとかきむしった。髪がばらけ散り、盛大に口の中に飛び込んでその量からして気付かないはずないがクミコは気にしない。
「大阪の水虫野郎どもに聞かせるお天気なんてうおおおお無いっつってんだろうがタコ焼き選手権のボケナスが! ああ!? なんでやねんじゃねえぞ! 一日中、雨のジトジトジトジトした中で水虫悪化させてろって言ってんだよこの阪神タイガー水虫薬の道頓堀びしょびしょパンツどもはよぉ!!」
 クミコの怒りは頂点に達した。
「名古屋の性病小僧はてめえ! てめえ!! つうかもうだからこのクソ日本列島はアメリカの言いなりで腐りきってて、全体的に雨降ってグッシャグシャで終わってるっつってんだろうが今日は! 足元に気をつけていってらっしゃいだこの黄色人種の恥知らずビチビチウンコ大国の虫けらドングリの背比べどもがうおおおおおおおおおまた明日あああああ!」