『猿飛佐助』杉浦茂

猿飛佐助 (ちくま文庫)

猿飛佐助 (ちくま文庫)

  • 作者:杉浦 茂
  • 発売日: 1995/07/01
  • メディア: 文庫

 もう死んじゃった杉浦茂先生の『猿飛佐助』というマンガです。先日行った本屋さんで「それゆけ妻夫木くん 戦国武将本 大特集コーナー」があったのですが、その中にコレが入ってたのがおもしろかった。似たような有名な話で、レンタルビデオ屋の時代劇コーナーに「バカ殿」があった、というのがあります。これはダウンタウン松本人志さんから聞きました。
 手塚治虫宮崎駿をはじめ、なみいる俺の名前を言ってみろクラスの人達が杉浦先生を絶賛し、是非サインが欲しいと言っているそうですが、そこははしょります。とにかくクリエイティヴをしている色々な人たちからの尊敬を集めています。
 とにかく凄い人です。あんまり凄いので、僕は影響を受けまくってしまい、先生の魅力にケツの毛まで引き抜かれながらまだパクっています。大学一年の時に出会って以来、かれこれ四年ぐらいパクり続けています。どういうふうにパクるかというと、
「なんだと。パクって文句あるか」
「えーとえーと ないよ」
 という具合です。この二人目の答える方の感じが絶対にみんな真似したくなるヨーヨー名人の妙技です。これに三、四頭身のなんともいえない絵がついて、さかずきを後ろに投げてかかとで蹴り上げようとしたら向こうへポーンと飛んでいってしまうのだからたまりません。
 杉浦マンガでは大体の感じでストーリーが進行しますが、ストーリーに関係あるなしに関わらず色んな人がいっぱい出てきてその人たちがみんなおもしろいことを言います。気をつけてください。なんか普通のことを言ってるのになんかおもしろいのは反則じゃないかという気もしますが、反則です。古今東西のマンガには何にせよ普通のことを言うやつが脇役でいっぱい出てきて、大抵普通のことを言ってあまりおもしろくありません。ところがスギウーラーにかかると、特別珍しくもないことを言ってなんかおもしろい人だらけなので、おもしろくないところを探すのが一苦労だよ、ということになります。全体もありーのだけど、そのありーのな感じのまま今まさに読んでいるコマがいっちゃんおもしろくて、でもさっきのコマもおもしろかったのでぼくは幸せだという理想郷がここにあります。くれぐれも気をつけてください。
 皆さん総じて平和な世の中がいいなと思っていると思いますが、登場人物が全員、肩の力を抜いてふざけているので、ふざけているというフィーリングなしでふざけているので、何があっても平和です。日常生活でわりとイライラしてしまう方の人たちは、こんなノリで不思議にニコニコ生きていけばいいのかについての秘伝忍法絵巻だと思って、ライフハックライフハックするのもまた一興かと思われます。売ってる杉浦作品を全部読んだ頃には、君の幸せの形がちょっと丸みを帯びているはず。しかも最近、どんどん新しく本が出ています。