読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ろくな性教育〜地方都市のめしマズBros〜

 公園で野球をしている子供たちを、公園で野球するなとしかりつけ、真新しそうな金属バットを奪い取った二人の男は、滑り台の下をくぐって柵をまたぎ、茂みに入り込むと、性交中の若い男女をバットでメッタ打ちにした。
 男女はバットでかなり思い切り叩かれているのにしばらくの間ファックしていたが、ゆっくりファックのアクセルをゆるめ、やがて動かなくなった。
「兄ちゃん、早いとこちょんぎってやろう!」
 弟は美容師がズボンに密着させてぶら下げる革製の入れ物から巨大ニッパーを取り出してちらつかせた。
「待たないか。いつもあせるなと言っているのは、こんなときのために言っているのだよ。見ないか、彼のセクスはまだ力強く漲っているだろう」
 兄は大江健三郎を愛読しているので、性器のことをセクスと呼ぶが、弟は教養がある兄を海より深く尊敬している。
「うん、してる」
「ここで切断してしまえば、彼のセクスは観音様の中に残されることになる。わかるね? それはとても幸せなことだ。なんだか、悔しくないか?」
「兄ちゃん、俺、悔しい」
 弟は悔しそうに言った。
「だろう。それを言っているんだ」
「でも、なら引っこ抜いてから切ればいいや」
「弟よ」
「なんだい、兄ちゃん」
「お前は、女の観音様に自分のセクスを挿入したことがあるかい」
 弟は少し考えて首を振った。
「ないや。そう考えると、確かにない」
「でも、お前は実際にしたことがなくとも、頭で考えることができるね。お前はお父さんとお母さんから考える頭をもらったんだもの。だから考えることができるね」
「うん、考えてみると、考えることができるような気がする」
「すると、お前は誰か女の人の、女の人は誰がいい?」
「ベッキー!」
「ベッキーだね。ふむ。本当にベッキーがいいのかい?」
「ベッキ!」
「ふむ。いいだろう。好きにしなさい。さあ、頭をすっかりきれいにして、考えるのだ。ベッキーの観音様にお前のセクスがそろりそろりと近づいていくね」
「近づいていく!」
「なぜそろりそろりと近づくかというと、お前が初めてだからだよ」
「う、うん」
 弟の目は血走り、兄は瞬き一つせず弟を見つめた。
「さあ、いよいよ入るよ。この作業をみんなは挿入というよ」
「は、入った・・・!」
 弟は目をトロンとさせて、熱いため息をついた。
「このときベッキーが、奥まで入れてと言うね。ベッキーが奥まで入れてと言ったらどうする?」
「ベッキーの言うとおり、奥まで入れる」
「そうだ。言われたことは言われたとおりにするといつも言っているな。あれは、こういう時のために言っているんだよ。間違ってない。間違っていないぞ。なら、奥まで入れてごらん」
「奥まで入った!」
「さあ、ちょっと戻してごらん」
「気持ちいい!」
「抜いてごらん」
「抜く・・・え、あ。抜くとき気持ちいい!」
「抜くとき気持ちいいね。さあおしまいだ」
 兄がパンと手を打ち合わせた。弟はびっくりして尻餅をついた。金属バットが手から離れ、ガランと転がった。息をするたび大きく肩が動き、惚けた顔で目をパチクリさせている。
「いいかい、お前は今、抜くとき気持ちいいと、想像して考えることができたね。でもこれはね、誰にもわかることなんだよ。人の気持ちになって想像しなさいとよく言い聞かせれば、小さな子供だってわかることなんだよ。抜くとき気持ちいいということぐらいは、みんなわかることなんだ。そしたらお前、それがわかったら、今、こいつのセクスを抜いてからちょん切ろうなんて、言うのかい?」
「言わない!」
「どうしてだい」
「……悔しいから?」
「そうだね。悔しいね。お前は今日またかしこくなるね。どんどんどんどんかしこくなるようだ。人が気持ちいいのは悔しいね。ならどうすればいいか考えよう」
「どうすればいいの?」
「まだわかっていないようだ。自分で考えるんだ」
「兄ちゃん、俺、考える」
「うむ。でも、考えている間ボサッとしているのも、それもまた考えものだ。ならどうする」
「わからない」
 弟は今にも泣きそうな顔でやっと答えた。兄はふっと力を抜いて笑った。
「そう。この問題はすごく難しい。だから時間をかけて考えよう。だから、考えている間は……」
 兄は金属バットを男の頭に、ためらわない力で振りおろした。鈍い音がして、男の頭は空気の抜けたボールのようにへこんだ。
「こうしてこらしめておけばいいね。無駄なことなど一つもないからね」