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晴れた日は決闘日和で血が出るござる

 拙者は彼奴はみじめだと思うのでござる。みじめなぁ〜〜、ミゼラブルなぁ〜〜〜。そう思うござる。
 打つも果てるもひとつの命。武士らしく真っ向勝負たたかえばよいのに、あのロン毛の侍は下を向いて地面に三角形とか丸とかを組み合わせたのを描いて、ちいちゃいちいちゃい声で言い訳ばかりしてござる。耳を澄ませば聞こえてござる。
「手加減してもらおっかな、どうしよっかな」
 まったく武士の風上にもおけぬ輩でござる。ひと時も侍のマンパワーを感じない。古来から武士道とは歴代アメリカ大統領が偉く賞賛したほどありがたく男らしい道、まさに男のカントリーロードだとうかがってござる。
「ゲーム対決にしてもらおっかな。試しに言ってみよっかな。どうしよっかな」
 それをあんなこと言って、ミゼラブルなぁ〜〜。バザ〜ルでござ〜るなぁ〜〜。だいたい威厳のかけらもないがっかり大陸顔をぶら下げて、西洋にかぶれてロン毛にして、そのくせ一丁前にやれ刀だちょんまげだ新渡戸稲造だとクソ生意気な奴ではござらぬか。日取りが決まれば拙者がたたっきりたいぐらいでござ候。強い奴というのはだいたい強い顔をしてござる。強い顔だからどんどん強くなるし、ゴザ短髪が似合うようになるし、強いからどんどんスカッとする洗顔料を使うようになっていくでござる。
「ちゃんと剣のやつのゲームなんだけどな」
 剣のやつでもダメでござるよそれは。
ナムコのなんだけどな」
 ナムコのだってダメでござるよ。ナムコじゃダメでござる。あの人やってくれないよナムコのじゃ。真剣勝負というのは、勝敗と罰ゲームが同時に行われるものをさすござる。罰ゲームとはすなわち 死 ござのみ。それは、ロン毛侍の相手方、あのお侍の顔を見ればすぐわかござろう。袂からメンズビオレがチラチラござる。足を肩幅まで開き、口を男らしくチャック、そして空を見上げている姿はいいでござるなぁ〜〜〜ワンダフルわぁ〜〜〜。しかも視線の先には、男のロマンを象徴するようなマジンガーZの形の雲が浮かび、かつてあの雲を宮本武蔵も見たような気がしてくるござる。宮本武蔵も、マジンゴー マジンゴー と実際に呟いたことが拙者にも直感で伝わってござってくる。あの御方のあの顔は、半々の確率で死ぬことを悟りきりながら、それはそれでOKの顔でござる。ああ、言ってやってござれ! 今の若者に言ってやってござれ!
(気だるいのがカッコイイんか。気だるく歩いたり、気だるく腰かけたりするのがカッコイイんか)
 言ってやってござれ! ござれよぉ〜〜〜! やっぱり男らしいのがかっこいいんでなかろうざろうか。潔いのがスッとするんでなかろうざろうか。侍スピリットをごしごし洗いして拙者もああいう人になろざろう。
「俺あの一番弱いキャラ使ってもいいんだけどな。二人でストーリーモードやってもいいんだけどな」
 まだござってるよあっちは。ロン毛は。ミゼラブルなぁ〜〜〜。だいたいストーリーモードじゃダメござろう。味方になっちゃうござろう。
 その時、男らしい方のお侍が、メンズビオレと逆の袂から携帯電話を取り出しござった。何待ちかわからないこの時間、暇なのでござる。空いた時間を有効に使うとは、会社に勤めてもさぞかし出世したのでござろう。その際もなお渋い顔でポチポチ携帯をいじっているその時、ロン毛の侍の方が音も無く刀を抜いたござった。拙者は見逃さなかったのでござる。同時にロン毛は走り出してござった。リアルに殺したい時、拙者も黙って走り出すと思ござる。ロン毛は音も無く意外に速くござり、拙者の鼓動は早鐘のように胸騒いだでござる。
 男らしいお侍は一瞬携帯から目を逸らし、忍び駆け寄るロン毛に気付いたのでござったが、微動だにせず言い放ちござった。
「今わいせつなニュースを読んでるゆえ、待たれい!」
 男らしく、心の臓に、それから空に響く声でござった。周りを取り囲む見物の者達の時間軸はおかしいことになっていたござる。なぜござる、自分も含め、何が起こっているのか三流のリアクションすらできず固まるのみ。ロン毛止まらず。もしや彼奴め プロでござる。殺しのプロでござるよ。男らしかった方は携帯を捨てもせず続けて叫ぶござる。
「あったら絶対読んじゃうゆえ、待たれい!」
 そこから先は非情にグロい光景でござった。ござーるござるのスプラッターでござった。拙者 晩御飯を7時と9時10時で分け食いしたほどでござる。生きている幸せを〜〜〜、噛みしめのぉ〜〜〜〜、チキンカツでぇ〜〜〜。