チーイチ、今日も走る

 チーターのチーイチは、エサを取れた試しがない。今日まで一度もだ。一度もだよ。
 そのため、チーイチのあばらの浮き方は隙間に小鳥が巣を作るほどだ。もう三期生が巣立っていった。
 チーイチは毎日、訓練を欠かさない。ガリガリになったこともあいまって、その速度は時速120kmを超えた。普通のチーターの速度が時速100-115kmなので、これは「普通に速い」という感じである。しかし、「普通に速い」でも速いは速いのでそれは凄いことだ。
 それではそんなに足が速いチーイチは、なぜ狩りに成功しないのか。チーイチ自身にも、その答えはわからなかった。鋭い爪や歯があっても、エサにありつけなかった。
 ある日、チーイチはサバンナを、肩の骨をボコボコさせて歩いていた。人の倍ボコボコするチーイチはみんなからガリボッコと呼ばれているが、本人はそのことを知らない。
 その時、チーイチの目が光った。視線の先には一匹のシマウマ。
 大体の肉食動物がそうするように、急にふいうち気味で走り出したチーイチ。いまや地球上の生物の中で最も速いチーイチの目に映る光景は、他のチーターとほとんど全然変わらない。景色の輪郭が線となって顔をかすめるようだ。しかし、シマウマにはしっかりと照準がしぼられている。シマウマはみるみるうちに近づいてくる。シマが太くなってくる。
 チーイチはヘッドスライディング気味に飛び込むようにして、シマウマの前に止まった。
「エサが全然とれないんだよ、シマウマさん」
「足が速くなる練習をたくさんすればいいんじゃないかなぁ」
「そうか、なるほど」
「一般論だけどね」




赤っ恥! 元ネタとなった高校の時の適当四コマ(当時は意味が理解してもらえませんでした、なんでわかんないんだよ!)