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探偵の瓜松(うりまつ)、初登場

 麝香院家に伝わる名画が盗まれた。青い服を着た女が斜めを向いている、シンプルだが8億する絵である。
 麝香院家名物、50人が同時に靴を脱いでもケンカにならない広い玄関を入ってすぐ、靴を脱いでいる間にみてくれよな、というメッセージをこめて絵が掛けられていた場所に、透明でボコッとした画鋲で小さなカードがとめてあるのを、鑑識の蜘蛛倉兄弟が見つけた。
探偵の瓜松(うりまつ)「これは、サップ・カード……」
 犯人が必ず現場に残すそのカードは、サップ・カードと呼ばれていた。犯人のサップ・アイは、挌闘家でサップと名乗り、ファースト・ネームがボブ、試合開始のゴングと同時に相手に突進する、けっこう負ける、ボブ・サップ、ということしかわからない謎のプロレスラーだ。
探偵の瓜松「何ひとつわからねえ、あきらめムードだ。目撃者は?」
蒼天狗(あおてんぐ)刑事「いないようだ」
探偵の瓜松「初対面なのに、なんだその口の利き方は」
 テルテルテルテル。テルテルテルテル。
 電話だ。探偵の瓜松は、友達がいないのが信じられないほどこなれた様子で内ポッケから携帯電話を取り出した。チラリと画面を確認する。
探偵の瓜松「やばい、テレビ電話だ。どうしよう。テレビ電話どうしよう。ねえどうしよう」
蒼天狗刑事「出なさいよ。電話に出なさいよ」
探偵の瓜松「でも知らない番号のテレビ電話」
江戸川コナン「ねえ、おじさん。サップからじゃない?」
 いっつもいるプレッピーな服装をした子供が今日もいた。一瞬、あれメガネ替えた? と思ったら、フレームの塗装がはがれてるだけだ。かさぶたみたいにあちこちめくれあがっている。
探偵の瓜松「古い遊具か!」
蒼天狗刑事「電話に出なさいったら」
江戸川コナン「サップはいつも、リアル怪盗バトルロワイヤルしたあと電話をかけてくるじゃない。きっとサップだよ」
探偵の瓜松「あることないこと好き勝手言いやがって、もし違ったら…電話かわれ! もしもーしぃ!」
 瓜松の渾身の銭形のモノマネがみんなに気づかれなかった理由は、テレビ電話の画面の衝撃的画づらにあった。
 サップは、青い服の女の絵にあごをのせていた。ケイドロで言えばケイの人々は、あっと声を上げた。やっぱりお前だったのか!
探偵の瓜松「もしもーしぃ!」
 瓜松はもう一度銭形を言って、みんなの顔を見た。誰もが、画面に集中している。
 サップがカメラを指さした。しかめた顔を少し斜めに向けて、ボブ・サップみたいに大きな声で何か言っているが、音割れしてよく聞こえない。
 突然、サップが爆発的なうなり声を上げて八億の絵にかみついた。迫力のある声をあげながらキャンバスを破りとり、ちぎり倒して口に詰め込み、むしゃむしゃ食べている。だいぶ遅れて「食ってやる!」「食ってやる!」という字幕が、サップがしゃべってないときに限って何度も表示された。
 やがて電話は切れた。みんな唖然と立ち尽くすばかりだった。
探偵の瓜松「もしもーしぃ!もしもーしぃ!」
 五分後の瓜松・・・サップカードの裏に書いてあった暗号「月の満ち欠けに女神がノリツッコミ」から本物の絵の隠し場所をあざやかに推理してみせ、事件を解決。