中の下

 アイスのふたをなめることで山田家は、自分達は中の下の家庭なんだということを意識づけたが実際は下の中だった。給食費をなんとか捻出できれば下の中だと言われている。しかし、最近では給食費を払えるけど払わないという反則ぎりぎりの裏技というか反則が社会問題にもなっており、給食費を一銭も払わない一方でピザの出前をチラシを見ずに注文できるなど、その定義が曖昧になりはじめている。
 しかし、そんな世の中だからこそ、山田家は家庭のランクを偽ることができた。本当はなめたくてなめたくて気が狂いそうになっているくせに、MOTTAINAIからという理由を捏造して中流家庭と話題を共有したのだ。だから山田家は、そのあとパンまでもってきて容器についたアイスを原子単位までたいらげることは黙っていた。そんなことを言えば「シチューかよ!」とツッコまれるに決まっているからだ。しかし、恐るべきことに、山田家はこの方法で、下の中のくせに中の中の家庭と同じ量のアイスを年間で摂取しているのである。アイスの購入数では大きく水をあけられているにもかかわらずである。