これがモスバーガーだ!

 ぼくはホッした。モスバーガーを食べ終わったからだ。たまに紙の底に残ったデロデロまで残さずなめる人がいるけど、それがぼくだ。
 もうこれで、ぼくの口の周りがこんなにも汚れてしまうことは、次にモスバーガーを食べる来月までない。ぼくは毎月、極限まで食費を切り詰める自分へのご褒美に、これでなんかうまいもん食べなよ、と千円札を渡すことにしているのだ。お釣りはもらえることになっている。
 ぼくは口の周りを各テーブルに備え付けてある紙ナプキン五枚を投入して完膚なきまでにふき取ると、味のモスバーガーさんオリジナルのオニオンリングに手を伸ばした。ぼくは、バーガーを食い終わるまでオニオンリングやポテトに手をつけないことにしている。そのあと、時間をかけて本を読むからだ。ちなみに今日の本は柴崎友香の『ショートカット』、それがおさまっているブックカバーは、合宿先のテーブルに敷いてあるような透明な固めのビニールで出来ていて、本とカバーの間には自分で雑誌を切り貼りして作った見せ紙が入っている。この見せ紙は2007年上半期にぼくがした全仕事の中で最も重要とされている。
 オニオンリングを右手に持ったまま、紙ナプキンをさらに二枚使用してテーブルを入念に拭いた。これで完璧だ。
 ぼくはオニオンリングをかじった。ひと口かじっただけなのに、衣のほとんどが手の中にあるのに、ぼくの口の中には全オニオンが入っていた。ぼくは、いつものことさ、とアイスティーをすすった。