河川敷にて

 少年少女探検隊(自転車移動)に必要とされていたのはこんなフレッシュネさのある人材だったと、高二の鶴子は思った。こんな、野菜の多いイメージの男を待っていたと。鶴子はまず、彼がいつもメントスを常備していることに注目し、
メントスを持ち歩くのは、キャラが立っていると、すごおーーーっく、そう思う人!」
 各隊員を、その意見についてどう思いますかの立ち方で見回す鶴子。
「・・・ぼく、思うぅー!」「ぼくも、思うぅー!」「ぼくもぉー」「思うぅーー!」
 両手をあげて鼻を垂らしながらジャンプする小学生メンバーは鶴子にほぼ無視された。もう見飽きたからだ。隊員たちはそんなことにも気づかないで、今度は新入りに向かって首を突き出す。
「じゃあこれから、よろしくぅー!」「ねえねえ子分にしたげよーかぁ〜?」「メントス今一個ちょうだい?」
 一人が言うので、
「僕にもくれるぅー!?」「僕もーー!」「僕、メントス、好きぃーー!!」
 みんな言い始めた。
「え? あ、あの」
 新メンバーの困った様子に、こういうウブなのはいいなぁ、久しぶりだなぁ、思い出したよといって、鶴子はメントスを欲しがる隊員にだんだんむかついてきた。思わずセーラー服のスカーフを抜き取ると、がに股に踏ん張った両足で飛び上がりながらそれを振り回し、カミナリを落とした。
「バカタレどもー! 新入りのこのお方が、私につづいて、二番目にえらーい人になるんだろーがーー!」
 驚いたのは旧来の隊員たち。
「え、えぇ〜!?」「副隊長に、どうしてのぉ〜!?」「誰が決めたのぉ〜!?」
「私が決めたのだぁー!」
「え、えぇ〜!?」「本当にぃー?」
「本当の本当だろうがぁー!」
「ほ、本当なら、僕、お母さんに聞いてみてもいぃ〜い?」
「勝手に聞けばいいだろがぇーーい!」
 隊員の顔があんぐり口を開けたところでストップ。そして、ということはやっぱり本当なんだと互いに顔を見合わせる。
「じゃ、じゃあ、僕のお母さんにも、聞くぅー!」「僕も、聞くぅー!」
「聞いてみろ聞いてみろ脳膜炎どもがー!」
「聞くぅ〜!」「じゃあ僕は、テレビの、夕方からのやつのを、見るぅ〜!」
「僕なんか、僕なんか、お母さんのお手伝いを、するぅ〜〜!!」
 新隊員の30代か40代のおっさんが手を挙げて言うので、鶴子は悲しく我に返った。見上げれば、急な堤防に縁取られた空はうっすら朱を帯びて、今日も7時から知り合いゼロの塾に行かなくてはならない。
「お姉ちゃん隊長ぉ、僕、こいつ、きらいぃーー!」「僕もぉーーー!」