俺のじいちゃんのテレビは46型さ

 全国からえりすぐりの博士ばかせをかき集めた僕の研究所を見ますか。僕の研究所はすごいですよ。容易ならんことになってますよ。
 ここ。はいまずここ。自動ドアになってます。ましてや特殊なセンサーがついており、ここを通った博士がはいているジーパンのメーカーを一つ残らず、僕のおばあちゃんが入れ歯をざっと洗いするスピードで読みとることができます。
 さあお入りください。遠慮しないで。全員入りましたね。みなさんエドウィンをお召しでらっしゃる。それはともかく、どうですか……まずこの、博士たちの自習室。一面の自習室、どうです。一度に三百人の博士まで自習できます。おったまげるでしょう。博士の一人ひとりが自分で決めたテーマを調べ学習することで、独力で考える習慣がつき、それが明日を照らす技術につながっていきます。言わばこの部屋は、近未来に相互乗り入れしているんです。アインシュタインも、ここで自習していました。彼の場合、舌が出しっぱなしでした。何回注意しても……それぐらい集中して理論立てていたんです。
 いやでも本当にね、今回は本当にねっ、よくご覧になっていって欲しい。机にかじりついた博士の雄姿を。皆さんにはわからないでしょうが、博士というのは大変な仕事です。どのくらいハードかと言うと、大仏の頭を掃除する仕事ぐらい、とにかく朝が辛い。みなさん、起きれませんでした、起きれませんでした、とおっしゃいます。そのぐらい…おいおいちょっと見てくれよあれを! あれをよ! みんな、額でシャーペンをノックしてるあの博士を見てくれ! あれはね、もうあれだよ、極限まで集中している証拠だよ。すごい。博士ってすごいな。博士ってすごいなって、クラスで広めたいよ。脳の限界を超えて論文の題名を考えるとき、人間はシャーペンをデコでノッキングするんだなあ!
 ハァッ、ハァッ、取り乱しまして……いや失礼……そうです。今、集中している彼に話しかけたら、役所広司でも無視されてしまうでしょう。
 ………ほら、どうですか。気付いてみれば、あっちでもこっちでも…耳を澄ませば聞こえてくるでしょう。博士たちがデコでシャーペンをノッキングする音が……みなさん、頭の中の引き出しの底板をたゆませながら、一生懸命いい題名を考えていらっしゃいます。ほら、ほらほらほら……痛い痛い。
 この国を変えてきたのはね、彼らなんですよ。僕はそう信じています。だから人のことばっかりグチョグチョ言ってないで、自習しろって言いたいんですよ。このメッセージをね、お前らこうして言葉にしなくちゃわかんねーのかと。