そんでマナブどうしたって?

 非常に食いやすい。アジの開きの右んとこが非常に食いやすい。マナブは自分を責めた。どうしてこんな簡単なことに今の今まで気づかなかったのか。マナブのポロシャツは涙で濡れ、飼い犬の食欲が不思議とわいた。アジの一番左上のとこはすげえ食いにくい、なぜなら骨がスッスッスッ、って入っているから。ひとかけごとにスッスッスッなのだから参る。サンマは食ってるうちにグッチャグチャになるが、食い終わったあともグッチャグチャしている。魚は極力全部、生で食っていきたいと言い出せなかったマナブ。ウェットティッシュ買って使わないマナブ。色んなマナブ。それが若さだと父が言った。若さはすばらしいよ。たとえ、踵がガサガサになっても忘れないで。大人たちの先制パンチはいつも説教くさいから、一人きり、アウトボクシング。人生なんて風まかせなんて誰が決めたの。
 マナブはオカリナを吹きながら、砂利道を選んで歩いていった。そういや、校庭の地面に直に張ってあったロープはどうやって張ってあったのだろう。憧れるぜ。オカリナをあっちこっち大急ぎでふさいだり離したりすることで出るピョイピョイ音が、俺を未来へ運んでく気、してる。そして突如、マナブの前に現れたエンジェルとエンジェル、と、翼の折れたエンジェル。折れてる奴は原付で事故ったらしく、傷だらけだ。
「あなたの毛布、鼻水でテッカテカなってんのね」とエンジェル。
「ああ。めんぼくねえ」とマナブ。
 今やマナブは自分を飾ることをやめ、肉親の前でも手を叩いて笑うだろう。笑い飯を見せればすぐに笑うだろう。いつの間にか、マナブの周りには、草食動物が何千頭も集まっていた。笑い飯の周りには、アンダーグラウンドな若手芸人が続々と集まっていた。これは一体、マナブの鼻の頭がテッカリしていることと何か関係があるのか。きっとないだろう。なぜならマナブは脂性だから、だから鼻がテッカリしているのだ。別に一日家にいた時の晩飯前だって鼻がテッカリしているのだ。ところで動物が大集合したのは、マナブの精神世界のコンディションがアニマル的な動きを見せたからに間違いない。先輩が言うんだから間違いない。マナブは一頭一頭の頭をなでてやっているうちに、全ての円安ドル高から解き放たれ、自由の米の自由化状態。今やマナブに、iPodが必要だろうか。江戸時代の今のマナブは、文明開化を求めるだろうか。だからなんなのだろうか。エンジェル達はその横で、傷ついたエンジェルの足首にまかれた包帯を換えていた。包帯まっ黄っ黄なのを見て、帰ろ、とマナブは思った。