ボクちん家!

 いつもいつものように、郵便受けの中で燃えている朝日新聞を消火しようとしたら、なんと! 消火器が切れていた!! 郵便受けのパコパコするところから、煙がもくもく出てるじゃん!
「おかあさん!! 消火器ないよーーー!!」と朝一番でボクちんは叫んだ!
  いつもならすぐ消火しちゃうから、お父さんも真ん中へんの記事はトイレで、かろうじて推理形式で読めて、床に燃えカスがすごい散らばりまくりながらも情報をキャッチできるけど、こりゃ今日はダメそうだ。これじゃあまたまたお父さん、会社でもちっとニュースを見ろと課長の代理にバカにされてしまうぞ! 嵐の人が出てるやつ!
「おかあさーーーん!! 消火器なくなっちゃったーーーーー!!」
  でも、消火器がないんじゃしかたない。郵便受けは燃えるにまかせて、もう一つの日課、牛乳受けのチェックだ。うっし、今日も4本、ぜんぶ割れてビチャビチャだ。隙間から垂れていって垂れていって……下の土が真っ白じゃないか。4年間、毎日牛乳をこぼすと土もあんなに白くなるんだ。今まで1本も飲めたため しがないやい、ボクちんだって身長のばしたいやいやいやいやい…チクショウ……あっ!
「ポストが燃えてるーーーーーーおかあさーーーーー!! 消火器ーーーー!!! 入れっぱなしの水道修理会社のマグネットとかもぜんぶ燃えちゃうよーーーーい!!」
  返事なし! まあいいか! とりあえず郵便受けなんか金属のメタルで元から真っ黒になっちゃってて燃えても平気ックだし、でもお母さんったって無視はいけないよ! 直接目の前で、消火器のこと無視したことぜんぶ問い詰めるために、いったん家の中に、バタフライのマネをしながら戻る息継ぎのさなか、お母さん、ボクちんのこと、無視しないで――と言おうとしたら、お母さんと兄ちゃんがダイニングテーブルを運んでいた。
「そうか、今日はあの日だ!!」と叫ぶボクちん。9才。
「そうだよ! お昼頃までにはリビングに全部片付けないといけないんだから、うだうだご託ならべてないで、やるよ!」といつも元気なお母さんが鳥が全羽飛び立ちそうな大声を上げる! 兄ちゃんはずいぶん眠たそうな顔してるなあ!
「あ、でも、消火器なくて、まだ、火ィ……」とボクちんは弱気に言った。
「うだうだご託並べてないで、やるよ!!」
 ひいぃ! ボクちんも兄ちゃんの方に加わって、大きなテーブルを3人でえっちらおっちらリビングに運ぶ。去年の今頃もこんなふうにやっていたなあ……と、おセンチかんちなボクちんはしみじみ思い出していた!
「次は冷蔵庫に、電子レンジ、トースターもだからね!!」と司令官の声が飛ぶ! アイ・アイ・サードは四番長嶋、右手隠して脳・梗・塞!
  ボクちんたちはがんばる。なぜかって、その頃、お父さんはいつものように、2階のベランダで、襲いかかってくるコウモリの大群と、モップ1つで戦っているんだ! 何者かに命令されているのか、足に小さな発信器のようなものをつけた無数の吸血コウモリ時々トンビ! そんなものと朝から戦っていたら、会社でまったく結果を出せないのも……コクコク。ボクちんのお父さんは、アレで精一杯、家族のためにがんばっている!! いつもありがと父の日になんかやろう!

 1時間後・・・

「よし、これであらかた片付いたわ。後は待つだけね」
 がらんとしたダイニング・キッチンを見て、お母さんはすっきりした顔つきだ!
「今年はいつ来るのかな?」
 と兄ちゃんが言った、その時だった!
 真っ赤なダンプカーが、ドリフト気味でうちに突っ込んできた。ものすごい衝撃と音で塀と壁をなぎ倒し、派手な煙を上げながらそのままダイニング・キッチンに乗り上げて、やっとストッパ。
  壁や天井の破片がバラバラと落下する中、ダンプカーは、荷台に満載した20トンの糞尿を、ボクちん家の床に、んザーーーーーーーーーーッ!!! み・ん・なぶちまけた!! ボクちんたちの足下に糞のさざ波! 糞便の薫風! ダンプカーは、目に染みる真っ赤なボディをひらめかせて、何食わぬ顔でバック&バック! そのままブーンと出て行った!!
 見えなくなってしばらくなって、最初に口を開いたのは、ここでもやっぱりお母さん!
「よし、これで今年もつつがなく済んだわね」むつかしい言葉!
「赤いやつだったね!!」とボクちん。ボクちんは赤が好き!
「チェッ、ダンプカーといったら黄色だろお……」と兄ちゃんは歯ぎしりギリギリ、歯並びが悪いから人の何倍もすっごくくやしそう!
 その時、「おいおいおい、助かったぞ」と言いながら、顔中すり傷だらけ、首筋血だらけ、顔色真っ青の父さんがモップをもって降りてきた。「今の衝撃で、吸血コウモリたちがどっか飛んでったんだ。これで今日は、仕事までゆっくりできるってもんだ……」
「あなた、いつもお疲れ様!」「お父さん、いつもありがとう! 父の日になんかやろう!」
 その時、リビングに避難させたトースターから、まるで父さんが来るのを待っていたみたいに、焼けたパンが飛び出した!! あっはっはっはボクちんたち、すっごく笑ったんだ!!!