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人質安否の顛末

創作


昨日のNo, 明日のYes - YouTube

 

 いくら師匠でも、あんなところへ野グソしに行くのは無茶です。危険思想をもつ民族が複数うようよして金を稼ごうといきまいているし、トラもヘビもサソリもいる。ヤリが地面から飛び出す仕掛け、『アポカリプト』の最初と最後のヤツもある。絶対にやめておくべきです。
 そう言ったのに師匠は飛行機に乗って行った。やらなきゃなんねえことが有馬記念とくだらないことを言って、けつをくり抜いたジーパンで、iPhoneからイヤホンで「昨日のNo、明日のYes」しかもBankBandのやつをリピート再生しながら、行った。やらなきゃなんねえこととは、野グソである。
 案の定、師匠はとっ捕まった。原住民サイドに切れ者がいるらしく、師匠を人質にとったと師匠が自分のイヤホンを鼻から喉に通された写真付きで、僕にLINE連絡をよこしてきた。師匠のLINEには僕しか登録されていない。
 僕はあせった。写真の師匠は、粘膜が人より弱いこともあってかなり辛そうだった。だから、1.2mもあるイヤホンを買うなと言ったんだ。なんでそんな長いのを買うんだ。巻けばいい、じゃない。しかも、差し込み口がL字型になってるやつだから(これは僕が薦めた)鼻から通す時、さぞかし痛かっただろう。
 背景画像をその写真に設定した後、目的を尋ねると、「この男が着ているのと同じ、けつのくり抜かれたジーパンを2億着よこせ」と師匠のケツの写真つきで「This」と送ってきた。結構ムチで叩かれたらしく、真っ赤になっていた。背景画像をその写真に差し替えて「無理だ」と即答すると、2日後、「日本政府にジーパン2億着要求」と報道が世界を駆け巡った。
 すると、けつをくり抜くジーパンにフォーカスをあてた報道が一気に過熱。日本政府は「新品ならよかったが穴を開けるとなると2億ドル近くかかる。テロに屈するわけにはいかない。あと意味がわからないので、もう少し状況を整理したい」とかなり慎重な姿勢を示した。当然、散漫な初動と叩かれ、国民は数年に一度訪れる経験を元に、「自己責任」という言葉を鋭意送信する者、それに警鐘を鳴らす者、方々で草を生やす者、ひっそりラーメンの話をする者の4つに分かれ、にぎやかになった。師匠の画像は最初からけっこうアクが強かったので改良する面白みに欠けるためか、コラ画像はあまり出回らなかったが、元のけつ画像が「今年を象徴する人」のカレンダーの2月に採用された。
 師匠は身寄りが母親しかなく、その年金で暮らし世界中を旅してまわっているという『ナニワ金融道』の落振県一よりひどい境遇だったので、やむを得ず、すでに認知症を発症しているそのお母さんが会見に引っ張り出されることになった。
 会見は大失敗で、息子の名前も言えず、はっきり口にしたのは、尾崎紀世彦がすきだ、がんばってほしいという発言ばかりで、この件で叩かれたのは、不憫な老婆を衆目にさらした政府とマスコミだった。すでに亡くなっている尾崎紀世彦ブームが訪れ、CDがまた売れた。この歌唱力が現在の歌手には無いものだと多くのミュージシャンがボロカスに叩かれた。
 水面下では、いくつかのNGO団体がけつをくり抜いたジーパンを国民に募っていた。「着なくなったジーパンのおしりをくり抜いて送ってください! わたしたちが責任をもって届けます」そんな文句がFacebookを中心に拡散され、ご丁寧にくり抜き方をまとめたページも、師匠のけつの写真付きで公開され、その甲斐あってか、けつがくり抜かれたジーパンが600着ほど集まった。輸送をリアルタイムで報告する団体職員が現地に到着、トラックで運んでいたところを別の民族に襲撃された。ジーパンは奪われ、団体職員は人質に取られた。その人物がどこから見てもホモだったので、そちらににわかに注目が集まり、コラ画像が製作されたが、NGO職員ということもあり、こちらには政府・マスコミが不快感を表明、すると野グソが趣味の男はどうでもいいのかと国民の一部が真っ向から反論を展開した。さて、その地でかなり好評らしい師匠考案のジーパン600着を得た民族は大喜びで、ケツをくり抜いたジーパンの画像、自在にクソをする姿を動画で続々とアップ、元々2億着要求していた方の民族としては約束がちがうと大激怒し、特に制限時間はもうけていなかったのに、「時は来た」と久しぶりに僕にもラインで連絡をくれて、師匠は見晴らしのよい荒れ地の切り立った崖の上で、朝日をバッグに象牙を尻に突き刺されて、糞尿をもらしながら惨殺されたが、そんなところで野グソのようなものができたためか、どこかうれしそうだった。という風に僕の目には映った。そんなことは僕にしかわからなかっただろう。

 


また逢う日まで 尾崎紀世彦 - YouTube