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ケツで歌うABCD

 英検3級を受験しようとした日、僕はアメリカ人に犯された。大量にソーセージが捨ててある公園の片隅で四つん這いになり、尻のあたりから発されるラップ音を聞いていた。
「英っ、検っ、受けっ、るんですっ! 間にっ、合わっ、ないんっ、ですっ!」
 僕はまだ英検3級を取得する前だったので、アメリカ人に自分の意思を伝えることができなかった。世の中うまくできている。アメリカ人は音楽を聞いていた。漏れ聞こえてくる音だけで、かなり速いテンポの音楽を聴いていることが分かった。そのリズムで生きていることが分かった。
「3級っ、3級っ!」
 僕が今日受ける英検の級を知らせると、アメリカ人は腰の動きをなおさら激しく、しかしマイルドな親しみを込め始めたではないか。
 思えば僕はこの時、国際語の何たるかとその恐ろしさについて何も知らなかった。僕という日本男児ときたら、屈辱的なことに英検の受験級ではなく、犯されたことへの感謝をそのいやらしいお口で唱えていたのだ。
 その日以来、僕の肛門は二度と閉じない花となった。
 僕は高校生になり、立派なホモになっていた。そして英語はペラペラだった。あの日犯されて以来、僕は体中の穴という穴を使って英語を自主特訓しマスターしていた。小林克也に犯されたい。高校三年間、それだけを考えていた。
 大学になり、ずいぶんホモとして動きやすくなった。ホモのルームメイトもできた。クラシックなホモである僕にとって、ホモのルームメイトを見つけることは実にストレートなことだったのだ(ホモジョーク)。彼は中国系アメリカ人のチャンという男で、素晴らしいペニスを持っていた。彼も、まるで日本刀でアメリカンドッグを作ったようだと僕のペニスを見て熱いため息をついた。
 ある日、僕はいつものように町を歩いていた。
 すると、いた。日本語能力試験の本を持った気の弱そうなアメリカ人。もう忘れていたはずだったのに僕の血は騒いだ。僕はもう犯された人間ではなく、犯す側となって自分を取り戻す準備が出来ていた。
「きみ、ちょっと来なさい!」
「え?」
 アメリカ人の後ろについて50mほど歩いたところで、僕は一人の警官に腕をつかまれた。ニキビ面が嬉しそうにゆがむのを僕は見た。
「こっちへ来い! やっと目の血走った、トチ狂ったホモを見つけたぞ!」
 そして僕は公衆トイレで思うさま犯されていた。興奮した警官は、拳銃を僕の肛門に突っ込んで叫んだ。
「さぁ撃つよ!」