Under The Walrus

 え!? セイウチの下に何冊のエロ本を詰め込めるかにチャレンジし続けていたフィンランド出身の冒険家が死んだ!? 下世話なニュースサイトでその記事を読んだとき、ぼくは部屋で一人、
「そうなんだ! 初めて知った!」
と叫びたおしていた。
 ぼくは、ガオガイガーをあしらった学習机の一番下のでかい引き出しの奥のデッドスペース、その名もエロ本地獄谷から一冊のエロ本(洋ピン)を取り出した。
「これを……セイウチの下にいっぱい、次から次へと押し込んだらどんな気分なんだろう……」
 僕は一発抜いて(ステファン)、あっという間に眠りに就いた。
「フカダくん……フカダくん……」
 誰かが僕に声をかけている。僕は目を覚ました。
「気がついたかい、フカダくん」
「あなたは、セイウチの下にエロ本の!」
 僕は名も知らぬ冒険家を前にして体を起こそうとしたが、体全体がビンビンになっていて全く動けなかった。少し力を入れると、頭がぴょこんと前傾したけれど、すぐに戻ってしまった。僕は、何かに見立てられていると感じた。
「今、君をチンポコに見立てて話しかけている」
「やっぱりか。やっぱし僕はチンポコに見立てられていたのか。苦しい、息苦しい!」
「フカダくん、どうして僕がここにいるのかわかるね」
「さっぱりわからないよ」
「考えてもごらん。僕は、セイウチの下に、エロ本を何冊も、多いときは6冊も押し込んだのだよ」
「6がリアルな数字なんだね」
「エロ本を大事にしたいから、背表紙から押し込む」
 僕は、けっこう頭を使うものなのだな、と感心した。それがわかったのか、冒険家はにっこりうなずいた。
「君は、セイウチの恐ろしさを身をもって知っているね」
「知らないよ。見たこともないよ」
「セイウチは、ハーレムを作る。君はハーレムを、あのフィールソーグッドなハーレムを知っているね」
「ハーレム!? フィールソー!? 知らないよ。聞いたこともないよ。ハーレムって何?」
「フィールソーグッドとは、とても気分がいいという意味なんだ」
 その時、冒険家の下半身がスケスケになり始めた。
「あ、ああ! スケスケだ!」
 僕の体はますます度を超して硬直し、喩えて言うならば、亀頭がパンパンである。
「亀頭がパンパンだろう。それがフィールソーグッドだ」
「こ、これが? じゃあハーレムは?」
「ハーレムとは」
 そこまで言って冒険家は完全にスケスケになってしまった。僕はネムネムになってしまい、キムキム兄やんは人望をなくしつつあるのではなかろうか。
 翌日、僕はエロ本6冊カバンに潜ませ、通学の下り電車に乗った。座席の隙間にエロ本を詰め込もうとしたとき、逆に医者になろうと決心した。