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善意と憎悪の空炊き状態

 元保健所職員(東京都・25歳)
「あれ以来、日本全体のムードが気に食わないので、むしゃくしゃしてやりました。mixiニュースで読むかぎり、江頭と枝野以外はすべて偽善者だと思います。あと、王蟲の鳴き声は布袋のギターらしいです。25日の深夜、貯金を全額引き出して、ヘリコプターをチャーターしました。操縦者の口利き料も含めて、500万円です。深夜は高いらしくて……義援金? なんで義援金にするんですか。本当はもっと早く実行したかったんですが、みずほ銀行の不具合で。青色が目立ってるなと思ってみずほ銀行にしたんですが、ほかの銀行に口座を作ればよかったです。それで、朝方4時ごろに被災地の上空に着きました。感想? 電気も通じていないところでなにも見えないので、特には。だいたい、ニュースでもう見てるし、見えたとしてもなんとも思わなかったと思います。そんななか、ぎりぎりまで下降してもらいました。ええ、すごく技術のある操縦士さんで。その操縦士さんが、かなり下まで降りた時に僕の方をみて「今、地面から8ミリぐらい浮いてるよ。8ミリをキープしてる状態」と言うんです。へぇと思って窓からのぞくと、ヘリの明かりで地面がヘリの足から3mぐらい下に見えたので、そこで、犬を放しました。ドアを開けてリードをほどいたら、結構自主的に飛び降りたので、動物ってすごいなと思いました。なにより彼らは裏切らないし、嘘をつかない。人間だと、100万円ぐらいお金をあげているのに、隣で嘘をつかれるわけですから。犬たちには、被災地をパニックに陥れてほしいと思っていました。被災された方は気の毒ですけど、僕が被災地に犬を放さなければ、プラスマイナスのバランスがとれないと思いました。犬たちは、彼らは、何日後かに殺されてしまう運命でした。僕がスイッチを押して、ガスで殺すはずだったんです。そんな彼らが、今は生き生きと吠えたてながら荒れ地に降りたち、着地と同時に三々五々、黒い影になって散らばっていく。とても感動的な光景でした。僕は強いヘリ風(へりふう)を体中に浴びながら、忍者が殿様の前から解散する時を思い出していました。ヘリ風という言葉は、その操縦士さんが教えてくれました。東京に戻る途中、僕は一言もしゃべりませんでした。話をすれば、嘘をつくからです。東京に戻ってくると、ヘリポートに警察官がたくさん待機していました。なぜか警察犬も二匹いました。実は、出発して被災地に向かっている段階で、僕はすでに追われていて、警察から僕を捕まえるという無線がたびたび入っていたんです。犬を持ち出した容疑と、犬をいっぱいヘリコプターに乗せた容疑です。帰りの無線では、被災地にこっそり犬を放した容疑も加わっていました。操縦士さんは約束通り、知らなかった、脅されたの一点張りでしたが、僕が全部白状してしまいました。ヘリの高度で嘘をつかれたので、悔しくて、百万円払ったことも、その嘘をついたことも言ってしまいました。それは言わなくていい、と警察の方に言われました。反省はしていません。僕は何にしても腹を立ててしまう世代の、不幸な方に振り分けられた、平凡な男の一人です。今回、たまたま行動力があっただけです」