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ギャグマンガ日和をパクった瞬間強制終了

「ちくしょう。山田の奴め、野良犬呼ばわりしやがって」
 栃本は、足を机に投げ出して相当イラだっていた。ちょうどロッカーが真横に来るように座ったのは、当然、関西のツッコミを模した水平な裏拳をロッカーにたたきつけるためだ。だからあんなに端っこに座っているのだ。
 ダン! 部屋の隅っこに立っている舎弟の吉田は肩をびっくりあがらせた。
「どうしたってんだ。穏やかじゃないぜ」
 一人の不良が部屋に入ってきた。こいつの名前は東海林。言わずと知れたハテナ高校四天王の一人、小学四年生で既に『Dolls』以外の北野映画を全て見尽くした筋金入りのワル。得意技はチョップの嵐。フィクショナルな創作を志すものならば一生に一度しか使えないこの名字を、俺は今日使う。
「うるせえ! 黙りやがれ!」
「いったいどうしたってんだ。昨日は新しいゲームを買ってあんなに機嫌がよかったお前らしくもない」
 下唇を噛んでムッとしている栃本、どうやらゲームのことを思い出しているが、それでも機嫌が直らないらしい。
「今日も新しいゲームを買うか?」
 栃本は眼光鋭く出口らへんの床を見つめていた。なぜそんなところを見つめているのか。
「へっ。ふてくされてみっともねえ。すっとぼけなくても知ってるぜ。ビックリ高校の山田の野郎に野良犬扱いされたらしいじゃねえか。学校中の噂になってるよ」
 吉田の聞いたところによれば、路地裏でばったり山田と遭遇した栃本がメンチを切りながら山田の方へ向かって行くと、山田はあっさりその横を通り過ぎ、「野良犬が」と吐き捨てたらしいとのことだ。
 ダン! いやなことを思い出し、また栃本は怒りを爆発させた。
「おやおや、穏やかじゃねえな」
 入り口から背をかがめて入ってきたのは延岡。奇しくも同じセリフを言ってしまったが、言わずと知れたハテナ高校四天王の一人である。その長身を生かして今時デニス・ロッドマンを尊敬することで、故きを温ねて新しきを知る隙のない男の名を欲しいままにしている。脚力を生かしたドロップキックの威力は相当なものだが、何よりも凄まじいのは、その豪腕から繰り出すチョップの嵐。
「吉田、栃本が山田に、野良犬扱いされたって話、聞いたか?」
 しかしこのとき、同じセリフで登場した恥ずかしさの中で、吉田はうまく口が動かない。そっぽを剥いたまま、「ん? ああ」とだけつぶやいた。
「でも、ここまでは聞いてねえだろう。栃本は、野良犬と呼ばれたんじゃねえ。本物の野良犬と間違えられたんだ。信頼できる筋からの情報だぜ」
 延岡の聞いた所によると、路地裏でばったり山田と遭遇した栃本がメンチを切りながら山田の方へ向かって行くと、山田は「野良犬なんて珍しいな」とでも言いたげな、都会の生態系の変化のことを考えるような顔つきをして歩き去って行ったという。
 ダン! ダン! 栃本が二連発でロッカーを叩いた。
「なんだか穏やかじゃないみたいだな」
 また一人、不良が。これは神崎、3組の言わずと知れた神崎、ハテナ高校の四天王だ。前の二人と同じセリフで登場してしまったが、本人はそんなこととはつゆ知らずいい気なもの。お決まりのセリフをお決まりの時にちゃんと言えたことに誇らしささえ感じている様子。この不遜な自信を裏打ちするのは伝家の宝刀と称されるチョップの嵐である。その威力は牛もいやがり、二分も続ければ走り出すという。
神崎「聞いたぜ、栃本。山田の野郎に本物の野良犬と間違えられたらしいな。お前聞いたか、延岡」
延岡「え? う…うん」
神崎「でも、これは知らないだろ」
 神崎の聞いた所によると、路地裏でばったり山田と遭遇した栃本がメンチを切りながら山田の方へ向かって行くと、山田がこちらに気づいてしゃがみこみ、「よーしよしよしよしよし、よしよしよし、よーしよしよしよしよし、よし」と顎をなで続け、その手から直接、アメリカンドッグの切れっ端も食べたということだ。