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がんばれがんばれミツル、負けるな負けるなミツル

 人は、一日の二百発のウソをつくという。ミツルはそれをテレビで見た。
 ふだんから、おもしろいこととは何かということを綿密に考えているミツルにとって、一発のウソで決めるべきだと考えるのは、ミツルが中学生だとしても当然のことだった。そして、一発しかウソをつかない日として、ウソを999発ついても笑ってすますことができる4月1日以外を選ぶのも、当然のことだった。
 ミツルは、8月31日の夜、明日9月1日をその日にしようと決めつけ、「当然だ」と書かれたアイマスクを装着して眠りについた。
 翌日、ミツルは目覚めた。アイマスクがどっかにいってしまっているのを見て、あやうくウソをつきそうになるミツルだったが、グッとこらえた。
 長い一日が始まる前に、ここでミツルの前日の考えをおさらいしておこう。まず、一番やってはいけないのは、「ウソをつかないというウソを一発つく」みたいなことだとミツルは考えていた。それは、「一流づらした二流のやることだ」とミツルは考えていた。「最近はそういうものばかりだ」というのがミツル一流の印象だった。「まちがいなく『週刊ストーリーランド』が諸悪の根源だ」とミツルは考えていた。
 ミツルは時計を見た。午前5時半、「8時に起きれば間に合う」が家での口癖のミツルも、いささか興奮して早起きしすぎてしまったようだ。その時計をじっと見つめて、果たして何を考えているのか。
「おそようございます」
 飼っているハムスターが二度見するのを背中に感じながら、ミツルはこんな朝っぱらから、読書感想文の最終チェックを始めた。ウソまみれだが、今日以前のウソはセーフである。そして二度寝した。
 一瞬の判断で朝一に一発で決めてみせたミツルは、学校でも当然ウソをつかなかった。なぜなら、ミツルは学校では大人しい方だったから。