だいぶ空いたから、とりあえず書いてみよう

「サイズ無いくせにTシャツ着てんじゃねよデブが。多肉植物か」
 体育終わりで汗がひくのを大人しく待っていただけなのに喋ったことのない女子にののしられて学校を飛び出した関。目に涙、額に汗、わき汗。日本列島は今日も暑い。
 関は、ふうふう歩きながら学校の裏マウンテン(裏山)入りした。
「やせる、俺は絶対にやせてみせる」
 最近ブルース・リーの映画がBSでやってるし、その前はジャッキー・チェンのがいっぱいやってたから、関は別に全部見た訳じゃないけど、体を動かすことに対してストイックな気持ちになっていた。
 最後の力を振り絞り、ちかくの木ちかくの木を片っ端から支えにして特に何のあてもなく歩いていた関が出会ったのは、老婆。それも、いきすぎたダイエットからくる拒食症で、いわゆるこわいビジュアル(ぎりぎりニュースで放送できるレベル)になってしまった老婆だった。
 老婆は、関の逆汗染み(シャツに汗が染みすぎて、逆に染みていない部分の方が汗に見えてきたぞ? という得意げな現象)を一目見ただけで全てを察し、突然言い知れない不安を感じて、さっき無理矢理食べたツナポテトパンみたいなものを全部吐いた。
「大丈夫ですか、おばあさん!」
「ありがとう、ありがとうね」
 一生懸命に背中をさする関と、それに身を任せる老婆の間に芽生えた感情は、不信感であった。
 こいつは絶対に信用できない。
 俺は、こいつを殺す。
 仕上げのツバが粘って粘って吐き出されるのが合図だった。老婆は振り向きざまに細い腕で殴りかかり、関は逃れざまにのろい蹴りを見せ、カラスがゲロに飛びかかった。
 ぼくは今、それをスケッチしている美大生。見ていろこれが、ぼくの卒業制作だ!