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ハロー!霊波乃光

 こないだ、マク・ド・ナルドで、90歳の霊波乃光おばあちゃんに出会いました。いきなり霊波乃光と言っちゃうのは、今日みなさんにしたい話は、宗教と別に関係ないからです。
 こんなマクドナルドでソロ活動している超年配の女性が隣に座ってきた時点で、俺は人より若干そういうことが多いので、同じOLに二回逆ナンパされたり、ボロボロのおばあさんに草を買ってくれ〜買ってくれ〜と頼まれたこともあるので、その時点で気をつけようと思ってた。
 そしたらダメだった。
 かたくなにイヤホンを耳に詰め込んでいる俺の方に、おばあちゃんが顔を若干寄せてきて、これ見てるよね? 見てるよね? とあせった俺がわざと考え事ありくさく前だけを見ていたら、その時すでにおばあちゃんは話しかけていました。時すでに話しかけていたんだ。
 それに気づかない俺は、あんまり見てくるので、耳に流れていた「みなし児のバラード」をそっと外し、おばあちゃんの方を見てみたら、「大変ね、勉強大変ねえ」と思いっきり話しかけていた。
 その時、俺はiPhoneと比べたらクソそのものの画期的ミニワープロシステム、pomeraで、ホームレスが飼ってる犬を謎のバケモノが食べちゃって、それを知った他のホームレスが、浅田真央の犬(エアロ)を誘拐して飼い主にプレゼントするためにがんばるけど、途中でゴミ漁って日が暮れちゃうって話の、食べかけフィレオフィッシュ食べて腹をこわす場面を書いてたので、リアクションに困ってしまった。つくづく俺はテレビ向きではない。
 そのあと色々ない時間が色々あって、おばあちゃんの半生を最初から最後まで聞いてたんだけど、声ちっちゃいし、断片的すぎるし、説明ないままの固有名詞出てきすぎて、途中で眠くなった。
 でも、最後に、「今までで一番楽しかったな〜って思い出すのはいつ?」と聞いてみたら、人間ってなんだろうと思うような発言が返ってきた。
「今までで一番楽しかったな〜って思い出すのはいつ?」
「戦時中だけどねぇ。洗濯場で、お友達と、人間のクズみたいな男と洗濯しながら話していたのが一番楽しかったねぇ〜」
「人間のクズ?」
「みんな戦争に行って、男は人間のクズしか残ってなかった」
「徴兵検査で、丙・丁種の人が」
「そう。そいつと、お友達と毎日話してた。楽しかったねぇ」
 俺も、そこにいたらすげえ楽しかったと思う。世紀末をまたいでも第一位で思い出したいのはそういうことになるなら、月曜日から日曜日まで一日たりとも気を抜けない。そういえば毎日毎日には、洗濯の暇つぶしに友達と一緒に人間のクズを蔑みつつ会話を転がしていくようなタイプのおおっぴらに出来ないすばらしい光が射しているような気もする。
 俺も70年後の宇宙ステーションで、隣の若者に、人間のクズが不意打ちで登場するようなとびっきり楽しい歴史を伝えたいと、深く深く祈る。時代のプレッシャーを全部はねのけて、堂々と、一番楽しかった時のことを一番楽しかったと言い切りたい。
 別れ際、ひとしきりの創価学会の悪口のあと、誰にも家族がいて祖先があってそのおかげで生きているんだから、出世しなさいよ、がんばってね、と言われた。うるせーよ、ありがとう、お前もがんばれよ、と思った。