プロファイル

 見つかったアジトに物的証拠はなし。ただし生活感はあった。そこで、犯人像を探るため、プロファイラーがやってきた。橋の下から、バイクを飛ばしてやってきた。
「え? ホームレスなの?」
 警部はそのへんの下っ端警官に問いかけた。ホームレスみたいな恰好でうろつきまわるプロファイラーは超くさかった。
「わからないです」
「にしたって、超くさいじゃねえか。ちょっと聞いてこい、お前。聞いてこい」と下っ端を行かす警部。
 下っ端は、首筋をかきむしりながらきょろきょろと部屋を不思議そうに見回しているプロファイラーに恐る恐る声をかけた。
「すいません、なんか…におうんですけど……」
 プロファイラーは怪訝な顔つきで答えた。
「におう? 事件が?」
「いや、あなたが」
 プロファイラーは顎を極端に引いて自分の体を右から左に見下ろして、ああ! という感じで笑った。
「出がけに犬、抱いたからね」
「それでそんなになります?」
「出がけにくっさい犬、抱いたからね」
「ホームレスですか?」
「ん?」
「って警部が聞いてるんですけど」
「……あれは」
 プロファイラーは部屋の隅っこの棚を指さし、歩み寄った。そして、その一番下の段から雑誌を一冊取り出した。
「なんです?」
「こいつは……きみ、去年の6月のジャンプだよ」
 プロファイラーはかがみこんでパラパラ読み始めた。下っ端警官はその上にかぶさるようにしてのぞいたが、超くさいので離れた。
「ほら、『フープメン』ってくそつまんないバスケマンガやっ――」
 そばに警官がまだいると思って喋ったが誰もいなかったので、プロファイラーは急に黙った。また少しパラパラしてから、立ち上がった。
「この犯人はね」
 さすがにこの時ばかりは、警部や他の者も遠くからその意見に耳をすませた。
「ジャンプをあんま買わないで、立ち読みする奴だね」
 みんなが黙っているので、プロファイラーは、みんなわかってないんだな、と思って続けた。
「ジャンプをあんま買わない奴の家には、中途半端に昔のジャンプが一冊ぐらいあるんだよ。間違いねえ」
 なぜか、いま来た鑑識の中で一番太ってるやつをビシッと指さした。