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ブラジルマンとドブネズミ

 自分の屁の風圧でプレイメイトのポルノポスターにはりついて身動きが取れない一人秘密警察ロロバージョ・ブラジルマンに拳銃を渡そうと、天井裏の相棒ドブネズミは必死で考えていた。そろそろギャングたちが戻ってきてしまう。盗聴器と爆破装置(爆破する直前の様子を盗聴するという悪趣味を生き甲斐にしている)は既に仕掛けたのだから立ち去らないとまずいが、さらにまずいのはロロバージョ・ブラジルマンの恋人といってもいいニューナンブが屁の勢いでベッドの一番奥にすっ飛んでいることだ。その顛末を天井の穴から見ていたドブネズミは「何やってんだよ!」と大きな声を出した。その声はきっとギャングにも聞こえただろう。自分のおなら風で動けなくなっている場合では絶対にない。ロロバージョ・ブラジルマンはせめて音を出すまいと、自分の尻を両手で広げており、上から見ると、ネズミから見ても本当に何をやってるんだという感じだった。
 とにかく急がねばならない。ドブネズミは天井の穴を広げようとカリカリやりだした。生まれて今日まで誕生日以外はさんざん固いものを食って生きてきた強靭なアゴの力は凄まじく、穴は瞬く間に大きくなった。しかしそれでもネズミ一匹が入れるかどうかという穴である。ここでドブネズミは、ピストルは鉤型、角度を変えながら入れたらいける、とギリギリの状況で時間と仕事量を最小限に抑える知恵を働かせていた。
(ドブネズミみたいに美しくなりたい)
 ネズマインドにこう言い聞かせながら、長くて気持ち悪い質感のシッポを銃に結びつける、かなり痛いが少しも騒がない。そしていよいよ穴から下のブラジルマンに下ろすため、銃を穴にねじ込む。しかし、斜めにしたりなんだりどうやってもうまくいかない。引き金のカバーのところが穴にひっかかっている。ドブネズミは険しい顔で黄色い前歯をむき出しにした。追加で穴を広げなければいけなく、めんどくさい。
 その時、足音が聞こえた。警戒している様子もなく、落ち着いた足取りでそのまま真っ直ぐこっちに向かってくる。まだ気付いていないようだ。ところが屁が止まらない。だいぶ黄色くなってきたこの部屋に入ってきた瞬間殺すしかここを乗り切る方法は無いだろう。仕方あるまい。銃を半分突っ込んだまま苦しい体勢で穴を広げるドブネズミ伯爵の体は汗だくだ。
 足音がドアの前まで来た。話し声が聞こえると同時に、ドアノブが回される。ドアが開いた時、かじり続けるドブネズミのわきから自然と銃が滑り落ちていった。ギャングは二人、すぐに気付いて驚きと牽制の声をあげる。天井裏では引っ張り込まれる体を足で踏ん張るドブネズミ。ギャングは空中の銃を目にするかしないかのうちに懐に手を入れる。シッポが伸びきりネズミのケツが天井の穴からはみ出すと同時に、銃が空中にバウンド。その上がり際にロロバージョ・ブラジルマンの右手が差し込まれる。ギャングもピストルの銃口を向ける。三秒後、屁の音が鳴り響く中、ギャングの額に一つずつ穴が開き、屁は鳴り響き続けた。