『奇想天外な科学実験ファイル』アレックス・バーザ/鈴木南日子

 一時期のことなんだけど「まじめにバカをやるんだ」っていう子たちがいっぱい出たよね。あれはなんだったのかな。キャンパスで缶蹴りしたり、よく覚えてるよ。確かに、俺も前そんな気分になったこともあった。でも、誰しも大人になるよね。俺もなったんだ。そしたら、なんかムカついたよね。そんなこと言うなよ、ってムカついたよね。おもしろいものってのはそんなところを通ってくるんじゃねえだろ、って思った。大学時代は一人で本を読んでたよ。
 おもしろいものってのは、必死で取り組んだ時に、ふと後ろを振り向いたらいました。そういうものだと思うよ。そういう意味ではシャンプーのオバケに近いものがある。全力で髪と頭皮を洗うじゃん。ふと、あ怖い、ってなる瞬間、その時後ろにオバケがいるよね。一つ目がステキに濡れているよ。そういうことなんじゃないかと、さっきアメリカンドッグをあっためてる時に思った。
 この題名まんまの本には、そういう人たちのことがいっぱい書いてある。その人たちは、真面目に実験していたら、はるか2009年になって、この中学生が今年のベスト1にあげそうな本に紹介されてしまった。とにかく、この本には、俺が知りたい残酷な実験や性的な実験のいろいろがかなり上辺で書かれていて気に入った。
 読んでって、知ってるやつが出てきた時、これ知ってるなって思うよ。でも、知らないのも山ほどある。だいたい知らないやつだ。
 俺が一番これぞと思ったのは、人が死ぬよね。そこを、シーソーみたいな道具にくくりつけて、ギッタンバッコンすることで血をめぐらせて生き返らす実験かな。研究室では、この血の循環を回復させる作業を「ティーター」と呼んで盛り上がっていた。そしてこれの何が凄いって、そこを少し読んだ時、俺はいけると思った。ティーターすればいけるんだと夢を見させてくれたよね。実際は顔がちょっと動いた。
 あと、シロクマの実験かな。シロクマの実験をするよね。そしたら、シロクマのことを考えたらベルを鳴らすの。なぜベルを鳴らすかというと、シロクマのことを考えたらいけないからだよ。わかるね。
 他にも、LSDをゾウに打ったり、犬を首だけで生かしておいたり、伝染病かどうか調べるために患者のゲボを飲んだり、自分の赤ちゃんのおしめを不快じゃなさでかぎ当てる母親の愛に直面したり、全員ムチャなので、拍手で迎えたい。そしてケツを蹴り上げたい。この本はおもしろいよ。おもしろいけど、やっぱりケツを一発蹴り上げておかないといけないんじゃないかという気持ちもある。読んでみていろんな気持ちがある。
 この本を開いている間、俺は片時もでんじろうのことを思い出さなかったよ。それがこの本の下世話なジャンプ力を証明していると思う。生き物たちがかなりのレベルのいきすぎた実験に耐えるのが頼もしく、世界はまだまだわからないことだらけなので、俺はいいぞと思った。
 ちなみに、書いた人が全部アメリカンジョークでまとめようとするので、そういう勉強にもなる。
 最初になんか書いたのをもう一度振り返ると、人間、「おもしろくない?」って顔をしていいのは、全部終わったあとなんだってことだね。理想を言えば、死んでティーターされた時「おもしろくない?」の顔で止まれば、立派なオバケになれると思うんだ。