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一日のノルマ

 太陽がギラギラ輝き、シーズンに向けて調子を合わせてきた草が元気いっぱい草くさいにおいを発しています。外で遊ばないと言われて久しい子供たちだけれど、広い草むらを帽子片手に歩きまわり、大人の逆をいくライフスタイルを模索しています。僕はその光景を、もうむしろ自分も草むらの中に入って、かなり近い場所から見ていました。すぐそばを少年たちがよぎっていったりします。


 一人の少年が、何か見つけたようです。草を蹴飛ばしながら歩いていた足下から何かが飛び出したのでしょう。僕にもそんな経験があります。
 少年がしゃがみこんで手を伸ばしました。そしてすぐに満足げな顔で立ち上がりました。彼の細い指には、ミドルサイズのショウリョウバッタが挟まれていました。
 僕は、よかったじゃん、と思いましたが、そこに、別の少年が三人、あわてた様子で駆け寄ってきました。その三人は、虫を見つけようとしているでもなく、一団になって辺りをうろついていたので、僕も変には思っていたのです。
「え? え?」
 取り囲まれて、バッタを捕まえた少年がうろたえます。どうやら、顔見知りではないようです。
 すると、三人のうち一人が言いました。
「我々は、バッタつかまえポリスのものだ!」
「えっ、どっちの味方?」
「バッタだ!」
 僕は2メートルこっちに立ちながら、今のやりとりは最高だと思いました。三行で最高だと思いました。大急ぎでメモ帳を取り出して、「バッタだ!」まで書き留めました。それが終わったら、もうなにも付け加えることはございません。いろいろ考えていることもありましたが、その先はみんなくだらない。ここで終わりたいと思います。今日もいい日だった。