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遊園地デート

「あぶない あぶない」
 デートで遊園地に来たトミーはコーヒーカップでさんざんぱら男らしくないところを見せてしまった。
「そんなに早く回したらあぶない あぶない」


 トミーが買ってきたソフトクリームを彼女は横倒しでテーブルに置いてしまった。トミーももちろん負い目を感じていた。でも確かに最初 回せ回せと、回せや〜い とまで言ったのはトミーだが、あんなに早く回すことはない。そこはこの女のガバマンなノリが出たと思っている。
 彼女はトミーのソフトクリームをじろりと見た。トミーの背筋が凍る。ミックスソフトを購入したトミーだが、これではさっきのことを真面目に考えていないと思われてしまう。
「食べないの 食べないの」
 トミーは、これからも色々問題なこともあるけど、こうして二人で笑いながら、軽いノリで生きていこうよというニュアンスをこめて笑った。
 彼女はソフトクリームを120度転がした。
「ソフトクリーム転がして 食べないの」
 ダメなんだトミー。笑ってる場合じゃない。こういう時はそれじゃあダメなんだトミー! おいトミー! こういう時は、女心をソフトに優しく拭いちゃダメ。助長する 女は助長する! グッとこらえて叩くように拭かないと、情けをこらえて結構強めに叩くように拭かないと、別れが来るまで広がった染みになる。見るたびがっくりきてしまう。買い換えたくなってしまう。
「食べないの」


 タン タン タン タン タン タン。
 ゆっくりとへばりつくように坂を上っていくジェットコースター。乗りこんだトミーの顔のあたりに、お隣からチョップが飛んでくる。女のチョップが飛んでくる。しっかり握った固定バーをくぐり抜けるようなチョップの嵐に目を開けられないトミー。仲直りしたいけど、ジェットコースターに乗っている最中にチョップを見舞ってくる彼女と、またいい感じになるなんてことがあるのだろうか。どうしたらなるのだろうか。
 坂が終わって視界が開け、高いとこに来たという実感がわく。遠くに群馬県の方の山が見える。あっ怖い そう思う間もなくチョップは続々飛んできている。気が散って、高所恐怖症に集中できない。目を開ける暇もない。仲直りできると思って勇気を出してジェットコースターに乗ったのに。けっこう並んだのに。
 タン タン タン タン タン タンタンタンタン。
「キャアアアア!!」
 他のお客さんは楽しそうに絶叫する。それどころでないトミーは高くて怖くて目をつぶる。もうチョップは飛んでこない。違う飛んできた痛い。でもあんまり飛んでこない。彼女もコースターが苦手で、しっかりつかまっていたいのだ。でもチョップしたいのだ。そんなお前のことが。