はじめてのおつかい

 人生で初めてのおつかいに行く時に備えて、体だけは鍛えてきたつもりだ。でも、それが意味無かった。パラメーターの振り分けがおかしいことになっているぞ。どうして「ちからのたね」ばかり自分に投資するんだ。やっぱしもっと勉強しておけばよかったって俺も思うのだろうか? 人生にリセットボタンは無いと高橋名人が言っていたが、一方の志村けんは、以前、六本木の店で飲んでいたら、大ファンだという沖縄駐留のアメリカ兵が寄ってきて、「お前は絶対にアメリカでも受けるから、すぐに向こうに行け」と言う。そして「何か持ち物を交換しよう」と言ってくるから、持っていた小物をあげたら、すごく気に入っているという革ジャンと兵隊バッジをくれた。それから数週間経ったら、そのアメリカ兵の奥さんから、彼が事故死したという手紙が志村に届いた。志村はすぐに花を手配して、その奥さんと電話で話した。すると、「夫は志村さんのことが大好きで、先日お会いしたことをすごく喜んでいました。いただいた物を大切に持ちながら、その時のことを毎日話してたんですよ」と泣きながら教えてくれたという。


ママ「ハジメ、カレーの材料を買ってくるのよ。いいわね。お前のためにメモを書いておいたわ。この記載どおりに買ってくるのよ」
パパ「ハジメにおつかいができるかな?」
ハジメ「ぼく、できるよ」
パパ「そんなこと言って、泣くなよ〜」
ハジメ「泣かないやい」
パパ「迷子になったりとか〜」
ハジメ「うるっせーーー! てめぇは黙って………腕立てでもしてろ!」
パパ「パパに向かってそんな口のきき…フッ、フッ」
ハジメ「お前の腕立てはな、伏せてるんじゃなくて、伏せさせられてるんだよ。筋肉がおじぎをしているんだ。俺みたいに、夜ごと筋肉を飽くことなく鍛えろ。筋肉に、右から左から、モーツァルトをランダム再生で聞かせろ」
ママ「ハジメ、いい? メモを見て。まず、家を出たら、いずれかのルートを通り八百屋さんに行って、ジャガイモとタマネギとニンジンを買うのよ」
ハジメ「ジャガイモは芽の出尽くしたヤツばっかり買ってこよう。ニンジンはぼくのオケツにちょうど入るぐらいのものを買ってこよう」
ママ「だめよ。お店に並んでいるのを買うの。ふざけないで。どうしてすぐにおちゃらけるの。タマネギも、ちゃんとしたものを買うのよ」
ハジメ「うん。ぼくはちゃんと、大きな玉ねぎを…爆風スランプ!?」
ママ「……」
ハジメ「それ爆風スランプ!?」
ママ「ハジメ、ママを困らせたいのね?」
ハジメ「今の爆風スランプ!?」
ママ「ママを指さすのはやめなさい。あなたが言ったんでしょう」
パパ「ンッ……クッ……ンフーッ…ハァァァァ〜〜〜〜」
ハジメ「もうラス1のノリか! で、ママ、あとは何を買ってくればいいの。ラ・ママ」
ママ「お肉よ。ほら、メモに書いてあるからね。いい、このメモを絶対になくしちゃだめよ。牛肉を200g、お肉屋さんで購入していらっしゃい」
ハジメ「てことは今日は………スキヤキ!?」
ママ「カレーよ」
ハジメ「それ爆風スランプ!?」
ママ「カレーよ」
パパ「………」
ハジメ「筋肉番付で最初飛ばしすぎて後半ずっとケツ上げて手の位置を調整してるだけの若手俳優か!」


気が向いた日にゃつづく