チン毛イカ男くん

 私の名前は、巨乳毒マダムです。所属する「最悪の組織」で、女としては上り詰められるところまで上り詰めた私は、月に一度の定例会議で議長を務めています。月末に行われるこの会議は、来月に行うとにかく最悪な行為を決定するのが目的です。
「はい」
「はい、チン毛イカ男(おとこ)くん」
「今、連続レイプ魔側から、とにかく一番最悪なのはレイプだという意見が出ましたが、私は反対です」
「なんだと」
 目出し帽をかぶった連続レイプ魔がおもむろに立ち上がったので、私は制止の声をかけました。
「連続レイプ魔くん、座りなさい。チン毛イカ男くん続けて」
「なぜレイプが最悪でないかというと、そりゃ女の方は最悪です。でも、レイプするとかされたとか聞いた私は、少しワクワクしている。このいけない気持ちをどうしてくれるんだ」
「そうだー、男はワクワクするぞー」「こっそりワクワクしてるんだー」「むしろ最高だろー」
 チン毛イカ男側の腰ぎんちゃくが嘴を入れてくるので、私はそれが度を過ぎた場合には注意をします。
「おい」
 私が迫力を出した途端に野次がやみ、場が静かになります。
「今むしろ最高だって言った奴っ、出ろっ!」
 私が低い声で声を荒げ、ドアを指させば、そこは下っ端の悲しさ、何も言わずに出て行かなければなりません。万引き犯Cは、立ち上がって背を丸めて歩き始めました。
「さっさと、出ろっ!」
 そいつが出て行って、少ししてから、チン毛イカ男がまた話し始めます。
「最高はいいすぎだが、少なくとも最悪ではない。我々が最悪な気分にならないのはいいが、レイプがあったと聞いた世間の男どもはどう思いますか。引く奴もいるけど、興奮する奴もいる。2ちゃんの盛り上がりをどうするつもりですか。盛り上がっちゃったら、組織の掟に反するじゃありませんか。だいたいあんた、口を開けばレイプレイプって、自分が気持ちよくなりたいだけじゃないか。おい、気持ちいいんだろ! そうじゃありませんか議長」
 チン毛イカ男に聞かれて、私はうろたえずに連続レイプ魔に聞きます。
「気持ちいいんですか。連続レイプ魔くん」
 連続レイプ魔は、目出し帽の口のところをいじりながら余裕の態度を見せています。
「気持ちいいよ。気持ちいいけど、別にやってる本人の気分の良さと、最悪だってことには何の関係もないでしょ。全員にとって最悪なことなんて人間は出来ないよ。むしろ、俺だけが最高だからみんな最悪なんだろ」
「ほんとですよ」「うらやましい」「やっぱりレイプが一番最悪ですね」「ですね」
 連続レイプ魔の腰ぎんちゃく、痴漢どもが口々に言います。
「いや、だから、男は話聞いただけでちょっと興奮するって言ってんだろ!」
 チン毛イカ男が叫ぶと、仲間が出て行かされて一回おとなしくなっていた腰ぎんちゃくたちも口をはさみはじめます。
「そうだそうだ、俺も興奮するぞ!」「詳しく話を聞かせてくれー」「そのあとどうするかは聞かないでくれー」
 急にわいわいがやがやしてきたので、私は大きな声を出します。
「静かに! いったん静かに! それでは、ここで、逆に、チン毛イカ男くんの意見を聞いてみたいと思います、チン毛イカ男くん」
「はい」
 チン毛イカ男が立ち上がってイカの足部分が丸見えになると、歓声とブーイングが同時に起こりました。
「静粛に」
「ゴホン、では発表します。まず、みんなで海釣りに行きます。海釣りに行って、魚がかかったとします。そして、こりゃ大きいぞ、こりゃ大きいぞとなりましたら、まず間違いなく、網を持った海の男が近づいてきますね。そして、いよいよ魚が見えて、網、網、となった時にはもう、海の男は当然わかっているので、既にスタンバイしています。その海の男が、船から身を乗り出して、網をやってやってやってくれてるとこをドーン! ザブーーーン! 船ポンポンポンポン。以上が私の計画です」
 大きなジェスチャー付きでチン毛イカ男くんが説明を終えると、連続レイプ魔側は静かになりました。ここぞとばかりにチン毛イカ男サイドが盛り上がります。
「ヒューー!」「チン毛イカ男さんの計画は、最悪だぜ!」
「これにて海の男ザブーン作戦に決定です」
「いやそれ聞いたらちょっと面白いだろー」「面白アウトだろー」
 私は雰囲気で決めてしまいますが、これは、巨乳毒マダム判定として成文化されています。ともかく、やってみて自分達だけおもしろそうなら、もうそれで一発OK、GO、GO、GOです。レイプは一度も採用されたことがありませんが、あの男、連続レイプ魔は最悪なので、一人で勝手にやるのです。私も、二度、犯されました。