デイヴィッド・山田フィールドとインチキダヌキ

 デイヴィッド・山田フィールドは幸せいっぱい夢いっぱいの世の中を取り戻すため、主に筋肉と反射神経と落とし穴と石で厳しい戦いを生き抜いてきたが、いくらなんでもそろそろ武器が欲しくなった。それは、服に興味の無かった高校生が大学に上がった途端に衣類を揃えだすタイミングと一緒だった。パンツだけローテーションできたところで、女子大生にダサ夫くんと笑われてしまうのである。女子大生は丈の短いポンチョみたいなものを着ているのである。
「おいちょっとそこの地球のタヌキ、剣を作る人の家を教えてくれないか」デイヴィッド・山田フィールドは道行くタヌキに尋ねた。
「オレですか。どうしよっかな」
「いいから教えるんだ。そういえばお前は『ぶんぶくちゃがま』というお話に出ていただろ」
「出ていました。西だ、西へ行きな」
「西へ……」
 今年の風邪は鼻に来ることを鼻で感じながら、デイヴィッド・山田フィールドは砂利道を西へ行った。目の前に広がる田園風景では、カカシをリアルにすることで鳥達をリスペクトしているが、テレビに出たいだけだ。過去、できたことがあるのはすり傷のみという強靭な体を、右足、左足という昔ながらのリズムで進めていくと、全然着かなかった。日が暮れ、夜も更け、特に何も無く、満月の光だけを頼りになおも歩くと、やっと午前二時ごろに目的の場所らしきところへ着いた。
 この元祖木造、どうですか。という佇まいの建物は、重要文化財なのかゴミ屋敷5秒前なのか。おそらく5秒前の方だろう。なぜなら、玄関の前にある大きな壷らしきものの中に、ヘドロのような水がドロッているからだ。この中の水が澄んで、いい感じの水草があり、金魚の二匹や三匹が泳いでいる場合に限り、重要文化財・おすすめスポットとして認められ、るるぶに写真入りで掲載されることができる。湯豆腐メインで5000円近く取ることができる。
 こんなところで剣を作っているのだろうか。今、デイヴィッド・山田フィールドは、どうしようもないクズの掃き溜めのようなヤンキーグループからプロボクサーが出たケースを思い出すことで、やっと自分を支えていた。
「すいません、すいません! タヌキの紹介できました!」デイヴィッド・山田フィールドは引き戸をガンガン叩いたところ、引き戸が外れて向こうに倒れた。
 中は、真っ暗だった。すると、暗闇からタヌキのような老人が出てきて言った。
「待っていましたよ。あなたが来るのはとっくにわかっていました。とっくでした」
「私は剣が欲しいのです」
「あなたのために特別なものを用意しておきましたよ」
「それはかたじけない」
「これが、その剣だ」
 老人が取り出しのは、何やらヒョロッヒョロの薄い青色の棒。下の方には刀のツバのようなもにがあるが、枯葉の真ん中に穴を開けて、そこに青い棒が通っているだけだ。
「これぞ、私が生み出した究極の剣。お主、かんでないガムは昔よく使ってたカバンの中でグデュグデュになるが、かみ終えたガムは放っておくと、何かのおもしろ化学実験かと思うぐらいカッチカチになるのを知っているな? ……これがその原理を利用して作った、おいしかった、剣だ」
「すごい、これがあればどんな敵でも倒せるに違いない。これを一生のお気に入りの武器にするとしよう」
「そうしなよ。ちなみにソーダ味だ。どうしてソーダ味なのか、わかるな」
「わからないです」
「トンチきかせなよ。これはなんだよお前、剣だな。剣ってのは? 別の言い方で言うと……?」
「ええっと、刀?」
「違うよ」
「ええっと」
「トンチで、トンチで」
「……トンチをきかせてもちょっとわからないです」
「絶対きかせてないよお前」
「一生懸命やってるんですけど」
「……なーんつって」
 と、なぜかこのタイミングでネタばらしが入った。なーんつって、全部、オレ、タヌキのしわざでした、イタズラでしたーっ、とタヌキは大きな声で言いながら、地面すれすれの宙返りをして頭の葉っぱを落とし、変身を解いたという。木の上から見ていたリスによると、全然盛り上がっていなかったという。両方悪い、とリスは言っていた。俺もそう思う。