俺にもSF書かして!(Sukoshi Fuan)

 みんなSFでごちゃごちゃモメてて楽しそうだな! 俺もまぜてくれよ! SFのこと、よく知らないけどな! 全然知らないけどな!
 まず、SFを書くにあたり、どういうものを書くかによるけど、基本的な知識はないといけないと思う。俺はこういうのはちゃんとしたい方だからな。まず、今、俺がSFと聞いて浮かぶ単語で、きちんと理解しているものを並べてみよう。


人工知能、宇宙人(異星人)、パラレルワールドタイムパラドックス、ワープ、NASA、タイムパトロール、戦国自衛隊太田光


 全然ダメだ。知識が無い。やめちまえ! 宇宙人でも異星人でもどっちでもいいよ! だいたい後ろ三つはちょっと怪しいだろ!
 でも、諦めないで頑張ろうと思う。SFぐらい書けるよ。『ブレードランナー』の原作読んだことあるし、いけるって大丈夫だって。そうだ落ち着け深呼吸。じゃあ今度は、言葉としては知っているけど、意味を知らないもの、多分これSFだろうってものを並べてみよう。


インターフェース、タイムパラドックスソラリス(惑星?)、ポッドキャスティング、ペッツ、反重力装置、フリッパーズギターサイバーエージェントフリーエージェントJAF、ピンチョン、デスノート、ピップエレキバン


 さっき嘘ついただろ! タイムパラドックス! 知らないのに知ってるって、そういうの俺の悪いところだよ。本当、そういうことやってちゃダメだよ。そういうことやってるうちは絶対ダメだからな。じゃあ、次は、意味は無いけど俺が考えたSFっぽい言葉をあげてみよう。いや、これはその都度考えよう。

 よし、じゃあ、SFを書くぞ。なんか書けそう。主人公の名前は、カタカナのかっこいい名前じゃなきゃな。あ、そうだ、よし、俺がひと月前まで飲んでた鼻づまりのアレルギーの薬の名前にしよう。あれかっこよかったもん。




 ゼスランは宇宙船の一番広い、皆でリビングみたいにして使っている広い場所で、遅めの朝食、インターフェース弁当を食べていた。宇宙に朝や昼や夜があるかはわからないが、起きて食う飯は朝食なのである。
「そろそろワープホールを出るぜ!」
 ガッチャンガッチャン前後に動かすことで宇宙船の耐熱温度とタイム摩擦係数をナノ単位で調整できるレバーをガッチャンガッチャンやりながら、ソラリスは言った。
「出るとどうなるんだ!」ゼスランは箸をソラリスの後姿に、向けた。
「出ると、普通の状態に戻る」
「それは知ってる!」
 その時、デスノートの部屋では、この前行ったあの重力の弱い星で拾ったゼリー状のでも多分ゼリーではないドロッとしたものが、グリーンに光り始めた。デスノートは至急、それをみんなに知らせた。
「みんな、集合してくれ! ドロッとしたのがグリーンに光ったんだ!」
 デスノートを除く宇宙船太田光号の乗組員達三人は、宇宙船にもとから搭載されていたケンブリッジ式空間トレードシステムを使って、一瞬にしてデスノートのいる場所へ集合した。
 四人は、しげしげとそのゼリー状のドロッとしたのを見つめた。確かに光っており、その光は何かわかったものではないが何かしらの生命力を感じさせた。
「電気消してみる?」
 コーネリアスがはりきった声で提案し、ゼスランとソラリス、それにデスノートもそれは名案だと思い、うなずいた。電気を消すと、なるほど、更に光っているのがわかり、そしてキレイだった。「おっ」と四人は声を出した。
 それから四人であーだこーだ話し合い、多分、このドロッは、人工知能でFAということになった。そのため、何らかの交信が可能だと思われたので、すぐさま、ドロッとした人工知能とのエターナル・ディスカッションが試みられることとなった。
「コレデ何カワカルカモ知レナイゾ、タノシミ、タノシミ」
 いつの間にかそばにいた気のいいロボット、タイムパラドックスがガーピー音を出しながら言った。タイムパラドックスの顔の部分には、顔の描かれたシールが貼られていたが、そのシールが昔のドラえもんの何とかウーロン入りみたいなガムについてるああいう貼り方がややこしいシールだったので、もうなんていうか爪の跡とかついてガサガサになってしまっていた。そのため、四人の思い入れも無くなってしまっていた。全員無視した。
 3時間に及ぶエターナル・ディスカッションによると、そのドロッとした者はピンチョンという名であり、とにかく物凄い情報処理能力と完全な物理的感知能力を持ち、将棋だけでなくチェス、というかそういうの全般かなり強いということであった。ルールもすぐ覚えるって。その彼が全宇宙的に担っている役割は、「ピップエレキブラックホール設置ポイント計算ピポパポ」である。つまり、ブラックホールを絶妙なココという場所に発生させることで、宇宙のコリをほぐすのであるが、その位置を特定できるのは、宇宙広しといえどもこのピンチョンだけだという。もし、ブラックホールを、絶妙なポイントに移動させられなければ、宇宙はもうだるくなってしまい、今広がってるらしいけど広がることも止め、広がることを止めるということは、逆に、どういう論理かはさっぱりわからないが、多分伸ばしたゴム的理論、聞いたことあるところとしてはひも理論で考えてみると、あっという間に収縮ばかりして就職もせずにゴロゴロしていることになり、世界は破滅するだろうと思う、みんなそう言っているということだった。
(なるへそ)
 その話を聞き、四人は全員、テレパシー(準エターナル・デスカッション)でそれを伝え合った。何を隠そう、この宇宙船の乗組員は、全員、超能力の持ち主。それゆえ、なんかキモいという理由で故郷の星を追われる運命となったのである。彼らは助け合い、宇宙船太田光号で宇宙へ飛び出した。そういうところも嫌われる原因だっただろう。
 その夜、四人は話し合った。寝る前が夜である。
「でも、そんな大事なものがどうしてあんなところに」ソラリスは言った。
「そんなことはどうでもいいんだよ!」ゼスランは立ち上がり、重力装置を切ると、ソラリスをビンタした。
 ソラリスはその衝撃で、スローモーションでトイレのドアの方まで吹っ飛んだ。ゼスランはまた重力装置のスイッチを入れた。
「お前はいつもそうだ」ソラリスはゼスランをにらんで言った。
「俺達はとんでもないものを拾っちまったんだな」デスノートがつぶやいた。
 コーネリアスシンセサイザーをいじっていた。
 このあと、ピンチョンを持ち出したカドでタイムパトロールに踏み込まれて、超能力を駆使してなんとかやっつけたものの宇宙船太田光号の未来燃料タンクが小爆発して役に立たなくなってしまい、宇宙空間をあてもなく漂っていたところ、いよいよ宇宙がやばくなってきて、今すぐにもブラックホールを宇宙ツボに発生させなければやばい、だるい、ぞんぞんするということになり、ブラックホール発生装置をタイムパラドックス(気のいいロボット)を分解して組み上げ、いざブラックホールを発生させようというところで、その宇宙ツボの場所が、今、自分達が漂っているまさにその場所であることをピンチョンが明かす。四人は泣きながら、色々なことを思い出しながら、「がんばれ宇宙 がんばれ宇宙 ぼくは限界だ」と歌いながら、ブラックホール発生スイッチを押す。そしてどんでん返しが。
 そういう流れで、その場面場面で色々と考えてて、ある程度のどんでん返しも書いてれば多分うかんだけど、けど、やっぱりこれは退屈だ。なんか書く気しない。だって、スタージョンの言うとおり、SFの90%はクズなんだし、あらゆるものがそうなのだ。それはやっぱり、かなり頑張って考えた結果、その作品がクズになるのは、未知のものを放っておけないからなんだ。しかもSFには、科学って武器が合って、そいつで辻褄を合わせてしまうから、さらにクズになりやすい。「未知のもの」が「未知のまま」ある世界を現実として書く、というのが、残念ながら小説というか人間が面白みを感じることの最先端だか最高峰だかあるいは全ての土台となる最底辺であろう。もう、少なくとも自分にとって「新しいものに見えるもの」はこの方法でしか出てこないだろうし、ずっとそうだったろう。それで、未知のものは簡単に言うと設定だ。カフカならカフカで、人間が起きたら虫?になってる、ということで、この問題は未知のまま放っておかれる。そして、その設定の現実というのが、一つの小説の全ての文章だ。『変身』の全ての文章だ。俺(SF博士)の考えでは、小説の全ての文章は、現実感を補強するためのものでしかない。起きたら虫?になってるという未知の状況の現実感を補強するのが『変身』の全ての文章だ。そして、その全ての文章の方こそが「小説」と呼ばれるだろう。つまり、小説と設定は本来的には全く無関係なのだ。お前が物語という言葉やオチという言葉や、それこそ設定という言葉を使う時、お前が読んだ小説は省略可能となる。つまり、お前は全ての文章で積み上げられた現実感をすっ飛ばす。すっ飛ばして、なんとなく小説について語り始める。虫になったことについて語り始める。それは、小説について語っていないのだ、小説は一つの全ての文章なのだから。しかし、そういうふうに語ってる人間が、甘く見ても90%いる。残念ながらこいつらにも創作意欲はある。そいつらもSFを書き、小説を書く。それが、あらゆるものの90%がクズになる理由だ。しかし、こういうことがわかるには、『マイノリティー・リポート』一冊読むだけじゃ全然足りない。わかった後なら、『マイノリティー・リポート』だけでわかりすぎるぐらいわかるが、わかるまで『マイノリティー・リポート』一冊で済むはずがない。SFじゃないけど、俺(SF博士)がどれだけの文章を読んで、それをどれだけ書き写したと思ってる。それとも無駄だったのかな? とにかく俺(SF博士)が一番言いたいのは、光るものを宇宙で見る時もなんとなく電気を消せってことなんだ。俺(SF博士)の書いたSFかどうかも怪しいクズSFでおもしろいところがあるとすれば、そこだけだ。あと、起きて食う飯は朝食とか、そういうとこだ。ディックはそういうことについて書いたから偉いんだ。かっこいいな。少なくともグチグチ自分の弱みを書いたりしなかったよ。結局、人間の、人間全体の肛門に手を差し込んで暖かみを感じるようなことを書かなきゃいけないってことだな。


 ほら、変になっちゃった。なんか変になっちゃったよ。そんで最後、説教始めた。やっぱりやった。またこういうこと書いちゃった。もういいよ。飽きちゃった。これで一日分の創作が埋まれば俺はそれでいいんだ俺は。何もSF書かなくたって、もっと自分で楽しみながら書きたいんだ。もっと無茶というか見たこと無い設定で、そいつに現実感を足していきたいんだ。ていうかやっぱり、戦国自衛隊は使いづらいよ。あと、インターフェースってほんとになんなんだ!


追記:ブックマークコメント返事など

>harutabeさん
情報統合思念体によって造られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース、それがわたし。インターフェース弁当とは私が構成した携帯用糧食のこと。あなたたちの言葉で言うと、愛妻弁当

ということは、長門有希愛妻弁当だったのか! そう考えると…全然おもしろくない(単なるスペース駅弁的な感じで書いてた)
結局インターフェースはわかりませんでしたけど、そういえば情報統合思念体は使ってみたかったなあ、と思いました。ていうかドロッとしたやつのところで一回でも使えばよかった。気の利いた説明(というかコメント)が無駄足になるような創作で本当にすみません。

id:cangetyouさん
>ロボットの名前にタイムパラドックスってつけるのすごい素直にかっこいいと思ってしまったんですが処置なし

僕も、最初は「タイムパラドックス使っちゃったよ!」みたいな勢いで書いたんですけど、逆にあえてやったみたいにかっちょよくなっちゃってあせりました。