属性だもんねしょがない

 パーティーは一人の謎のヒゲがフサフサした老師に会い、秘められし魔法のパワーを解放してもらったのだった。
「まずその勇者みたいなの、お前の属性は……火」
 そんなふうに老師は説明していった。水とか雷とかそれぞれ魔法の属性を説明されて、ライオネルの番になった。
「お前の属性は……ウンコ」と老師は言った。「くっさ」
 ライオネルはここにくるまでパーティーの中でかなりクールなキャラクターでやってきたので、自分の魔法の属性がウンコと言われて、かなりビックリした顔をしてしまった。そして、一番後ろで壁によりかかって頭の後ろに手を組んで聞いていたのに、思わずダチョウ倶楽部の動きで前に出てきた。
「なんだと……?」
「ウンコ」
 ライオネルは唇を噛んだ。そして、少しの間考え、やや下を向き、自分の両の掌を見つめると、言った。
「土……? 土属性……?」
「いやウンコだって言ってんじゃん属性ウンコ」
 それから、長い時が経った。
 今、魔王の前に立ち、ライオネルは携帯電話を肩と耳に挟んで先方と会話していた。
「だいじょぶかな? 魔王キレないかな? いけるかな?」
――大丈夫じゃないの。
「でもウンコだよ? キレないかな? 色々苦労して魔王になったのに、こんなに雄雄しく振舞ってるのに、戦いのしょっぱなにウンコぶっつけられて、キレないかな? だいじょぶかな?」
――じゃあ試しに一回やってみたら。
「試しにやってキレたらどうすんの?」
――知らないよそんなの。とにかく早く攻撃してよ。じゃあね。
 そこで電話が切れた。
「もしもし!? もしもし!? ……切られちゃったよ!」
 ライオネルは叫んだ。キャラが変わっていた。ウンコ使いとして、いつまでもクールな自分ではいられなかったのだ。
 目の前では、巨大な魔王がライオネルを見下ろしていた。400mほど離れたところでは、勇者たちが同じ魔王と戦っていた。これがいつもの戦闘フォーメーション、バスケで言うならアイソレーション。ライオネルは遠くの方で、火や水などの魔法が魔王に向かって飛び出していくのを見た。しかし、魔王には全然効いていなかった。魔王は反撃し、指から何かビーム的なものを出した。仲間が一人、400m先で燃えて死んだ。
 ライオネルは覚悟を決めて、大きく息を吸った。
「ウンコスプラッシュ・マウンテン〜2時間待ち〜!!」
 その瞬間、魔王の上空から、激流のようなウンコが降ってきた。
 レベルアップしたライオネルは、ウンコを自由自在に操ることが出来た。はじめのうちは、魔法といっても手からウンコの匂いがして臭いだけだったのに、今では、ウンコの塊を敵に向かって飛ばしその塊をクラスター爆弾のように散らばらせその一つ一つを爆発させて物凄く臭かったり、敵を巨大ウンコの中に閉じ込めて異常に臭かったり、刃のように精練したウンコを高速回転させて相手を切り裂いて一生忘れないほど臭かったり、ウンコの波動で敵を貫いて待ち合わせ場所になるほど臭かったりすることが出来るようになり、それを状況に応じて使い分けるクレバーさも持ち合わせ、世界でも類を見ない、仲間も引くほどのウンコマスターになっていたのだった。挙句の果てには世界中のウンコを世界中の生物から集めて一つの大きなウンコエネルギーの塊、ウンコ玉を作り、世界を滅亡させるほど臭かったりすることも出来た。
 魔王はスプラッシュウンコに二時間も覆い隠され、最終的に、そのウンコの激流を、非常に固いウンコがくだってきて、直撃して臭かった。魔王は倒れた。
 すぐに、ライオネルの携帯に電話がかかってきた。
――ひゃーくせえ。じゃあ、お城に帰ろうか。
 これで平和な世界になったらこいつ絶対俺の悪口言うな、とライオネルは思ったが、そしたらこいつの家にウンコの雨を降らしてやろうと考えることで、良い返事をした。