ゴン中山

(二年近く昔のやつが出てきた。びっくした。多分『ギャグマンガ日和』を読んだ頃に書いて、影響受けすぎてるのを感じて載せるのを止めたやつだろうと思われる。まだ何も考えてないので、文章で割とちゃんとツッコミを挟もうとしてる。文章はちょっと直した)


 シゲルの部屋にある二段ベッドの上の段から急に飛行機が飛び立ったが、ゴン中山のポスターに激突して錐揉み状態で学習机に墜落した。
「う、うわーー!」と机の前に座っていたシゲルは叫び声をあげた。
 算数のノートの真ん中で飛行機が燃えて、小人が二人、慌ててバラバラと出てきた。小人たちは消火器みたいなものを持って遠巻きから吹きかけ始めたので、シゲルの行なっていた割り算の筆算はかなり細長くなってノートのスペース取りすぎだなコレと思い始めたところで上の答えのところが消えてしまった。
「ちょっと!」シゲルは声をかけた。
 小人が振り向いて見上げた。
「僕の筆算が台無しだよ!」
「こっちは飛行機燃えてるんだよチクショウ!」「黙んな検便小僧!」
 後に喋った女の口が悪いので、シゲルは戸惑った。
「あの、あなたたち、誰なんですか」
地球防衛軍の者だ」と小人の男。
「え、弟のベッドから出てきたけど……?」
「あそこが本部だよ」
「そうなの!?」
「あそこの枕の下が本部だよ」
「どうしてそんなところに……」
「時々、君の弟に手を差し込まれてはみ出すよ」
「まあ、入れるけど……」
「君の弟、手を入れるたびに小声で『ひんやりする』って言うよ。そのくせ靴下はいて寝るよ」
「なのに熱くなってすぐ脱ぐのよ、何なのあの検便丸は。そしてまた朝になって寒くなって足をすり合わせるのよ豚糞検便が」
「なんで悪口のバリエーションが検便しかないの!?」
「マッチ箱が」
「なんなんだよこの人……」
「ところで、君に一つ聞いてもいいかな」と小人の男。
「な、なんですか」
「新しい検尿の道具を考える人って、一年中そればっかり考えてるのかな。専門の人なのかな」
「知らないよ! ていうか、あなたたちはずっと弟の枕の下にいるんですか、一体いつから」
「君が上の段だった頃からいるよ」
「えっ、そうなの? 全然知らなかった」
「君の寝汗のせいで夏場は大変だったよ。枕グッショリだったよ」
「この検便パンツが!」
「そこも検便でいいの!?」
「だから君も反省するべきだよ。飛行機全部サビちゃったんだから」
「す、すいません……じゃあ、いつもそこから出動してたんですね」
「そうだよ」
「どんなことをしてるんですか」
「地球を救ってるよ」
「あの、例えば……」
「うん、例えば、凄い凶悪犯がいるよね。その存在を事前にキャッチして、犯罪を未然に食い止めているんだ」
「でも、凶悪事件は沢山起こってるけど」
「起こってるよ」
「それは、全部を止められるわけじゃないってこと?」
「いや、全部、全て止められていないんだ。僕たち地球防衛軍は、この部屋から出られたことがないんだ」
「えっ?」
「いつもいつも、ゴン中山に阻まれるんだ」
ゴン中山の前線からのプレスがどうしてもかいくぐれないのよ」
「でも、ポスターだし、避ければいいじゃないか……」
「凄くいいところにいるんだ、ゴン中山が」
「じゃあ、いつも今日みたいに激突してるんですか」
「うん、100パー」
「100パーも!?」
「イチかバチか枕の下から飛び出すと、すぐゴン中山が目の前にいるんだ」
「さすがゴン中山としか言いようがないわ」
「そういう問題じゃないと思うけど……」
「ウンコ提出男は黙ってて」
「みんなウンコは提出するよ!」
「君、ウンコウンコはしゃいでしまう気持ちもその年齢ならわかるが、止さないか。もうすぐ、次が出るころだ」
 シゲルは釈然としない気持ちで黙った。小人は二人とも二段ベッドを見上げた。
「今度こそ、今度こそ成功して欲しいものだ」
「パイロットはエリックだもの、きっとやってくれるわ」
「ああ、エリックなら、この前ハワイに行ってスカイダイビングを体験してきたエリックなら……」
「期待できないよ!」
 シゲルが叫んだ時、弟の枕の下から飛行機が飛び出してきて、ゴン中山に激突した。