そろそろ節分だ!

 遺伝子を組み換え組み換え、鬼界は常識を変える一人のエリートをいよいよ輩出した。それに成功したのは鬼東京支部の科学者達だ。
「ぼくお豆だーいすき!」
 と、その小さな鬼は巨大カプセルの中で叫んだ。しかし、その無邪気な顔を見て科学者鬼達は半信半疑の険しい顔だ。一人の科学者鬼が、カプセルのポストみたいになってるところから袋に入れたおせんべいを投入した。
「さあ、豆がところどころぶつぶつ入ってるおせんべいだ。我々には必然性が全然感じられないが、お前はどうだ」
「ぼくお豆だーいすき!」
 と、小さな鬼はそれを拾い上げ、袋を開けてバリバリ食べた。袋まで舐めた。
「いじきたないからやめなさい」
 と、言いながらも科学者鬼達は互いに見つめ合い、うなずいた。成功だ。
「よしもういいか? いいかな、いくよ、開けちゃうよ。行け! よし行け」
 と、一人の科学者鬼が言うと、遠隔操作でカプセルが開いた。
「行け」
「行け行け」
「行け、行け」
 と、他の科学者鬼達が言う。
「行け」
「行こう」
「行け行け」
「あ、豆くせっ」
「ぼくお豆だーいすき!」
 豆OKの小鬼は両手をあげて飛び出して行った。

 小鬼に与えられた任務は、節分までに東京中の全ての豆を食い尽くせというもの。そんな馬鹿なと鼻で笑う人もいるが、鬼の食欲は無限、移動はタクシーという設定なので大丈夫だ。俺がルールだ、俺が横綱審議委員会だ!
 その通りに小鬼はでかしたので、次の日には東京中から豆が消えた。加工食品は残っていたけど、鬼的にはそれぐらいの我慢はするよという感じだ。
 というわけで、鬼は全員で町に繰り出した。
「おいおいおい、なんだよ……なんだよあれ」
「何くわえてんだよあれ黒いの……おっかねえ」
「吹き矢?」
「いや、なんか食ってるよ、食ってる」
「やばいよ、こっち向いてるよ」
「隠れてれば大丈夫だよ」
「あ、あいつらも! 家族で!」
「こっち、狙ってる! ああ!?」
「浜ちゃんだ!!!」
「ホントだ浜ちゃんだ! 家族で!」
「ダウンタウンダウンタウン」
「見せて見せ…浜ちゃんだ!」
「すげえ浜ちゃんだよ。すげえ」
「食ってるよ、浜ちゃんも黒いの食ってる」
「浜ちゃん食ってる」
「浜ちゃん」
「すげえこっち向いてんだよ浜ちゃん……」
「本物の浜ちゃんだ……」
 というわけで、恵方巻=浜ちゃんだと思っている筆者でした。