鬼に殺される

 そのままの流れで戦っていたらリンチで殺されていたところを、頭を下げて下げて、なんとかタイマンの四番勝負で対決させてもらえることになった桃太郎。お供の奴らも普通に動物なので、ワンワンとか言いながら何がなんだか体育館みたいなところまで一緒に連れてこられて、無理やりハチマキを巻かれた。どういうわけか猿が心なしはしゃぎ始めたので、桃太郎は強めに猿の首のところを叩いた。それを見ていた鬼にきつい目で「おい」と言われたので、すぐさま「すいません」と言った。
 先鋒は、ハチマキを首に巻かれた犬。全然しつけられていないので、ずっとワンワン吠えている。相手は緑鬼だった。しかし、犬は開始五秒で、鬼に膝の裏側を使って殺されてしまった。他の鬼が笑い、雉はうろうろし、桃太郎は真顔になってぶるぶる震え、猿まで真顔になった。
 次峰は雉。相手は黒鬼。正直、黒鬼が一番怖いと思う。雉は開始二秒ぐらいで、鬼の利き足じゃない方の左足の親指と人差し指の間でひねり潰されて殺されてしまった。他の鬼がまた笑い、桃太郎は仁丹を山ほど舐め、猿は一転、与えられたバナナに夢中だった。
 中堅は猿。相手は黄鬼。黄鬼は黄鬼で怖い。猿はいじきたなくバナナの皮の方についたおいしくない部分を歯ですくっていたところをバナナごといかれた。鬼は今回はなぜか爆笑し、桃太郎は壁に寄りかかって目をつぶっていた。
 副将は桃太郎。じゃあ大将はと言われたら困っちゃうが、そんなことに気が回らない。気が回らないよもう、こうなっちゃったらさ。相手は何の色かわからない鬼だったが、桃太郎はチラッと見て、あ〜この人何鬼だろ、と思ってそれだけだった。今回は人間ということで、神父らしき白鬼がやってきて「言い残すことはあるか?」と聞いた。
「空手で勝負しませんか!」と桃太郎は最後の望みを託して叫んだ。「フルコンタクトじゃなくって!」
「ん?」
「なくって!」
「何を言ってんだよ腰抜け!」神父らしきと言ったけど全然神父なんかじゃなかった白鬼が怒鳴った。
「お願いします!」と頭を下げる桃太郎。
「今更ダメに決まってんだろ!」と他の鬼達。「何だお前その旗!」
 日本一と書いた旗をさしっぱなしで桃太郎は泣きじゃくった。
「だが、チェスなら考えないこともないな」と白鬼が言った。「鬼にとって、チェスはとても神聖なゲームだ」
「ルールがちょっと」
「よし、殺し合え」