ダメ人間がくる!

 王様といえば退屈。なので、王様は毎日様々な催し事で暇を潰している。また、その模様を撮影してDVDにするなどして二次的に楽しんでいる。この撮影を統率しているのが、ディレクター大臣である。
 さてさて、今日の催し事は、名づけて「ダメ人間がくる!」である。こうした企画を考えるのはプロデューサー大臣の仕事である。今回の企画名は「魔太郎がくる!」からインスピレーションを得ているが、王様にはまったく伝わらなかった。
 企画内容は、次から次へとダメ人間が部屋に入ってきて王様に自己紹介をしては帰っていくというものだ。入れ違いにダメ人間が続々とやってきて、お前もダメ人間かよ、お前も、お前も、それからお前もダメ人間かよ。そろそろ普通の奴くるだろはいダメ人間きたぁ! というのがけっこう面白いと思う。
「よし、来い!」と王様が叫んだ。
 すると、ドアを開けて、最初のダメ人間が入ってきた。ダメ人間はノックなどしないのだ。ダメ人間は王様の前まで歩いてきた。
「埼玉県からきた栗田です。27?歳です」とダメ人間。
「何歳だよ」と王様
「27歳です」
「それで」
「時々みるスケベな夢だけが生きる原動力です」
「原動力か!?」
「原動力です」
「ビーサンはいてくんなよ!」
「すいません」
 その場に居合わせた客大臣たちが感心するようなため息をついた。1カメ大臣のカメラワークも冴え、すぐさまダメ人間のビーチサンダルをアップで映し出す。
「よし、OK! 次のダメ人間!」と王様が叫んだ。
 すぐさま、AD大臣がダメ人間に「よしもう帰れ」とスケッチブックで指示を出す。
 プロデューサー大臣はモニターに映し出された王様の顔を見て、企画の成功を確信した。