チアリーディング部

 アッコが体育館に帰ってきた。
「アッコ!」とチアリーディング部の仲間達が練習を中断して駆け寄った。「大丈夫なの?」
 アッコは全体的に体の動きが鈍くなっているが、仲間に支えられるようにして、なんとかベンチまでやって来る。
「本当に平気なの、アッコ」とマミが聞いた。
「うん、なんとか大丈夫」とアッコは力無く笑う。
「それで……来週の大会は?」とジェシーがおずおずと尋ねた。「出れるの?」
 アッコは下を向いてしまう。
 みんなは顔を見合わせた。
「実はね」とアッコは小さな声で言う。「出たら確実に死ぬって」
 みんなはそれを聞き、息を呑んだ。呆然とアッコを見つめた。
 長い時間が経った。
「それは、絶対に死ぬの?」とジェシーがようやく聞いた。
「うん」とアッコは言う。「百パーセントの確率で、間違いなく死ぬんだって。大会に出たらね。それは、医学的に見てそうみたい。出なければ、90歳まで生きるみたい。だから、あたし、今度の大会には……」アッコはその先を言うことが出来ない。
 かける言葉が見つからなかった。才能に恵まれ、練習だって誰よりも頑張ってきたアッコが大会に出られないなんて、嘘でしょ。どうして神さまはこんな意地悪をするの? みんなの目に涙が溢れた。
 アッコは感極まり、手で顔を覆ってうずくまる。悲痛な嗚咽が漏れ、体育館に響き渡る。
 すると、それまでみんなの後ろで状況を見守っていた木下先生が、足音もたてずに近寄ってきて、そっとアッコの肩を抱いた。
「アッコ、先生よ」と木下先生はささやくように言った。
「先生」とアッコはうめくように応える。
「あなた、せっかく練習してきたんだし、出るだけ出てみたら?」