S級パパラッチ

 S級パパラッチの肩家ジョウ次郎のカメラは「写ルンです」だが、その中でもグレードの高い高機能タイプのものを使用している。色んな種類がある。ダイアナはパパラッチに追いかけられて死んだが、ジョウ次郎はなんとその時、S級パパラッチであることをいいことに、ダイアナの隣に座っていた。とはいえ、現実にはダイアナの横は空席である。ハンドバックしかない。ジョウ次郎はバックミラーの中でダイアナの隣に座り、鏡越しにダイアナにカメラを向けていたのだ。
 そんな名声が知れわたった頃、ジョウ次郎は同業者であるA級パパラッチ、豚糞フミットソンにこう漏らしたという。
「ぼくはパパラッチとして有名になってしまった。今では、逆にパパラッチがぼくを狙っている。怖いんだ、このぼくが、レンズが怖いんだよ。まさに、なんていうかな、パパラッチ撮りが、パパラッチになる。あれ? 違う。いやごめんごめん、今の、おかしいよね。自分でわかった自分でわかった。パパラッチ撮りがおかしかったな。そうそう、ミイラミイラ、ミイラみたいに言いたかったんだけどね。どういえばいいんだろう。うまく言えないけど、そう……怖いんだ……」
 その時、フミットソンの胸ポケットの小型隠しカメラがジョウ次郎をとらえていた。パパラッていたのだ。裏切りのパパラッチである。
 しかし、ジョウ次郎はシーザーサラダの中に隠した「水に強い写ルンです」で、サラダをつつく振りをしてフミットソンを撮影していたのである。ジョウ次郎は全てお見通しで、むしろフミットソンが撮り始める前から、あえてパパり返していたのだ。目には目を、パパラッチにはパパラッチを。
 それはまさにパパラッチ業界の縮図だった。ファミレスの片隅で、ステーキとかエビフライセット来る前に、パパラッチのいやなとこ全部出てた。