なにじゃねえよ
横尾のピースやチョキやVサインなどはとてもよく広がり、一瞬パーを出しているかと思うほどだったので、みんなは、たぶん横尾フォーク投げれる、と思った。
そこで、横尾はいじめられっ子なのでちょうどいいので、みんなは、横尾ちょっと来いよ、と言って放課後呼び出した。投げてみろよ、と言ってボールを渡した。
横尾は投げた。
横尾が普通に投げたので、みんなは、ごめんごめんそれはこっちが悪かった、普通に投げるんじゃなくてフォークフォーク、と言った。ボールを渡した。さあ挟んでみろ、と言った。
横尾は挟んだ。
みんなは、ちゃんと指が広がって、その間にボールが挟まっているのを見て、いけるよ横尾、と言った。挟まってるよ横尾、と言った。
横尾は投げた。
横尾の投げたボールが落ちているようには見えなかったので、おい横尾、とみんなは言った。
なに、と横尾は振り向いて言った。
なにじゃねえよ、とみんなは笑った。なにじゃねえよ、と繰り返した。
それで横尾はいじめられなくなった。なんでかはみんなにもわからなかった。