ぼくとハトヤ

 ぼくが好きなテレビタレント達が、伊東に行くならハ・ト・ヤ、ハ・ト・ヤに決めたのCMの、察するに人が抱えてる活きのいい魚がビチビチビチビチなっているらしい映像のことをいじるたびに、それを見たことがないぼくは悲しい気持ちになってしまいます。しかし、こういうことがあると、ぼくは、どういうわけか、伊東に行くならハ・ト・ヤ、ハ・ト・ヤに決めたのCMを見ていないことを自分の長所にしたくなる性格なので、それが高じて、就職活動の際「ハトヤのCMには全然興味がありません」と言い放つことで、ハトヤのCMに首ったけの面接官の度肝を抜いてやろうと思っています。しかし、それでもぼくの悲しみはなくなりません。やっぱり見たいのです。でも見たくないのです。一応鉛筆の尻に消しゴムついてるけど、この消しゴムは全然消えないしこれを使うと汚くなって見た目がかっこ悪くて学校に持っていけないよ、だから消しゴムは、ネリケシを作るために開発された消しゴム、まとまる君を別で使うぞ、という小学生がいますが、この場合、ぼくは「ネリケシを作るからまとまる君貸して」と言ってくる奴を疎ましく思っているけど「いや」とは言えない小学生の立場である、ということになります。それはとても悲しいことです。そんなぼくが万が一そのハトヤのCMを見るとすれば、伊東に行くならハトヤに行った時、おそらくハトヤ館内のロビーにきっとある巨大テレビできっと繰り返し流れている本場の映像で、ということになるでしょう。その日まで、ぼくはこの悲しい気持ちを胸に秘めていたいと思います。